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13章
解き放て 16
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「あっあ……っ、もうKai」
「優也……ここか、ここがいいか」
「うっ、んっ……っ……あっ……んっ」
耳を澄まさなくても聞こえてくるのは、二人分の甘い声。求めあっている男同士の淫らな声は、俺の下半身をそのまま直撃した。
疲れて萎えていたものが途端に元気になってしまった。Kaiの精悍さ、優也さんのしとやかさ。強弱のついた波のようにリズムよく俺の脳内を掻き混ぜ、下半身を直撃してくる。
「んっ……ふっ……あぁ……」
俺のモノが自然の勃起を始めると、その容器の中で全方向から心地良い圧を感じて、くらっとした。もう……このままイケそうだ。
少しの罪悪感と、少しの好奇心。
もう止まることは出来ない。
優也さんの啼く声とKaiの煽る声が、いつしか俺と丈の情事シーンへと置き換わり、どこか客観的に俺の躰は自らイクことを望みだしていた。
「はっ……うぅ……あぁ……もぅ!」
ドクドクっとした血脈を股間に感じ、解放感が先端まで押し寄せて来た。うう……これは丈に誘導されて出すのとは、また違った感覚で、結局そのまま溢れ出してしまった。
「あぁ……」
一気に脱力した。
丈、どうしよう。俺、こんなことしてしまった。こんな容器の中に思いっきり出してしまうなんて……気持ち良かったはずなのに、何故か虚しくなってしまった。
そうえいば優也さんはどうしたかな。成功したのかな。優也さんはいいな……すぐにKaiに抱いてもらえて。
俺も今すぐ丈に抱いて欲しくなってしまった。
強制的に自分で出したソレは、想像とは違い、気持ち良いものではなかった。やっぱり俺って相当、丈に洗脳されているな。
丈のあの器用な指先が、こんなにも恋しくなるなんて。
****
月影寺。
洋との電話は、いつの間にか切れていた。
今日はKaiくんと優也さんの部屋を間借りするようだが、大丈夫だろうか。二人の熱にあてられないといいが。
突然インターホンが鳴ったので出てみると、流兄さんが立っていた。
「なんです?」
「おいおい、洋くんじゃないとそんな仏頂面か。まるで以前のお前に戻ったみたいだな」
「……」
「ははっ、藤原部長のお別れ会というのは無事に済んだのだろう。飯は食って来たのか。ほら夜食を持って来てやったんだ。感謝しろよ。翠兄さんが心配していたぞ」
「翠兄さんが?」
「お前、帰ってきた時、翠兄さんとすれ違っただろう?」
「えぇ、山門で……」
「元気がないみたいだから俺に様子を見て来いっていう訳だよ。相変わらず翠は、人のことばかり気にしている」
流兄さんはそう言いながらも満更ではないように、鼻を擦った。
「あれ? なんかこの部屋匂うな」
クンクンと犬みたいに鼻で匂いを嗅ぎだした。
「何が匂うんですか」
「女性の匂い……これは香水か、随分官能的な香りをつける女だな」
「えっ!」
暁香はお別れ会の時は控えていたのに、バーに入る前に洗面所に寄り、戻って来た時には、香水をつけていたのを思い出した。
「あぁ……今日ちょっと」
「へぇお前が今更、女と出かけるなんて珍しいな」
「そんなんじゃありませんよ。あの手紙を送って教えてくれた人だったので、バーで一杯飲んだだけです」
「ふぅん……本当にそれだけか」
「それだけですよ!」
思わずムキになってしまった。以前付き合っていた女性で何度も身体も繋げた相手だとは言いたくなかった。絶対に面倒臭いことになる。
「……丈はさ、女を散々抱いてきたんだよな。クールな医者という触れ込みで、お前はさぞかしモテただろう。あれ? そう言えば、お前とこういう話すんの初めてだな」
何を唐突に? 焦ってしまった。
「そういう流兄さんこそ、今までどんな女性遍歴があるんだか」
そう言い返すと、流兄さんは真顔になった。
「俺は女性とは寝てない……だが男とは……寝た」
そうだったのか。報われない恋を抱えて、この歳まで生きて来た人だ。きっと翠兄さんの面影を追って、少しでも似た人なら躰を重ねてしまったのではと思うと切なくなった。
「俺の話はもうよせ。今は最高に幸せなんだし、翠兄さんに、このことは言うなよ」
「もちろん、分かってますよ」
「それにしてもさ、洋くんもお前を置いて一カ月羽を伸ばせるってわけか。そうだ! 今頃、童貞卒業してるかもな。ははっ」
最後はいつもの豪快な笑いだった。
「え? なんで洋が童貞だって知っているのですか」
「おっ! やっぱりそうなのか。うん、そうだろうと思っていたが」
「はぁ? カマをかけたんですか」
「ははっ、でも洋くんは女性から見たら王子様タイプで、さぞかしもてるんじゃないか。お前も、うかうかしていられないぞ」
そこまで言われて、急にソウルにいる洋のことが心配になった。
MIKAさんという人とは本当に何もないんだよな? それに洋みたいな綺麗な顔の男は韓国女子からモテそうで、心配になる。
あぁ……もう今すぐにでもソウルに飛んで行きたくなってしまったじゃないか。
何もかも全部、流兄さんのせいだ!
