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14章
心通わせて 6
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夜風に……流の髪がバサリと放たれる。
僕は浴衣を大きく裾から捲られ乱され、足首を掴まれて、左右に広げられた。
ひんやりとした空気が剥き出しの肌を撫で、そこに流の熱視線が届き、ぞくりとした。
「兄さん、偉いな。下着、つけていなかったな」
「それは……用意されていなかったからだ」
「あーもう、可愛いな。俺が用意したものだけをいつも着てくれて、嬉しいぞ」
「も、もう何を言っているのだか」
いつからだろう? 僕の全てを流に委ねだしたのは。
僕は相変わらず……衣食住の全てを流に任せている。
あの目が見えた日に、僕が願い出たようなものだ。
これからも僕の世話をして欲しい。だからずっと傍にいてくれと。
「そろそろ挿れていいか」
「んっ……いいよ」
くちゅり、くちゅり……と、潤滑油を使われ……卑猥な水音が立っているが、すべては近くに落ちる滝の音が消してくれていた。
この奥庭の空間は、流と僕だけの宇宙。
僕は縁側に横たわり、流によって上下に揺さぶられていく。
「つっ……」
「大丈夫か」
腰に流の手が回り、ぐっと浮かされた。
僕が板の間で腰を痛めないようにする配慮なのだろう。
だから僕は仰向けのまま、身体の力を抜いて流に委ね……夜空に棚引く流の髪を目で追った。
遠い昔、こんな夜に……僕は流を深く受け入れた。
一度きりの逢瀬は夢幻の中だったが、身体の痛みから現実だったと悟った。その一度きりの逢瀬を生涯密かに思い、この世を去った湖翠さんの願いは、今生で叶っている。
僕の意志を持って、夜な夜な流に抱かれているのだから。
「翠、どうした? ぼんやりして」
「流……願いは叶ったのに、髪を切らないのは何故なんだ?」
「それは新たな願いを掛けたからさ」
「そうか……うん、それでいい。髪は永遠に切るな」
もう離れない、離れたくないから……永遠に願掛けをしていてくれ。
「分かった。兄さんの仰せのままに」
「ふっ、こんな時だけ兄扱い?」
こんな姿で乱れているのに……急に「兄さん」と呼ばれ、気恥ずかしくなる。
すると流は待っていましたとばかりに、僕の表情を堪能する。
「あぁ、いいな。兄さんのこの表情が溜まらないんだ。兄であり俺の懸想人……翠」
改めて全ての名を呼ばれたので、僕も答えた。
「流は……僕の弟であり……僕の懸想人だ」
「そうだ、それでいい。兄弟であることを恥じなくていい。どれだけの年月を経ての成就だと思って?」
口づけと抱擁を繰り返すと……僕の腹の中を満たす流のものがググッと嵩を増す。
「ん……んんっ」
「ここには、まだ何も準備していない……中に出していいか」
「ふっ、改めて聞かなくても……いつも……のようにしたらいい」
激しい抽挿を繰り返され、視界が揺れる。
やがて僕の中で流が大きく唸るように震えると、熱い迸りを中に浴びた。同時に僕も白いものを大量に溢れ出してしまった。
「ん……っ、あぁ……」
「はぁっ」
勇ましい掛け声の後、全速力でゴールを切ったように満足気な流の精悍な顔。
僕はこの弟に心底惚れている。
惚れて……惚れて……惚れまくっている。
静寂はやってこない。
滝の音に合わせて、流がまた動き出す。
「ま、まだ駄目だ……っ」
「お願いだ。もう一度だけ……なっ」
「流は……ずるい」
「翠が好き過ぎて止まらない」
未完成の離れで繰り広げられる情交 。
心を許しあったものだけが感じる熱く深く強い想いが、今宵も夜空を駆け巡る――
僕は浴衣を大きく裾から捲られ乱され、足首を掴まれて、左右に広げられた。
ひんやりとした空気が剥き出しの肌を撫で、そこに流の熱視線が届き、ぞくりとした。
「兄さん、偉いな。下着、つけていなかったな」
「それは……用意されていなかったからだ」
「あーもう、可愛いな。俺が用意したものだけをいつも着てくれて、嬉しいぞ」
「も、もう何を言っているのだか」
いつからだろう? 僕の全てを流に委ねだしたのは。
僕は相変わらず……衣食住の全てを流に任せている。
あの目が見えた日に、僕が願い出たようなものだ。
これからも僕の世話をして欲しい。だからずっと傍にいてくれと。
「そろそろ挿れていいか」
「んっ……いいよ」
くちゅり、くちゅり……と、潤滑油を使われ……卑猥な水音が立っているが、すべては近くに落ちる滝の音が消してくれていた。
この奥庭の空間は、流と僕だけの宇宙。
僕は縁側に横たわり、流によって上下に揺さぶられていく。
「つっ……」
「大丈夫か」
腰に流の手が回り、ぐっと浮かされた。
僕が板の間で腰を痛めないようにする配慮なのだろう。
だから僕は仰向けのまま、身体の力を抜いて流に委ね……夜空に棚引く流の髪を目で追った。
遠い昔、こんな夜に……僕は流を深く受け入れた。
一度きりの逢瀬は夢幻の中だったが、身体の痛みから現実だったと悟った。その一度きりの逢瀬を生涯密かに思い、この世を去った湖翠さんの願いは、今生で叶っている。
僕の意志を持って、夜な夜な流に抱かれているのだから。
「翠、どうした? ぼんやりして」
「流……願いは叶ったのに、髪を切らないのは何故なんだ?」
「それは新たな願いを掛けたからさ」
「そうか……うん、それでいい。髪は永遠に切るな」
もう離れない、離れたくないから……永遠に願掛けをしていてくれ。
「分かった。兄さんの仰せのままに」
「ふっ、こんな時だけ兄扱い?」
こんな姿で乱れているのに……急に「兄さん」と呼ばれ、気恥ずかしくなる。
すると流は待っていましたとばかりに、僕の表情を堪能する。
「あぁ、いいな。兄さんのこの表情が溜まらないんだ。兄であり俺の懸想人……翠」
改めて全ての名を呼ばれたので、僕も答えた。
「流は……僕の弟であり……僕の懸想人だ」
「そうだ、それでいい。兄弟であることを恥じなくていい。どれだけの年月を経ての成就だと思って?」
口づけと抱擁を繰り返すと……僕の腹の中を満たす流のものがググッと嵩を増す。
「ん……んんっ」
「ここには、まだ何も準備していない……中に出していいか」
「ふっ、改めて聞かなくても……いつも……のようにしたらいい」
激しい抽挿を繰り返され、視界が揺れる。
やがて僕の中で流が大きく唸るように震えると、熱い迸りを中に浴びた。同時に僕も白いものを大量に溢れ出してしまった。
「ん……っ、あぁ……」
「はぁっ」
勇ましい掛け声の後、全速力でゴールを切ったように満足気な流の精悍な顔。
僕はこの弟に心底惚れている。
惚れて……惚れて……惚れまくっている。
静寂はやってこない。
滝の音に合わせて、流がまた動き出す。
「ま、まだ駄目だ……っ」
「お願いだ。もう一度だけ……なっ」
「流は……ずるい」
「翠が好き過ぎて止まらない」
未完成の離れで繰り広げられる情交 。
心を許しあったものだけが感じる熱く深く強い想いが、今宵も夜空を駆け巡る――
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