重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
1,272 / 1,657
14章

それぞれの想い 14

しおりを挟む
 その晩……月下美人の香りが充満する部屋で洋を抱いた。

 月明かりに照らされる洋の姿態は艶めかしく、私の上で満開となり咲き誇っていた。騎乗位で私の胴を跨いで座らせ、洋の細腰を掴んで上下に揺らした。

「う……っ、いい……丈、気持ちいい」
「洋、いいか」
「んっ……溜まらないよ。もうっ」

 月下美人の花が萎んでしまっても、洋は艶めかしく、何度も花を咲かせてくれた。

「丈……お前に溶けてしまいそうだ」
「私もだ……洋の中が熱くて溜まらない」

 洋の中で脈打つ私のモノはますます固くなり、お互いの白濁は花の蜜のように感じた。

 どこまでも厳かで艶めかしい夜だった。

 何かを吹っ切れた思いで、私は全身全霊で洋を抱き続けた。

「丈と一緒に未来を描けるなんて……」

 疲れ果て放心状態の洋が、天上を見つめてほろりと流した涙は、月光を浴び流れ星のように瞬いた。

 ****

 その日の俺たちは、求めることを止めなかった。

 未明まで休んではまたを繰り返し、身体を繋げ続けた。

 うとうととしながら見る夢は、俺と丈の物語のプロローグだった。



 ……

 夜空に浮かぶ月を見上げると、自然と濡れていく瞳。

 もう……叶わない。

 月を受け止める湖で

 悲し気に宙を見上げて

 俺はいつも泣いていた。

 ただ会いたくて、ただ抱いて欲しくて。

 君ともう一度……重なりたい。

 思慕する心を持って、この世に生を受けた。

 だが俺は、まだ何も知らない。

 これから起こることも──君の存在すらも──

 ……

「洋、どうした?」

 裸のまま白いシーツに贈り物ギフトのように包まれ、丈に抱かれていた。

「……夢を見ていたんだ」
「どんな夢を?」
「丈を探し求め、もう一度重なりたいと願う強い思念だった」

 俺は自分の胸をドンっと叩いた。

「現世で……きっと、この世に生まれた時から丈を探していたんだ。思慕する心を持って生まれ変わって来た」
「洋、もう二度と別れは来ない。昨日話しただろう? 今生が最後だ。この世で寿命が尽きるまで……二人で共に生きていくと」
「……昨日の話、俺は本気だよ。俺はもうこの部屋で丈の帰りを待つだけじゃ嫌なんだ。一緒にいたい。一緒に働きたい。寝ても覚めても……いつも傍にいいたいんだ」

 どうしたのだろう? 俺は渇望している……丈に傍にいて欲しいと。

「分かっている。私も同じ気持ちだ。だからもう幼子のように泣くな」
「泣いてなんか……あっ」

 枕を濡らしていたのか。俺は……

「朝が来るよ。新しい朝が……今から、見に行かないか」
「え? 由比ヶ浜にか」
「ああ待ちきれないんだ。私の新しい職場を一刻も早く見たいのだ」
 

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

処理中です...