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14章
特別番外編『Happy Halloween 丈&洋Ver. 』
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「ようちゃん、10月31日はHalloweenよ、仮装してお菓子をもらいに来てね。期待しているわ」
そんな電話をもらったのは、一昨日だった。
さぁ困った! おばあ様が喜んでくれる仮装って、何だろう?
でも、せっかくの申し出だ。おばあさまにも楽しんでいただきたい。
「あら、洋くん、どうしたの? 何か悩んでいるの? 私で良かったら相談に乗るわよ」
「あの……お母さん、実は……」
一抹の不安を抱きながら、丈のお母さんに相談してみた。
「なるほど。もうすぐハロウィンなのね。あなたたちに似合いそうな仮装ねぇ……あ、そういえば、先日『オリオン座の怪人』というミュージカルを観に行ったのよ」
「はぁ?」
「でね、仮面の怪人が格好良くて、売店で思わず仮面を買ってしまったのよ」
「仮面ですか。カッコイイですね」
マントに白い仮面を被っている姿が思い浮かんだ。
「でしょう。これなの……使ってもいいわよね」
「いいんですか。じゃあ俺が怪人に」
「駄目よ。怪人役は、丈にさせましょう。あの無愛想な感じがミステリアスでいいのよ」
「え? じゃあ俺は?」
「そうね、洋くんは~」
ジャーンっと、あの洋服ダンスが開く。
もう、嫌な予感しかしない。
「今度はどれにする?」
お母さんのワクワク顔。
こうなってくると断れない。
「ね、どれがいい? 嫌? 駄目?」
「その、黒くてダボッとしたワンピースで」
「あらん、駄目よ。オリオン座の怪人の相手役は白いドレスよ」
「……そうでしたか」
というわけで、仮装した俺と丈は今、車で白金に向かっている。
「洋、随分と色気満載だな。その細腰を掴んで、激しく揺らしたくなるよ」
「やめろよ……っ!」
「ふっ、照れているのか。しっかり仮面を持っていろよ」
「丈は……カッコイイ役で狡い」
「ふっ、あとで洋も仮面をつけてみるか」
「いいのか」
「もちろんだ。洋にも似合うだろう」
なんて気を良くしていたのに……今度は俺の祖母がとんでもないことを言い出した。
「Happy Halloween! Trick or Treat!」
「きゃああ、ようちゃん、すごく綺麗よ。丈さんはカッコイイわ。オリオン座の怪人になってくれたのね。大好きなミュージカルよ」
「ど、どうも……」
おばあ様は目を更に細めて、俺を見つめた。
「ようちゃんもありがとう。白いドレス、セクシーね。あのね、おばあちゃまも衣装を用意したのよ」
「今度はなんです?」
「私ね、人魚姫のミュージカルも好きなの」
「えええ?」
「まさかの人魚?」
ブラカップと、尾びれの仮装。
これは平らな胸につけるには忍びない。
困惑していると、おばあ様が次の衣装を出して来た。
「あら、気に入らなかった? 声を出せない人魚姫ってロマンチックなのに……あのね、他にもあるのよ」
出てくるのは全身タイツの黒猫に、歌手のスパンコールミニスカートの衣装に、ナース服。
「こ、これがいいです」
「結局俺が選んだのは、またナース服だった」
「まぁ、由比ヶ浜の診療所がもうオープンしたみたいよ」
いやいや。俺は女装で診療所には立ちませんから!
祖母は上機嫌、ついでに丈も上機嫌だった。
「洋、懐かしいよ。医務室で洋を抱いたな」
思い出さなくていいから!
「今日は久しぶりにそのまま抱くぞ。取れかけのナースキャップを揺らしながら、私の上に跨がっていたのを思い出した」
ナース服が、変なスイッチを押したようだ。
「じょ、丈はそのままか」
「あぁ、私はこの衣装が気に入った」
「ずるい!」
「ふっ、かっこいいの間違いだろう」
得意気に笑う丈の顔を見ていたら、気が抜けた。
まぁいいか。一年に一度くらい仮装姿で抱き合うのも……
その晩、俺は仮面をつけた丈に、散々喘がされた。
もとろん、取れかけのナースキャップを揺らしながら……
「あ……んっ、ん」
「凄い色気だな。洋……次は人魚になってくれ」
そんな電話をもらったのは、一昨日だった。
さぁ困った! おばあ様が喜んでくれる仮装って、何だろう?
