重なる月

志生帆 海

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13章

夏休み番外編『Let's go to the beach』19

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 夜中にふと目覚めた。

 どうやら夕食時に泥酔し、そのまま眠ってしまったようだ。私としたことが情けない。それにしても、あの滝沢という男はかなりの酒豪だな。私はともかく流兄さんも押され気味だった。

 一方で瑞樹くんは隣で楽しそうに酒を飲んでいた。彼も洋とは違って割といける口のようだ。とにかく皆、羽目を外す程の楽しい宴会だった。

 外はまだ暗いな。どうやらまだ真夜中のようなので、もう一度眠ろうと寝返りを打つと、洋の姿がなかった。てっきり隣で眠っていると思ったのに何処へ。

 洋が帰ってこなかったあの夜のことを思い出し、一気に不安になる。

「洋……どこだ」

 すると洋からの返事の代わりに、流兄さんと翠兄さんの声が聞こえてきた。

「翠……翠……」
「ん……流、おしっこか」
   
  なんと、翠兄さんにしては珍しい!

 完全に寝惚けているらしく、流兄さんのことを幼い子供だと思っている。

 幼い頃……夏休みに月影寺に帰省した時、何故か子供だけ離れで寝かされた。もしかして翠兄さんは、今、あの頃の夢を見ているのか。

 そういえば、流兄さんは眠る前に麦茶をガブガブ飲むから、きまって真夜中にトイレに行きたくなり、翠兄さんをよく起こしていたよな。

「兄さん、トイレは外みたいだよ」
「わかった。兄さんがつきそってあげるから、我慢するんだよ」

 おいおい……酷いな。だまし討ちで翠兄さんを外に連れ出して何をするつもりか。

 まぁ……それは決まっている。ここは弟としてどちらに加勢すべきか悩むな。私もそういうことを望んでいないといったら、嘘になるから。

 日中、美しい洋の水着姿を散々見せつけられて、欲情しないはずがないだろう。結局私が選んだのは、流兄さんに日中、目星をつけておいた小屋の在り処を教えることだった。

 客室は兄さん達と相部屋で雑魚寝なので、どこか外で洋を抱けたらいいと思っていた。洋のことを散々月影寺の離れで抱いて来たとはいえ、旅はまた別物だ。

 だが兄達の方が互いに飢えている。お盆の時期の住職は本当に忙しいから、たぶん長い期間、禁欲していたのだろう。

 小屋の場所を教えると、流兄さんから「この部屋を譲ってやるからゆっくり過ごせ」と言われた。いいのだろうか。皆が宿泊する部屋で、私が洋を抱いても……許されるのとうことか。優しい兄に感謝せねば……

 ゴクッ──喉が鳴る。

「じゃあ瑞樹くん、おやすみなさい」
 
  流兄さん達が出て行くと、入れ違いに小さな声が聞こえた。

 洋は瑞樹くんとベランダで何か喋っていたらしい。慌てて寝たふりをすると、洋がそっと私の横に潜り込んできた。そのまま眠ってしまいそうだったので、寄り添う躰に腕を回し、ぐっと引き寄せるように抱きしめてやった。

「洋……」
「あっごめん、丈、起きちゃった」
「ベランダでお喋りを? 」
「うん、瑞樹くんと話していたんだよ。彼……すごく落ち着くよ。秋に鎌倉で会う約束もしたし楽しみだな」
 
  洋はとても嬉しそうだ。ふむ……瑞樹くんはおそらく洋と同じ立ち位置だから心配の必要など全くないのに、洋が他の男と話すのに、少しばかり妬いてしまう。

「洋、静かにな。隣には兄さん達が寝ているのだから、起こすなよ」
「ん? 何を……えっ、まさか」

 布団の中で……洋の腰を浴衣の上からなで回し、そのまま裾を割って内股に手を沿わしてみた。

「ん……やめろよ。声が……」
「我慢したらいい」
「そんな……出来ないよ」
「出来るさ、ほら自分の口を塞いで」

 私の手は意地悪に、洋の内股を駆け上がり股間のものに触れていく。

「ん……やっ……」

 言葉とは裏腹に過敏な洋の屹立は素直に反応し、透明の蜜を垂らし始める。それを指先で拭い取って、後ろの蕾みに塗りたくる。

 洋は必死に声を出さないように両手を口にあて、目をぎゅっと閉じていた。なんだか新鮮な気分だ。離れだと私だけの世界なので声を我慢する必要なんてないから、洋の喘ぎ声が夜の静寂に広がっていくのに。

 それはそれ、これはこれで……どちらもいいな。

「ん……あ……丈、みんなに気づかれて……まずいよ」
「兄さんたちは、よく眠っているから大丈夫だ」

 宥めるように右手で洋の背中を撫でてやり、左手は器用に蕾の中へつぷりと侵入していく。私も意地悪な男だと苦笑してしまう。

「あっ‼ 」

 吐息混じりの……控え目に艶めく洋の声が聞こえる。

 洋の浴衣は今日は脱がさない。いつもなら真っ裸にして美しい裸体が月光を浴びるのを楽しむ場所だが、今日は代わり布越しに波打つように触ってやる。指先はとても敏感になり、胸の尖りを想像すると私の股間もギュッと興奮した。

 洋の躰も摩擦が気持ちいいのか、ビクビクと震えている。
 
「ウッ……はっ……」




  ****


「翠、俺の上に乗れよ」
「え……」
「騎乗位になれ」
「それ……苦手だ」
「支えてやるから。ほら自分で挿れてみろ」
「ん……んあっ」

 仰向けになっていた翠の腰を掴んで、グイッと起こして、俺の胴体を跨ぐ姿勢を取らせた。その時点で、翠の両脚は大きく左右にガバッと開き、かなり扇情的な光景で、最高だった。

 俺は翠の腰をもう一度しっかりホールドし、翠の蕾に自分の屹立をあてて落とさせていく。メリメリと俺の屹立を呑み込んでいく翠の蕾を感じ、興奮が止まらない。

「ん、あうっ──」

 俺の躰と翠の躰が合体する瞬間が、この姿勢だとよく見える。小屋に電気はなかったが、今日は月が明るいので天窓から差し込む光で十分だった。

「流……苦し……動くな」

 翠が目を伏せて唇をかみしめているので、指先で解してやる。自分たちは今、大きなビニールで出来た船の遊具の上にいた。

 翠の日焼けしていない白い躰が月光を浴びてゆらゆらと左右に揺れている。その官能的な動きに目を奪われてしまう。
                                       
「翠の好きなように動けばいい。なんだか……俺が船ならば、翠は帆みたいだな」

「何を……言って ? あっ……んっ、でも僕たちが帆船だったら……どこまで行けるかな」

「どこまでも行くさ、翠が進みたいところに、どこまでも」
  
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