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13章
花明かりのように 17
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「翠はどうして袈裟を着ないで、洋服なんだ? そもそも……どうして洗濯物の翠のパンツだけが湿っていたのかを、聞きたい」
「なんで……それを」
そう問われて、愕然とした。
だいたい何故密かに洗濯に出したはずの下着の状態を、流が知っているのか疑問もあるが……全く持ってその通りなので、これは言い逃れが出来ないと観念した。
「……それは……僕だって男だから……それなりに性欲はある。だから朝起きた時に、汚してしまったんだ。わ、悪いか」
正直に告げると、流は少し驚いた表情で目を見開いていた。
「兄さんの口からそんな言葉を聞くとは……ヤバイ! ヤバいぞ! 可愛い!」
ストレートに可愛いと言われて、本当に気恥ずかしい。だいたい流はいつも僕を可愛い可愛いと言うが、一体僕を何歳だと思っているのか。
「可愛いとか、もうそういう台詞は言うな。そういう形容詞は洋くんや涼くんに使うものだろう。そういうのは……本当に恥ずかしいんだよ」
「ははっ、そうか。翠が嫌がるなら口には出さない。なぁ……翠、どんな夢を見たんだよ。教えてくれよ」
「……絶対に、言いたくない」
「ふーん、相手はモチロン俺だよな?」
流が聞きたくて堪らない様子で、僕の肩をゆさゆさと揺らし聞いてくる。子供みたいな顔をして、ワクワクした目で……はぁ、これはもう僕が甘やかしすぎたせいなのか。思わず顔をしかめてしまった。
「なぁ翠。教えてくれよ。それに袈裟を着なかったのは何故だ?」
それは流に抱かれた夢のせいだ。
この歳で夢精してしまうなんて……そんな煩悩の塊のような躰で、すぐに仏に仕えるために袈裟を着るのは抵抗があったからだ。身を清めて少し散歩してから、心を整え、仏と向き合おうと思ったんだ。
とは、露骨過ぎて言えなかった。
「もう……お前の想像通りだよ。全部、流の頭の中で考えている通りだ」
「そうか……翠、夢の中の俺はどうだったか。逞しかったろう? ちゃんと翠を啼かせていたか」
「お前って奴は……もうそれ以上言うな。恥ずかしい。さぁ戻るぞ、そろそろお勤めせねば」
流の身体をドンっと押しのけ、僕は足早に母屋に戻り自分の部屋に駆け込んだ。
部屋の壁にもたれ天を仰ぎ……ふぅ……と息を吐いた。
「まずいな……この状態」
29歳でこの寺に戻って来て流と過ごすようになってから、ずっと数珠をこの手に握りしめ過ごしてきたはずだったのに。
数珠は煩悩を断ち切る智を表しているから、弟を……流を思い過ぎないように、煩悩に溺れすぎないように……自戒を込めていたはずなのに、本当に昨年の夏からだ。こんなことになってしまったのは。でも自らそれを望み身を投じたのだから、後悔はない。
「はぁ……流を思い過ぎてどうにかなりそうだ」
明け方の夢は、いつになく淫らなものだった。
先日、流に目隠しされ抱かれた時の余韻が、あの時の燃え上がるような熱が、まだ躰の奥底で燻っているのだろうか。
夢の中の僕は、全裸で……赤い縄で流によって全身を縛られていた。
そのまま躰を隅々まで見られ、それから……流の大きな手で丹念に触られていた。縄と縄の隙間から見える、赤く充血したように尖った乳首を……指先で弾かれると、刺激で下半身がわなわなと震えてしまった。
あぁ、なんと卑猥な姿だったことか。僕の躰は恥じらいを捨て、早く流に抱かれたいと、ひくひくと……待ち望んでいた。
こんなこと、流には絶対に話せないよ。
ふぅ……
もう一度、深呼吸した。
熱を収めないと。
せっかく達哉と話してクールダウンしたはずなのに、流に口づけされて、また……芽生えてしまった。
僕……どうなっているんだ?