でも、せっかくの申し出だ。おばあさまにも楽しんでいただきたい。
「あら、洋くん、どうしたの? 何か悩んでいるの? 私で良かったら相談に乗るわよ」
「あの……お母さん、実は……」
一抹の不安を抱きながら、丈のお母さんに相談してみた。
「なるほど。もうすぐハロウィンなのね。あなたたちに似合いそうな仮装ねぇ……あ、そういえば、先日『オリオン座の怪人』というミュージカルを観に行ったのよ」
「はぁ?」
「でね、仮面の怪人が格好良くて、売店で思わず仮面を買ってしまったのよ」
「仮面ですか。カッコイイですね」
マントに白い仮面を被っている姿が思い浮かんだ。
「でしょう。これなの……使ってもいいわよね」
「いいんですか。じゃあ俺が怪人に」
「駄目よ。怪人役は、丈にさせましょう。あの無愛想な感じがミステリアスでいいのよ」
「え? じゃあ俺は?」
「そうね、洋くんは~」
ジャーンっと、あの洋服ダンスが開く。
もう、嫌な予感しかしない。
「今度はどれにする?」
お母さんのワクワク顔。
こうなってくると断れない。
「ね、どれがいい? 嫌? 駄目?」
「その、黒くてダボッとしたワンピースで」
「あらん、駄目よ。オリオン座の怪人の相手役は白いドレスよ」
「……そうでしたか」
というわけで、仮装した俺と丈は今、車で白金に向かっている。
「洋、随分と色気満載だな。その細腰を掴んで、激しく揺らしたくなるよ」
「やめろよ……っ!」
「ふっ、照れているのか。しっかり仮面を持っていろよ」
「丈は……カッコイイ役で狡い」
「ふっ、あとで洋も仮面をつけてみるか」
「いいのか」
「もちろんだ。洋にも似合うだろう」
なんて気を良くしていたのに……今度は俺の祖母がとんでもないことを言い出した。
「Happy Halloween! Trick or Treat!」
「きゃああ、ようちゃん、すごく綺麗よ。丈さんはカッコイイわ。オリオン座の怪人になってくれたのね。大好きなミュージカルよ」
「ど、どうも……」
おばあ様は目を更に細めて、俺を見つめた。
「ようちゃんもありがとう。白いドレス、セクシーね。あのね、おばあちゃまも衣装を用意したのよ」
「今度はなんです?」
「私ね、人魚姫のミュージカルも好きなの」
「えええ?」
「まさかの人魚?」
ブラカップと、尾びれの仮装。
これは平らな胸につけるには忍びない。
困惑していると、おばあ様が次の衣装を出して来た。
「あら、気に入らなかった? 声を出せない人魚姫ってロマンチックなのに……あのね、他にもあるのよ」
出てくるのは全身タイツの黒猫に、歌手のスパンコールミニスカートの衣装に、ナース服。
「こ、これがいいです」
「結局俺が選んだのは、またナース服だった」
「まぁ、由比ヶ浜の診療所がもうオープンしたみたいよ」
いやいや。俺は女装で診療所には立ちませんから!
祖母は上機嫌、ついでに丈も上機嫌だった。
「洋、懐かしいよ。医務室で洋を抱いたな」
思い出さなくていいから!
「今日は久しぶりにそのまま抱くぞ。取れかけのナースキャップを揺らしながら、私の上に跨がっていたのを思い出した」
ナース服が、変なスイッチを押したようだ。
「じょ、丈はそのままか」
「あぁ、私はこの衣装が気に入った」
「ずるい!」
「ふっ、かっこいいの間違いだろう」
得意気に笑う丈の顔を見ていたら、気が抜けた。
まぁいいか。一年に一度くらい仮装姿で抱き合うのも……
その晩、俺は仮面をつけた丈に、散々喘がされた。
もとろん、取れかけのナースキャップを揺らしながら……
「あ……んっ、ん」
「凄い色気だな。洋……次は人魚になってくれ」
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