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14章
託す想い、集う人 23
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月見台で、弟たちと酒を酌み交わした。
こんなにも穏やかな気持ちで顔を突き合わせるのは、初めてかもしれない。
盃には夜空の月が浮かんでいる。今……僕らは月に守られている。
末の弟の寛いだ表情を見つめていると、じんわりと心が温まってきた。丈が生まれて来てくれたから、月が重なった。丈は洋くんと、僕は流と、重なることが出来た。今日初めて耳にした『月影寺縁起』は、驚きの連続だった。だからなのか、先ほどからあの宮崎で聞いた言葉が脳内でリフレインしている。
『重なる月』は、僕と流を赦《ゆる》す鍵。
更に流の言葉が、僕の心を震わせた。
『丈……俺はさ、正直、お前が羨ましかったよ』
丈は今日、洋くんのおばあさまたちの前で結婚宣言をした。 白衣が騎士のマントのようにはためき、本当に格好良かった。だが……流がその様子を眩しそうに見つめているのを感じ、少しだけ胸が塞がった。
兄と弟で生まれたことに悔いはない。流がこの世に生まれた瞬間から傍にいられ、前世の悲しい別れが、昇華されたのだから。
洋くんの蕩けるような笑顔と丈の充足感に包まれた顔を見ているうちに、僕が流に出来ることはないのか、僕も流が喜ぶ顔が見たい。流を想う心が疼き出していた。
流は僕の最愛の人だから、願うこと。
月影寺に戻ると、その気持ちはますます高まった。
安全な結界。月に守られている此処でなら、僕にも出来ることがあるのではないか。そんな想いを丈が汲み取ってくれたのだろうか。
『二人の生涯の誓いを聞かせてくれませんか。弟である私に』
ありがとう、丈……その言葉を待っていた。
丈の前でなら、宣言できる。
僕の覚悟、僕の想い、僕の愛の深さを伝えたい。
流……お前の笑顔が見たいんだ。
どうか笑っておくれ。
姿勢を正し、何度も心の中で唱えていた言葉をカタチにした。
誓いの言葉は、春風に乗る。
「僕は幸せな時も困難な時も、流と心をひとつにし、支えあい、乗り越えて……この先の未来、笑顔が溢れるあたたかい時間を築いていくことを誓います」
流……ようやく言えたよ。ずっと伝えたかった僕の覚悟だ。
もう、ずっと一緒だ。僕たちはこの世を去るまで、生涯を共にする。
「す……翠……どうして?」
「ずっと用意していたんだ」
「くっ」
流は一瞬顔を歪め泣きそうになったが……必死に堪え……涙を消して最高の笑顔を浮かべてくれた。
「俺は翠を生涯の伴侶として、どんな時も笑顔を忘れずに、どんな時も感謝の気持ちを忘れないことを誓う。生涯、愛し抜くぞ! 翠――」
あぁ……幸せだ。言葉と言葉が抱き合い絡み合って、一つになった。
僕は丈の目の前で流を包み込むように優しく抱きしめ、微笑んだ。
「流……ありがとう。丈……ありがとう」
「翠……ありがとう! 丈、最高だぜ!」
流は僕を力強く抱きしめ、艶やかに破顔した。
「うん、それでこそ僕の流だ。僕も……愛してる!」
もう涙はいらないね。
僕らは散々泣いてきたから……
僕たちは額をコツンと合わせ、明るい笑顔を見せ合った。
こんなにも穏やかな気持ちで顔を突き合わせるのは、初めてかもしれない。
盃には夜空の月が浮かんでいる。今……僕らは月に守られている。
末の弟の寛いだ表情を見つめていると、じんわりと心が温まってきた。丈が生まれて来てくれたから、月が重なった。丈は洋くんと、僕は流と、重なることが出来た。今日初めて耳にした『月影寺縁起』は、驚きの連続だった。だからなのか、先ほどからあの宮崎で聞いた言葉が脳内でリフレインしている。
『重なる月』は、僕と流を赦《ゆる》す鍵。
更に流の言葉が、僕の心を震わせた。
『丈……俺はさ、正直、お前が羨ましかったよ』
丈は今日、洋くんのおばあさまたちの前で結婚宣言をした。 白衣が騎士のマントのようにはためき、本当に格好良かった。だが……流がその様子を眩しそうに見つめているのを感じ、少しだけ胸が塞がった。
兄と弟で生まれたことに悔いはない。流がこの世に生まれた瞬間から傍にいられ、前世の悲しい別れが、昇華されたのだから。
洋くんの蕩けるような笑顔と丈の充足感に包まれた顔を見ているうちに、僕が流に出来ることはないのか、僕も流が喜ぶ顔が見たい。流を想う心が疼き出していた。
流は僕の最愛の人だから、願うこと。
月影寺に戻ると、その気持ちはますます高まった。
安全な結界。月に守られている此処でなら、僕にも出来ることがあるのではないか。そんな想いを丈が汲み取ってくれたのだろうか。
『二人の生涯の誓いを聞かせてくれませんか。弟である私に』
ありがとう、丈……その言葉を待っていた。
丈の前でなら、宣言できる。
僕の覚悟、僕の想い、僕の愛の深さを伝えたい。
流……お前の笑顔が見たいんだ。
どうか笑っておくれ。
姿勢を正し、何度も心の中で唱えていた言葉をカタチにした。
誓いの言葉は、春風に乗る。
「僕は幸せな時も困難な時も、流と心をひとつにし、支えあい、乗り越えて……この先の未来、笑顔が溢れるあたたかい時間を築いていくことを誓います」
流……ようやく言えたよ。ずっと伝えたかった僕の覚悟だ。
もう、ずっと一緒だ。僕たちはこの世を去るまで、生涯を共にする。
「す……翠……どうして?」
「ずっと用意していたんだ」
「くっ」
流は一瞬顔を歪め泣きそうになったが……必死に堪え……涙を消して最高の笑顔を浮かべてくれた。
「俺は翠を生涯の伴侶として、どんな時も笑顔を忘れずに、どんな時も感謝の気持ちを忘れないことを誓う。生涯、愛し抜くぞ! 翠――」
あぁ……幸せだ。言葉と言葉が抱き合い絡み合って、一つになった。
僕は丈の目の前で流を包み込むように優しく抱きしめ、微笑んだ。
「流……ありがとう。丈……ありがとう」
「翠……ありがとう! 丈、最高だぜ!」
流は僕を力強く抱きしめ、艶やかに破顔した。
「うん、それでこそ僕の流だ。僕も……愛してる!」
もう涙はいらないね。
僕らは散々泣いてきたから……
僕たちは額をコツンと合わせ、明るい笑顔を見せ合った。
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