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13章
安志&涼編 『僕の決意』20
しおりを挟む正直な胸の内は、こうだ。
涼の前では大人ぶって冷静に対応したが、本当は涼のこの可愛い唇を奪った奴に怒りも覚えたし嫉妬もした。
あーあ、絶対アイツだよなぁ。
あの駅の改札口ですれ違った金髪碧眼の大男。あんな奴と涼が二人きりで一晩過ごしただけでもショックなのに、まさか……キスまでされていたなんて!
涼の彼氏として、黙っていられない。
でも涼には涼の領域があって……ハイスクール時代の涼のことを何も知らない俺が嫉妬心だけで、その大切な時代の思い出を壊すわけにはいかない。涼の信じる気持ちを応援してやりたいのも本音だ。
「ふぅ……やっと言えたよ。でも安志さん……もっと怒ると思った」
いやいや俺の腕の中で安堵している涼のことを見たら、それが怒れないんだよ。こんな美人で可愛い子を抱けるのは俺だけだと思うと怒る気が失せてしまった。
それに俺のに方も、告白しないといけないことがあったから。
「うーん怒りたいのは山々なんだけど、俺も涼に謝らないといけないことがあって……」
「な……に?」
涼が不安そうに、俺のことを見上げてきた。
うぅ……言い難いな。昨日の俺が仕出かしたことは、かなり酷いから。
「うーん、そのさっ」
「うん? 」
「あー、そのだな」
なかなか言い出せない俺……ったく、男らしくないぞ。
「あ……もしかして……僕と洋兄さんを間違えた? 」
「えっ! なんでそれ知って? 」
「えっ! 本当なの!? 」
ヤバイ……今度は俺が鎌を掛けられてしまったのか!
涼が、途端にジドッとした目つきになった。
うはっ~,参ったな。そういう目つきも洋に似て怖いんですけど……。
「ううう……ごめんな。昨日さ、涼の布団に洋が寝ていて、てっきり涼だと思って……うっかり」
「えっと……安志さん、うっかりって……まっまさか、いつも僕にするようなことをしちゃったの!?」
涼が血相を変えて俺の肩を掴みガタガタと揺さぶってくるので、これはもう……許してくれと願い出るしかない!
「すっ、すまん!」
「信じられない! あんなことしたら、洋兄さんが驚いて怖がってしまうのに。兄さんのトラウマを刺激しちゃったじゃないか! もう……っ、安志さんの馬鹿、馬鹿、馬鹿っ――!」
うわ~ヤバいぞ。
「ううう……反省してる。酔っぱらっていてし暗かったし……それに涼が出かけたの知らなくて、涼の布団にまさか洋が寝ているなんて思わなくて……俺も驚いたし、あっそうだ! 洋の護身術すごかったぞ」
涼が興奮して怒るのも仕方がないことをした。でも話をそらしたかった。あまりにリアルに俺が洋にしたことを聞かれると決まりが悪いから。
「えっ、洋兄さんが?」
「あぁ、あれって涼が仕込んだんだろう? あれすごかったぞ。一撃で終わった」
「そっか、洋兄さん、ちゃんと実践できたんだね! よかった、教えた甲斐があったよ。あっ……ということは、安志さんのココって、無事なの?」
いきなり涼が俺の股間に手を当て、俺の息子を意味ありげに撫でてきたので「わっわっわっ」と焦ってしまった。
涼は、手を休めることなく、悪戯な笑みを浮かべていた。
「あ……大っきくなってきた」
「りょ、涼!」
それはかなり蠱惑的な笑みで、もうさっきからクラクラ、ムラムラしてくるんだよ。
おいおい……今日の涼は、さっきから突拍子もない行動ばかりしてくるんだから、動揺するよ。それって誘っているのか。
「だから、涼……俺の……無事かどうか試させて!」
俺にしては柄でもないことを言いながら、涼の肩を掴んで、布団に思いっきり押し倒してしまった。
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