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13章
正念場 25
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「丈? もしかして緊張してるのか」
「……いや、そんなことは」
白金の祖母の家までの道すがら、俺達はいつになく無口だった。
祖母とは、今日初めてまともに話すことが出来る。
その場で一気に丈を紹介するつもりだ。
俺が『張矢』の姓を名乗っているのを説明するには、遅かれ早かれ分かることだから、隠すよりも、最初にこちらから話してしまおう。
同性同士で真剣に付き合っていることを。
そのことを春馬さんに相談すると、応援してくれた。
理由は分からないが、祖母は理解があると……
その言葉を今は信じたい。
****
「翠、一体何を怒っている?」
「……」
自室に入っても、まだ無言の翠の様子が気がかりだ。
えっと……俺、何か怒らすことしたか。
すると翠がこちらをゆっくりと振り返り、言いにくそうに咳払いをした。
「コホン……あのね……流……さっきのあれは、よくないと思う」
えっと……アレって?
首を傾げると翠が今度は困ったような表情を浮かべた。
「まだ、分からない?」
それから翠は少し開いていた部屋の扉を自らの手でパタンと閉めて、俺の手を取った。
「流……そんなに見たければ、僕のを見ればいいのに」
少し拗ねたように俯きながら、袈裟の袷の隙間に俺の手を誘った。
「えっ! おい? すっ……翠?」
そこまでされて、ようやく合点した。
さっき洋くんの乳首を覗き見したことを言っているのだと。
シャツの云々を知らない翠からしたら、俺が洋くんの乳首見たさに覗いたように思ったのか。ってか、翠がこんなことを考えるなんて……驚くやら嬉しいやらで興奮してしまった。
今度は俺の意志で、ぐっと奥深くに手を潜らせた。
「あっ……流、よせ!」
「何言って……翠が誘ったんだぞ」
「駄目だ。外には小森くんがいるのに」
あぁ、そういえば小森の奴、中庭で箒を持って立っていたっけ。まぁここは母屋の二階だし大丈夫だろう。
「翠が静かにしていれば、あいつには聞こえない」
そのまま指の腹で翠の小さな粒を探し当てる。
俺が触れれば、ピクンっとそれは途端に硬くなる。つつましい色を直に確かめたいが、袈裟というものはなかなか手強いのだ。
あぁそうだ、だからあのシャツを買ったのだ。
袈裟を脱いだ時ぐらい、せめて無防備な姿を晒してくれよ。
指先だけの感覚で翠の小さな突起を楽しみ……紙縒りを作るように扱いたり、摘まんだりした。
「くっ……ふっ……」
翠は自分の手で口を塞ぎ、俺にもたれるように耐えていた。肩を細かく震わせて……はぁ、こういう時の翠は、壮絶に色っぽいんだよな。
おい、可愛いな!
あの楚々とした兄が、俺の翠となり、こんな姿までも見せてくれる。
そのことに感動を覚える。
「流、もうよせ……もう駄目だ、ここまでにしてくれ」
あんまり必死に懇願してくるから、その可愛い口を塞いだ。
流石に今は仕事中なので、無理は出来ない。そっと指を離して手をどけると、翠は今度は名残惜しそうな溜息をついた。
「はぁ……」
その声……下半身に響くからやめろ!と叫びたくなる。
俺達本当にしょうもないよな、真昼間からこんなにさかって!
だが、翠の可愛い『ヤキモチ』が、最高に嬉しかった。
「あれは、本当は……翠に買ってきた服だったんだ」
「うん……今度僕にも同じ物を買ってくれ。それから洋くんにも優しくしてくれてありがとう。本当に僕の流はいつも頼もしいよ」
「翠……」
翠が褒めてくれると飛び上がる程嬉しい。
翠は人を褒めるのが上手だ。
昔から俺はこうやって、翠に甘やかされていた。
「……いや、そんなことは」
白金の祖母の家までの道すがら、俺達はいつになく無口だった。
祖母とは、今日初めてまともに話すことが出来る。
その場で一気に丈を紹介するつもりだ。
俺が『張矢』の姓を名乗っているのを説明するには、遅かれ早かれ分かることだから、隠すよりも、最初にこちらから話してしまおう。
同性同士で真剣に付き合っていることを。
そのことを春馬さんに相談すると、応援してくれた。
理由は分からないが、祖母は理解があると……
その言葉を今は信じたい。
****
「翠、一体何を怒っている?」
「……」
自室に入っても、まだ無言の翠の様子が気がかりだ。
えっと……俺、何か怒らすことしたか。
すると翠がこちらをゆっくりと振り返り、言いにくそうに咳払いをした。
「コホン……あのね……流……さっきのあれは、よくないと思う」
えっと……アレって?
首を傾げると翠が今度は困ったような表情を浮かべた。
「まだ、分からない?」
それから翠は少し開いていた部屋の扉を自らの手でパタンと閉めて、俺の手を取った。
「流……そんなに見たければ、僕のを見ればいいのに」
少し拗ねたように俯きながら、袈裟の袷の隙間に俺の手を誘った。
「えっ! おい? すっ……翠?」
そこまでされて、ようやく合点した。
さっき洋くんの乳首を覗き見したことを言っているのだと。
シャツの云々を知らない翠からしたら、俺が洋くんの乳首見たさに覗いたように思ったのか。ってか、翠がこんなことを考えるなんて……驚くやら嬉しいやらで興奮してしまった。
今度は俺の意志で、ぐっと奥深くに手を潜らせた。
「あっ……流、よせ!」
「何言って……翠が誘ったんだぞ」
「駄目だ。外には小森くんがいるのに」
あぁ、そういえば小森の奴、中庭で箒を持って立っていたっけ。まぁここは母屋の二階だし大丈夫だろう。
「翠が静かにしていれば、あいつには聞こえない」
そのまま指の腹で翠の小さな粒を探し当てる。
俺が触れれば、ピクンっとそれは途端に硬くなる。つつましい色を直に確かめたいが、袈裟というものはなかなか手強いのだ。
あぁそうだ、だからあのシャツを買ったのだ。
袈裟を脱いだ時ぐらい、せめて無防備な姿を晒してくれよ。
指先だけの感覚で翠の小さな突起を楽しみ……紙縒りを作るように扱いたり、摘まんだりした。
「くっ……ふっ……」
翠は自分の手で口を塞ぎ、俺にもたれるように耐えていた。肩を細かく震わせて……はぁ、こういう時の翠は、壮絶に色っぽいんだよな。
おい、可愛いな!
あの楚々とした兄が、俺の翠となり、こんな姿までも見せてくれる。
そのことに感動を覚える。
「流、もうよせ……もう駄目だ、ここまでにしてくれ」
あんまり必死に懇願してくるから、その可愛い口を塞いだ。
流石に今は仕事中なので、無理は出来ない。そっと指を離して手をどけると、翠は今度は名残惜しそうな溜息をついた。
「はぁ……」
その声……下半身に響くからやめろ!と叫びたくなる。
俺達本当にしょうもないよな、真昼間からこんなにさかって!
だが、翠の可愛い『ヤキモチ』が、最高に嬉しかった。
「あれは、本当は……翠に買ってきた服だったんだ」
「うん……今度僕にも同じ物を買ってくれ。それから洋くんにも優しくしてくれてありがとう。本当に僕の流はいつも頼もしいよ」
「翠……」
翠が褒めてくれると飛び上がる程嬉しい。
翠は人を褒めるのが上手だ。
昔から俺はこうやって、翠に甘やかされていた。
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