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14章
それぞれの想い 11
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洋くんとの距離が一気に縮まった。
恋人以外の愛情に不慣れな洋くんが、垣根を越えてやって来てくれた。
それが嬉しくて、溜まらなかった。
心が通い合う瞬間は、いつだって最上の時だ。
ふと過去の僕のことを考えてしまう。
湖翠さんが生涯に渡り夕凪と交流があったのかは分からないが、確実に夕凪は湖翠さんの心の隙間を埋めてくれる存在だったのだろう。弟の死を明かしてもらえなかったとしても……流水との深い思い出を語れるのは、夕凪しかいなかったはずだ。
洋くんも僕も……心に深手を負ってこの世で出逢った。
屈辱という傷の痛みを知る者同士、労り合い慰め合い、二人で乗り越えて……この先もずっと傍にいる。
「翠、嬉しそうだな。今日は沢山いいことがあったんだな」
「流……あ……うん」
母さんに甘えたことは照れ臭くて話せなかった。
「翠、いい笑顔だな。さぁ仕事に戻ろう」
「え?」
バッグハグを解かれて、少し寂しくなった。
って、僕はこんな日中に何を考えているのだ。
「今日の袈裟はむやみやたらに着崩せない。母さんが心こめて息子への愛を込めて……着付けてくれたんだろう?」
「あ……」
そうか、流はそこまで見越してくれるのか。
いつの間にか遠い先まで見つめられる頼もしい男になった。
「流、ありがとう。流……好きだ。夏休みは二人きりになれる場所で僕たち、明けても暮れても……抱き合おう。約束しよう」
そう言いながら首に手を回して抱きつくと、流がカッと赤くなった。
「翠は楚々としているくせに、時々大胆過ぎる、う……嬉しいが」
「ふふ、照れているのか」
顔を覗くと、故意に逸らされた。
「翠、早くイケよ。これ以上いると襲い掛かるぞ」
「うん……もうイクよ」
「う……俺たちの会話……卑猥すぎる!」
流が鼻を押さえて苦しそうに上を向く。
「え? 何を言って?」
そこまで話して、僕も『イケよ』と『イクよ』というやりとりに、僕を抱く流の顔を思いだし真っ赤になってしまった。
****
「丈、待てよ。まだ脱ぐなよ」
「ん?」
離れに戻ってきて白衣を脱ごうとすると、洋が慌てた様子で制してきた。
「だが、これを着ていると寛げない」
「もう少しだけ見せてくれよ。なっ、滅多に本物は見られない」
「ははっ、まだあの時意地悪したことを根に持っているのか」
洋が大船の病院に遊びにきてくれた時、診察と言いながらも欲情してしまったことを言っているのだな。
「持っているさ」
甘い微笑みを称えた洋が、私の白衣にそっと触れてきた。
「丈は俺のお医者さまだ。俺を闇の底から救いあげてくれた素晴らしいドクターだよ」
「洋……もっと一緒にいたい。最近特にそう思う」
「うん、海里先生の話を聞いたからなのか、俺も同じ気持ちだ」
「洋……まだ早いか」
「分からない。次の休みに……翠さんと流さんも一緒に、海里さんと柊一さんの本宅に行こう! 俺たちの道標になる何かが掴めるかもしれない」
洋と歩む道。
安住の地を手に入れ、洋がしっかり四男として収まった今こそ、腰を据えて考える時が来たのかもしれない。
恋人以外の愛情に不慣れな洋くんが、垣根を越えてやって来てくれた。
それが嬉しくて、溜まらなかった。
心が通い合う瞬間は、いつだって最上の時だ。
ふと過去の僕のことを考えてしまう。
湖翠さんが生涯に渡り夕凪と交流があったのかは分からないが、確実に夕凪は湖翠さんの心の隙間を埋めてくれる存在だったのだろう。弟の死を明かしてもらえなかったとしても……流水との深い思い出を語れるのは、夕凪しかいなかったはずだ。
洋くんも僕も……心に深手を負ってこの世で出逢った。
屈辱という傷の痛みを知る者同士、労り合い慰め合い、二人で乗り越えて……この先もずっと傍にいる。
「翠、嬉しそうだな。今日は沢山いいことがあったんだな」
「流……あ……うん」
母さんに甘えたことは照れ臭くて話せなかった。
「翠、いい笑顔だな。さぁ仕事に戻ろう」
「え?」
バッグハグを解かれて、少し寂しくなった。
って、僕はこんな日中に何を考えているのだ。
「今日の袈裟はむやみやたらに着崩せない。母さんが心こめて息子への愛を込めて……着付けてくれたんだろう?」
「あ……」
そうか、流はそこまで見越してくれるのか。
いつの間にか遠い先まで見つめられる頼もしい男になった。
「流、ありがとう。流……好きだ。夏休みは二人きりになれる場所で僕たち、明けても暮れても……抱き合おう。約束しよう」
そう言いながら首に手を回して抱きつくと、流がカッと赤くなった。
「翠は楚々としているくせに、時々大胆過ぎる、う……嬉しいが」
「ふふ、照れているのか」
顔を覗くと、故意に逸らされた。
「翠、早くイケよ。これ以上いると襲い掛かるぞ」
「うん……もうイクよ」
「う……俺たちの会話……卑猥すぎる!」
流が鼻を押さえて苦しそうに上を向く。
「え? 何を言って?」
そこまで話して、僕も『イケよ』と『イクよ』というやりとりに、僕を抱く流の顔を思いだし真っ赤になってしまった。
****
「丈、待てよ。まだ脱ぐなよ」
「ん?」
離れに戻ってきて白衣を脱ごうとすると、洋が慌てた様子で制してきた。
「だが、これを着ていると寛げない」
「もう少しだけ見せてくれよ。なっ、滅多に本物は見られない」
「ははっ、まだあの時意地悪したことを根に持っているのか」
洋が大船の病院に遊びにきてくれた時、診察と言いながらも欲情してしまったことを言っているのだな。
「持っているさ」
甘い微笑みを称えた洋が、私の白衣にそっと触れてきた。
「丈は俺のお医者さまだ。俺を闇の底から救いあげてくれた素晴らしいドクターだよ」
「洋……もっと一緒にいたい。最近特にそう思う」
「うん、海里先生の話を聞いたからなのか、俺も同じ気持ちだ」
「洋……まだ早いか」
「分からない。次の休みに……翠さんと流さんも一緒に、海里さんと柊一さんの本宅に行こう! 俺たちの道標になる何かが掴めるかもしれない」
洋と歩む道。
安住の地を手に入れ、洋がしっかり四男として収まった今こそ、腰を据えて考える時が来たのかもしれない。
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