流が欲しくて、欲しくて溜らない。こんな朝から……。
「なんで……それを」
そう問われて、愕然とした。
だいたい何故密かに洗濯に出したはずの下着の状態を、流が知っているのか疑問もあるが……全く持ってその通りなので、これは言い逃れが出来ないと観念した。
「……それは……僕だって男だから……それなりに性欲はある。だから朝起きた時に、汚してしまったんだ。わ、悪いか」
正直に告げると、流は少し驚いた表情で目を見開いていた。
「兄さんの口からそんな言葉を聞くとは……ヤバイ! ヤバいぞ! 可愛い!」
ストレートに可愛いと言われて、本当に気恥ずかしい。だいたい流はいつも僕を可愛い可愛いと言うが、一体僕を何歳だと思っているのか。
「可愛いとか、もうそういう台詞は言うな。そういう形容詞は洋くんや涼くんに使うものだろう。そういうのは……本当に恥ずかしいんだよ」
「ははっ、そうか。翠が嫌がるなら口には出さない。なぁ……翠、どんな夢を見たんだよ。教えてくれよ」
「……絶対に、言いたくない」
「ふーん、相手はモチロン俺だよな?」
流が聞きたくて堪らない様子で、僕の肩をゆさゆさと揺らし聞いてくる。子供みたいな顔をして、ワクワクした目で……はぁ、これはもう僕が甘やかしすぎたせいなのか。思わず顔をしかめてしまった。
「なぁ翠。教えてくれよ。それに袈裟を着なかったのは何故だ?」
それは流に抱かれた夢のせいだ。
この歳で夢精してしまうなんて……そんな煩悩の塊のような躰で、すぐに仏に仕えるために袈裟を着るのは抵抗があったからだ。身を清めて少し散歩してから、心を整え、仏と向き合おうと思ったんだ。
とは、露骨過ぎて言えなかった。
「もう……お前の想像通りだよ。全部、流の頭の中で考えている通りだ」
「そうか……翠、夢の中の俺はどうだったか。逞しかったろう? ちゃんと翠を啼かせていたか」
「お前って奴は……もうそれ以上言うな。恥ずかしい。さぁ戻るぞ、そろそろお勤めせねば」
流の身体をドンっと押しのけ、僕は足早に母屋に戻り自分の部屋に駆け込んだ。
部屋の壁にもたれ天を仰ぎ……ふぅ……と息を吐いた。
「まずいな……この状態」
29歳でこの寺に戻って来て流と過ごすようになってから、ずっと数珠をこの手に握りしめ過ごしてきたはずだったのに。
数珠は煩悩を断ち切る智を表しているから、弟を……流を思い過ぎないように、煩悩に溺れすぎないように……自戒を込めていたはずなのに、本当に昨年の夏からだ。こんなことになってしまったのは。でも自らそれを望み身を投じたのだから、後悔はない。
「はぁ……流を思い過ぎてどうにかなりそうだ」
明け方の夢は、いつになく淫らなものだった。
先日、流に目隠しされ抱かれた時の余韻が、あの時の燃え上がるような熱が、まだ躰の奥底で燻っているのだろうか。
夢の中の僕は、全裸で……赤い縄で流によって全身を縛られていた。
そのまま躰を隅々まで見られ、それから……流の大きな手で丹念に触られていた。縄と縄の隙間から見える、赤く充血したように尖った乳首を……指先で弾かれると、刺激で下半身がわなわなと震えてしまった。
あぁ、なんと卑猥な姿だったことか。僕の躰は恥じらいを捨て、早く流に抱かれたいと、ひくひくと……待ち望んでいた。
こんなこと、流には絶対に話せないよ。
ふぅ……
もう一度、深呼吸した。
熱を収めないと。
せっかく達哉と話してクールダウンしたはずなのに、流に口づけされて、また……芽生えてしまった。
僕……どうなっているんだ?
流が欲しくて、欲しくて溜らない。こんな朝から……。
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