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14章
追憶の由比ヶ浜 54
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そうか……やはり全ては縁によって繋がっていたのだ。
仏教では、全ての物事には『縁』が関係していると言う。
丈が洋くんを連れて月影寺にやってこなかったら、繋がらない事だった。
縁とは親子、兄弟、夫婦、主従など……広い人間関係を指している。やはり……丈と洋くんの肉体的な『縁結び』の力は、破壊的に偉大だったのか。
『縁結び』は一般的には夫婦や男女の関係を結ぶことだ。つまり人と人が肉体的に結ばれことで、その巡り合わせは超自然の意志が関係するとも考えられており、ものすごい力によって引き寄せられ、ものすごい力が動く時とも。
男同士でも、きっと同じだ。
丈と洋くんが結ばれたことにより、僕も流とついに結ばれた。そして……今、洋くんの過去と僕の人生が、また重なりだした。
「翠兄さん、ここに行ってみますか」
「うん……今のこの流れに任せたい」
あ……これはかつて湖翠さんが口にした言葉では?
『流水……どこだ? どこにいる? もう一度お前に出逢えたら、僕は何もかも捨ててお前と一緒に流れていくよ、流れに任せるから。お前の名前の意味……流水の水《すい》は翠のことだ。あぁどうして僕は逃げたのだ? お前にもっと早く……正直に心を明け渡せば、こんな別れは来なかったのでは? 次の世では逃げない……逃げないから。どうか』
「丈、頼む。海里先生の意見に、耳を傾けてくれ」
「翠兄さん、大丈夫ですよ。私にはこんなに見事な手術方法や治療方法は思いつきませんでした。海里先生の意見に従いたいと思います。形成外科医と連携して、私が執刀医になります。手術させて下さい」
頼もしい弟……お前が月影寺の救世主だ。洋くんと巡り会ってくれてありがとう。
昔……湖翠さんが撒いた種は、丈という人間に育ったのかもしれないと、ふと思った。
****
白金台。
白薔薇の咲くのを待ち望む中庭を歩いていると思い出す。
僕を深く愛してくれた懐かしい人達を。
もういない、一人欠け……また一人と……夜空に瞬く星となってしまった。
人の命には限りがある。
愛してくれた人も、愛した人とも……いつかは別れがやってくる。
僕は別れを恐れない。それは海里先生に先立たれた兄さまから学んだこと。
でも……兄さまは少し、少し早すぎましたね。
あの日、庭のベンチで僕の孫をあやして部屋に戻られ、そのまま……なんて信じられない。僕には何も出来なかった。
床に落ちた写真立てに、涙を滝のように落とすことしか。
兄さまを思えば寂しくなり、僕を全力で愛してくれた兄を、じわりと思慕してしまった。
「雪くん……どうしたの?」
「ふっ、春子ちゃんは変わらないね。こんな歳になった僕を、まだ子供みたいに呼ぶなんて」
「あら、あなただって、私をいつまでも少女みたいに呼ぶわ」
(ゆき、前を見て、目の前を見てごらん、愛し愛されて……最期まで)
天上からの優しい兄の声。
そうですね、兄さま。
愛しい人と共に生きていられることを感謝しないといけませんね。
「春子ちゃん……愛しているよ。そばにいてくれてありがとう」
「雪くん、私も愛しているわ。そうだわ、兄を呼んでくるから久しぶりに庭でお茶でもしない?」
「そうだね。ぜひ……」
****
『まるでおとぎ話』という話とリンクしております。
https://estar.jp/novels/25598236
仏教では、全ての物事には『縁』が関係していると言う。
丈が洋くんを連れて月影寺にやってこなかったら、繋がらない事だった。
縁とは親子、兄弟、夫婦、主従など……広い人間関係を指している。やはり……丈と洋くんの肉体的な『縁結び』の力は、破壊的に偉大だったのか。
『縁結び』は一般的には夫婦や男女の関係を結ぶことだ。つまり人と人が肉体的に結ばれことで、その巡り合わせは超自然の意志が関係するとも考えられており、ものすごい力によって引き寄せられ、ものすごい力が動く時とも。
男同士でも、きっと同じだ。
丈と洋くんが結ばれたことにより、僕も流とついに結ばれた。そして……今、洋くんの過去と僕の人生が、また重なりだした。
「翠兄さん、ここに行ってみますか」
「うん……今のこの流れに任せたい」
あ……これはかつて湖翠さんが口にした言葉では?
『流水……どこだ? どこにいる? もう一度お前に出逢えたら、僕は何もかも捨ててお前と一緒に流れていくよ、流れに任せるから。お前の名前の意味……流水の水《すい》は翠のことだ。あぁどうして僕は逃げたのだ? お前にもっと早く……正直に心を明け渡せば、こんな別れは来なかったのでは? 次の世では逃げない……逃げないから。どうか』
「丈、頼む。海里先生の意見に、耳を傾けてくれ」
「翠兄さん、大丈夫ですよ。私にはこんなに見事な手術方法や治療方法は思いつきませんでした。海里先生の意見に従いたいと思います。形成外科医と連携して、私が執刀医になります。手術させて下さい」
頼もしい弟……お前が月影寺の救世主だ。洋くんと巡り会ってくれてありがとう。
昔……湖翠さんが撒いた種は、丈という人間に育ったのかもしれないと、ふと思った。
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白金台。
白薔薇の咲くのを待ち望む中庭を歩いていると思い出す。
僕を深く愛してくれた懐かしい人達を。
もういない、一人欠け……また一人と……夜空に瞬く星となってしまった。
人の命には限りがある。
愛してくれた人も、愛した人とも……いつかは別れがやってくる。
僕は別れを恐れない。それは海里先生に先立たれた兄さまから学んだこと。
でも……兄さまは少し、少し早すぎましたね。
あの日、庭のベンチで僕の孫をあやして部屋に戻られ、そのまま……なんて信じられない。僕には何も出来なかった。
床に落ちた写真立てに、涙を滝のように落とすことしか。
兄さまを思えば寂しくなり、僕を全力で愛してくれた兄を、じわりと思慕してしまった。
「雪くん……どうしたの?」
「ふっ、春子ちゃんは変わらないね。こんな歳になった僕を、まだ子供みたいに呼ぶなんて」
「あら、あなただって、私をいつまでも少女みたいに呼ぶわ」
(ゆき、前を見て、目の前を見てごらん、愛し愛されて……最期まで)
天上からの優しい兄の声。
そうですね、兄さま。
愛しい人と共に生きていられることを感謝しないといけませんね。
「春子ちゃん……愛しているよ。そばにいてくれてありがとう」
「雪くん、私も愛しているわ。そうだわ、兄を呼んでくるから久しぶりに庭でお茶でもしない?」
「そうだね。ぜひ……」
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