「おいおい、丈ちゃんよ。そんな顔で睨むなって。俺のせいじゃない」
「優也……ここか、ここがいいか」
「うっ、んっ……っ……あっ……んっ」
耳を澄まさなくても聞こえてくるのは、二人分の甘い声。求めあっている男同士の淫らな声は、俺の下半身をそのまま直撃した。
疲れて萎えていたものが途端に元気になってしまった。Kaiの精悍さ、優也さんのしとやかさ。強弱のついた波のようにリズムよく俺の脳内を掻き混ぜ、下半身を直撃してくる。
「んっ……ふっ……あぁ……」
俺のモノが自然の勃起を始めると、その容器の中で全方向から心地良い圧を感じて、くらっとした。もう……このままイケそうだ。
少しの罪悪感と、少しの好奇心。
もう止まることは出来ない。
優也さんの啼く声とKaiの煽る声が、いつしか俺と丈の情事シーンへと置き換わり、どこか客観的に俺の躰は自らイクことを望みだしていた。
「はっ……うぅ……あぁ……もぅ!」
ドクドクっとした血脈を股間に感じ、解放感が先端まで押し寄せて来た。うう……これは丈に誘導されて出すのとは、また違った感覚で、結局そのまま溢れ出してしまった。
「あぁ……」
一気に脱力した。
丈、どうしよう。俺、こんなことしてしまった。こんな容器の中に思いっきり出してしまうなんて……気持ち良かったはずなのに、何故か虚しくなってしまった。
そうえいば優也さんはどうしたかな。成功したのかな。優也さんはいいな……すぐにKaiに抱いてもらえて。
俺も今すぐ丈に抱いて欲しくなってしまった。
強制的に自分で出したソレは、想像とは違い、気持ち良いものではなかった。やっぱり俺って相当、丈に洗脳されているな。
丈のあの器用な指先が、こんなにも恋しくなるなんて。
****
月影寺。
洋との電話は、いつの間にか切れていた。
今日はKaiくんと優也さんの部屋を間借りするようだが、大丈夫だろうか。二人の熱にあてられないといいが。
突然インターホンが鳴ったので出てみると、流兄さんが立っていた。
「なんです?」
「おいおい、洋くんじゃないとそんな仏頂面か。まるで以前のお前に戻ったみたいだな」
「……」
「ははっ、藤原部長のお別れ会というのは無事に済んだのだろう。飯は食って来たのか。ほら夜食を持って来てやったんだ。感謝しろよ。翠兄さんが心配していたぞ」
「翠兄さんが?」
「お前、帰ってきた時、翠兄さんとすれ違っただろう?」
「えぇ、山門で……」
「元気がないみたいだから俺に様子を見て来いっていう訳だよ。相変わらず翠は、人のことばかり気にしている」
流兄さんはそう言いながらも満更ではないように、鼻を擦った。
「あれ? なんかこの部屋匂うな」
クンクンと犬みたいに鼻で匂いを嗅ぎだした。
「何が匂うんですか」
「女性の匂い……これは香水か、随分官能的な香りをつける女だな」
「えっ!」
暁香はお別れ会の時は控えていたのに、バーに入る前に洗面所に寄り、戻って来た時には、香水をつけていたのを思い出した。
「あぁ……今日ちょっと」
「へぇお前が今更、女と出かけるなんて珍しいな」
「そんなんじゃありませんよ。あの手紙を送って教えてくれた人だったので、バーで一杯飲んだだけです」
「ふぅん……本当にそれだけか」
「それだけですよ!」
思わずムキになってしまった。以前付き合っていた女性で何度も身体も繋げた相手だとは言いたくなかった。絶対に面倒臭いことになる。
「……丈はさ、女を散々抱いてきたんだよな。クールな医者という触れ込みで、お前はさぞかしモテただろう。あれ? そう言えば、お前とこういう話すんの初めてだな」
何を唐突に? 焦ってしまった。
「そういう流兄さんこそ、今までどんな女性遍歴があるんだか」
そう言い返すと、流兄さんは真顔になった。
「俺は女性とは寝てない……だが男とは……寝た」
そうだったのか。報われない恋を抱えて、この歳まで生きて来た人だ。きっと翠兄さんの面影を追って、少しでも似た人なら躰を重ねてしまったのではと思うと切なくなった。
「俺の話はもうよせ。今は最高に幸せなんだし、翠兄さんに、このことは言うなよ」
「もちろん、分かってますよ」
「それにしてもさ、洋くんもお前を置いて一カ月羽を伸ばせるってわけか。そうだ! 今頃、童貞卒業してるかもな。ははっ」
最後はいつもの豪快な笑いだった。
「え? なんで洋が童貞だって知っているのですか」
「おっ! やっぱりそうなのか。うん、そうだろうと思っていたが」
「はぁ? カマをかけたんですか」
「ははっ、でも洋くんは女性から見たら王子様タイプで、さぞかしもてるんじゃないか。お前も、うかうかしていられないぞ」
そこまで言われて、急にソウルにいる洋のことが心配になった。
MIKAさんという人とは本当に何もないんだよな? それに洋みたいな綺麗な顔の男は韓国女子からモテそうで、心配になる。
あぁ……もう今すぐにでもソウルに飛んで行きたくなってしまったじゃないか。
何もかも全部、流兄さんのせいだ!
「おいおい、丈ちゃんよ。そんな顔で睨むなって。俺のせいじゃない」
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