1,132 / 1,657
13章
花明かりのように 14
しおりを挟む
寺の朝は、多忙だ。
山門へ続く長い階段は参詣者が毎日必ず通る場所なので、特に念入りに掃除をする。落ち葉やゴミなどがないように気を遣う。滑って転んだりされたら大変だからな。
中庭も然り。
手を入れ過ぎず、手を抜き過ぎず……その塩梅が大切なのだ。
庭掃除なんて若い者を雇えばいいのにと言われる、俺は、とにかく身体を動かしたいんだ。
どうして、こうも頑丈に生まれてきたのか。
今までの人生で……兄さんの風邪を数回もらった程度で、風邪らしい風邪もひかず、他に怪我や大病もしていない。
それに引き換え……兄さんは風邪もひきやすいし、インフルエンザにも毎年のようにかかる。しかもこじらせて気管支炎にもなりやすいと気の毒な程だ。
更には骨折も二度しているし、火傷の痕だって治りにくく……結局、全部見える傷として残ってしまう。
俺たち……逆に生まれれば良かったのに。
兄さんの細い躰が、それらの痛みを受け止めていくのは、見ていて忍びない。
俺の方はこの歳になっても体力だけでなく、その……精力の方も元気過ぎて……流石にこれを全て翠にぶつけては倒れてしまうだろう。
まぁ……とにかくそういう理由で月影寺の中を一日中、駆け回っているって訳さ。
翠を毎日のように何度も抱くわけにはいかないだろう。
そんな場所もないし翠にはそんな体力もない。それにあまり絶倫だと、翠に嫌われてしまうかもと不安も過るしな。
「さてと汗を流すか」
一汗かいたので、母屋に戻ってシャワーを浴びた。
腰にタオルを巻いて脱衣所でゴシゴシと髪の毛を乾かしていると、脱衣所に置かれた大きな籠に洗濯物が沢山入っているのが目に留まった。
「今のうちに洗濯しておくか」
ガサッとその籠をひっくり返し洗濯槽の中に放り込むと、籐の籠だったので底に洗濯物がひっかかってしまった。そろそろこの籠も取り替え時かと、何気なくその洗濯物を手づかみすると、それは……
「こっ! これって、翠のパンツじゃねーか」
俺は辺りをキョロキョロ見回した! これでは、まるで不審者だ。
翠のパンツを握りしめ、腰にタオル巻いただけの裸体。
薙はとっくに登校したし、丈と洋くんは離れだ。あいつらの洗濯物は、母屋とは別に干している。
ふと、昔……し損ねたことを思い出した。
やっぱりあの時は惜しかったよなーと、変態じみた考えがムラムラと湧いてくる。
そっと、それを嗅いでみたくて、鼻に近づかせてみた。
もう、あの頃のように、俺が何も知らないわけじゃない。
翠の雄の部分……俺はもう直に咥えたこともあるんだぜ、と遠い昔の俺に自慢してやりたいところだ。
あれ……これ、妙に全体が湿ってないか。
それに全然、におわねー!(つまんねー!)
何でだ?
官能的な翠の雄の匂いは、どこに行ったんだよ?
さっぱりした石鹸の匂いがするって、どういうことだ?
期待した分、拍子抜けしちまった。
待てよ、これって、どう考えても、兄さんがこっそり先に洗ったんだよなぁ。どうして今更そんなことを?
あ……待てよ。まさかまさかの……そのまさかなのか。
「夢精しちゃったのか……あの兄さんが」
それなら合点だ。
それにしても、あの澄ました顔で翠がこの歳で夢精したというのは、それだけ俺に飢えてくれたってことだよな。
そう思うと、顔がニヤついて止まらない。
すぐにでも翠の顔が見たくて、新しい作務衣に着替え、本堂にドタバタと向かった。
「兄さんー! どこにいるんだ?」
山門へ続く長い階段は参詣者が毎日必ず通る場所なので、特に念入りに掃除をする。落ち葉やゴミなどがないように気を遣う。滑って転んだりされたら大変だからな。
中庭も然り。
手を入れ過ぎず、手を抜き過ぎず……その塩梅が大切なのだ。
庭掃除なんて若い者を雇えばいいのにと言われる、俺は、とにかく身体を動かしたいんだ。
どうして、こうも頑丈に生まれてきたのか。
今までの人生で……兄さんの風邪を数回もらった程度で、風邪らしい風邪もひかず、他に怪我や大病もしていない。
それに引き換え……兄さんは風邪もひきやすいし、インフルエンザにも毎年のようにかかる。しかもこじらせて気管支炎にもなりやすいと気の毒な程だ。
更には骨折も二度しているし、火傷の痕だって治りにくく……結局、全部見える傷として残ってしまう。
俺たち……逆に生まれれば良かったのに。
兄さんの細い躰が、それらの痛みを受け止めていくのは、見ていて忍びない。
俺の方はこの歳になっても体力だけでなく、その……精力の方も元気過ぎて……流石にこれを全て翠にぶつけては倒れてしまうだろう。
まぁ……とにかくそういう理由で月影寺の中を一日中、駆け回っているって訳さ。
翠を毎日のように何度も抱くわけにはいかないだろう。
そんな場所もないし翠にはそんな体力もない。それにあまり絶倫だと、翠に嫌われてしまうかもと不安も過るしな。
「さてと汗を流すか」
一汗かいたので、母屋に戻ってシャワーを浴びた。
腰にタオルを巻いて脱衣所でゴシゴシと髪の毛を乾かしていると、脱衣所に置かれた大きな籠に洗濯物が沢山入っているのが目に留まった。
「今のうちに洗濯しておくか」
ガサッとその籠をひっくり返し洗濯槽の中に放り込むと、籐の籠だったので底に洗濯物がひっかかってしまった。そろそろこの籠も取り替え時かと、何気なくその洗濯物を手づかみすると、それは……
「こっ! これって、翠のパンツじゃねーか」
俺は辺りをキョロキョロ見回した! これでは、まるで不審者だ。
翠のパンツを握りしめ、腰にタオル巻いただけの裸体。
薙はとっくに登校したし、丈と洋くんは離れだ。あいつらの洗濯物は、母屋とは別に干している。
ふと、昔……し損ねたことを思い出した。
やっぱりあの時は惜しかったよなーと、変態じみた考えがムラムラと湧いてくる。
そっと、それを嗅いでみたくて、鼻に近づかせてみた。
もう、あの頃のように、俺が何も知らないわけじゃない。
翠の雄の部分……俺はもう直に咥えたこともあるんだぜ、と遠い昔の俺に自慢してやりたいところだ。
あれ……これ、妙に全体が湿ってないか。
それに全然、におわねー!(つまんねー!)
何でだ?
官能的な翠の雄の匂いは、どこに行ったんだよ?
さっぱりした石鹸の匂いがするって、どういうことだ?
期待した分、拍子抜けしちまった。
待てよ、これって、どう考えても、兄さんがこっそり先に洗ったんだよなぁ。どうして今更そんなことを?
あ……待てよ。まさかまさかの……そのまさかなのか。
「夢精しちゃったのか……あの兄さんが」
それなら合点だ。
それにしても、あの澄ました顔で翠がこの歳で夢精したというのは、それだけ俺に飢えてくれたってことだよな。
そう思うと、顔がニヤついて止まらない。
すぐにでも翠の顔が見たくて、新しい作務衣に着替え、本堂にドタバタと向かった。
「兄さんー! どこにいるんだ?」
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる