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14章
よく晴れた日に 6
しおりを挟む「丈、パンと紅茶だけじゃ、栄養が偏ってしまうよ。そうだ確かリンゴが……」
「兄さん、危ないからいいですよ」
「そうだよ、父さんが指でも切ったりしたら、オレと丈さんが、流さんに殺されるよ!」
「ははっ、薙、お前、ずいぶん詳しくなったな」
珍しく丈が柔和な笑みを浮かべ、薙の頭をクシャッと撫でた。
そのことに薙が目を見開いて驚いた。
「丈さん、今日、ヘン!」
「変か」
「あ、その……話しやすいよ」
「おいおい、私はそんな怖かったか」
「え? いや……そういうわけじゃ。そうだ、空気が緩んだ感じ!」
そんなやりとりを聞いていると、僕も嬉しくなった。
丈……雰囲気が昨日までとガラリと変わったのに、自分では気付いていないのか。凍てついた空気が解けて、とても優しくなったよ。
さて、リンゴって、どうやって皮を剥くんだ? 闇雲に半分にぶった切ると、リンゴがまな板の上をゴロゴロと転がって行った。
「わっ! 危ない!」
薙が咄嗟に手を伸ばして、リンゴをキャッチしてくれた。
「ととと、父さん。なんか……見ていられないよ。オレがやるよ」
「え……薙、リンゴを剥けるの?」
「……やったことないけれども、父さんよりはマシな気がする」
「酷いな」
ところが、薙も危なっかしい手つきだ。
「あぁ、もうっ、二人とも見ていられないですよ。薙、私がやるよ」
丈が苦笑しながら果物ナイフを受け取り、見事な手先でリンゴを剥いてくれた。
その様子を薙と、ひたすら感心しながら見つめた。
「丈の手際は素晴らしいね。お前は流に似て、とても器用だね」
「この位、朝飯前ですよ。私をなんだと思って?」
丈がふふんと不敵な笑みを浮かべたので、薙と声を揃えた。
「最高の外科医だ」
「ふっ……神の手ですよ」
「うわっ、丈さんって、ナルシスト!」
「ははっ、そうかもしれないな」
丈の指先が更に細かく動き出す。
リンゴの皮に斜めに浅く切り込みを入れ、包丁の先を繊細に動かしていく。
「ほら、薙にはこれだ」
「あっ、ウサギだ!」
うさぎリンゴ……! そんなものまで作れるのか。
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