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13章
正念場 23
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「兄さん、そろそろ出かけますので」
昼過ぎに再び、丈と洋くんが母屋に現れた。
二人ともさっき貸してやった洋服をばっちり着こなしているのが微笑ましくて、顎に手をあてフムフムと頷いてしまった。
「いいぜ! バッチリだ! 二人ともよく似合っているな」
丈のスーツ姿は、想像以上に様になっていた。こんなにもサイズがぴったりってことは、本当に俺と体格が似ているということを実感した。
この先も、丈には負けたくはない。
俺も、更に鍛えねば!
二歳年下の弟には、最近妙に競争心が湧いてくる。昔はつまんない男だと思っていたのに、それは俺がよく見ていなかったせいなのか。それともお前がどんどん変わってきているからなのか。
きっと後者の方だろう。洋くんと出逢い、お前は変わったよ。
それほどまでに丈は凛々しい表情をしていた。
まぁ、初めて洋くんと血が繋がった母方の祖母の元へ、一番深い所へ今から潜り込むんだもんな。そりゃ緊張もするだろう。
ふと……俺には一生起こらない、そういう瞬間を持てることが少しだけ羨ましくもなってしまった。なんだこの感情は?
俺と翠のことは、両親には永遠の秘密にするつもりだ。カミングアウトして理解してもらおうなんて思っていない。
タブーなんだ、実の兄弟同士なんだ。
そのことは翠も俺もきちんとわきまえている。老いた両親を悲しませたくないから、共に墓場まで持っていく秘密にしようと誓っていた。
だから丈、お前は……俺達の分まで頑張って来い!
「流さん、このシャツは、大事なものだったんじゃ? まだタグがついた新品だったので心配です」
「あぁ、いいんだよ。それは洋くんにあげるよ」
「え? でも高そうなのに」
洋くんが困ったように眉根を寄せた。
「タダでもらうのは嫌か」
「……いや……あぁ、でもやっぱり申し訳ないです」
「じゃあお代を頂戴しよう」
ヒョイっと彼の襟元を掴んで浮かせて覗くと、可愛い淡い色の乳首がチラッと見えた。
おぉ~やっぱりこのサイズだと、こうすれば脱がなくても見えるのか。急いで、翠にも色違いを買ってこよう!
「なっ、何するんですか~‼」
洋くんは目を丸くして、驚いていた。
「ああぁ、すまん、ちょっと確認確認」
「りゅ、流兄さん、今……一体何を」
丈の恐ろしい目が、ギロリと光っていた。
そのまま勢いよく拳が飛んできそうだったので、急いで最中の入った紙袋を差し出した。
「ほらよ。今日の手土産だ。弟思いの優しい兄だろ。だから殴るなよ」
「あっ……私としたことが……手土産のことを迂闊にも忘れていました」
「気が利くだろう」
「……まぁ……あっ、お代を払いますよ」
「いいって、さっき洋くんからもらった」
可愛いつぶらな乳首を、ちらっと見せてもらったもんな!
昼過ぎに再び、丈と洋くんが母屋に現れた。
二人ともさっき貸してやった洋服をばっちり着こなしているのが微笑ましくて、顎に手をあてフムフムと頷いてしまった。
「いいぜ! バッチリだ! 二人ともよく似合っているな」
丈のスーツ姿は、想像以上に様になっていた。こんなにもサイズがぴったりってことは、本当に俺と体格が似ているということを実感した。
この先も、丈には負けたくはない。
俺も、更に鍛えねば!
二歳年下の弟には、最近妙に競争心が湧いてくる。昔はつまんない男だと思っていたのに、それは俺がよく見ていなかったせいなのか。それともお前がどんどん変わってきているからなのか。
きっと後者の方だろう。洋くんと出逢い、お前は変わったよ。
それほどまでに丈は凛々しい表情をしていた。
まぁ、初めて洋くんと血が繋がった母方の祖母の元へ、一番深い所へ今から潜り込むんだもんな。そりゃ緊張もするだろう。
ふと……俺には一生起こらない、そういう瞬間を持てることが少しだけ羨ましくもなってしまった。なんだこの感情は?
俺と翠のことは、両親には永遠の秘密にするつもりだ。カミングアウトして理解してもらおうなんて思っていない。
タブーなんだ、実の兄弟同士なんだ。
そのことは翠も俺もきちんとわきまえている。老いた両親を悲しませたくないから、共に墓場まで持っていく秘密にしようと誓っていた。
だから丈、お前は……俺達の分まで頑張って来い!
「流さん、このシャツは、大事なものだったんじゃ? まだタグがついた新品だったので心配です」
「あぁ、いいんだよ。それは洋くんにあげるよ」
「え? でも高そうなのに」
洋くんが困ったように眉根を寄せた。
「タダでもらうのは嫌か」
「……いや……あぁ、でもやっぱり申し訳ないです」
「じゃあお代を頂戴しよう」
ヒョイっと彼の襟元を掴んで浮かせて覗くと、可愛い淡い色の乳首がチラッと見えた。
おぉ~やっぱりこのサイズだと、こうすれば脱がなくても見えるのか。急いで、翠にも色違いを買ってこよう!
「なっ、何するんですか~‼」
洋くんは目を丸くして、驚いていた。
「ああぁ、すまん、ちょっと確認確認」
「りゅ、流兄さん、今……一体何を」
丈の恐ろしい目が、ギロリと光っていた。
そのまま勢いよく拳が飛んできそうだったので、急いで最中の入った紙袋を差し出した。
「ほらよ。今日の手土産だ。弟思いの優しい兄だろ。だから殴るなよ」
「あっ……私としたことが……手土産のことを迂闊にも忘れていました」
「気が利くだろう」
「……まぁ……あっ、お代を払いますよ」
「いいって、さっき洋くんからもらった」
可愛いつぶらな乳首を、ちらっと見せてもらったもんな!
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