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13章
安志&涼編 『僕の決意』18
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「じゃあ、安志と涼はこの部屋を使ってくれ。その……昨日と違う部屋にしておいたから、大丈夫だ」
洋に通されたのは、昨日とは違う寺の離れの宿坊の一室。六畳ほどの和室でこじんまりしているが、よく手入れされていた。布団が既に二つぴったり並んで敷かれているのが、なんだか照れ臭かった。
「ん?ははっ、もうヘマはしないよ。それに今日はちゃんと涼だ」
「……だなっ」
「洋、クリスマスから正月にかけて、いろいろありがとうな。涼は最近疲れていたんだ。モデルの仕事が軌道に乗ったのはいいが、いろいろ気を遣うことが多いし、自由な外出もままならなくて……俺には弱音を吐かないが」
「そうみたいだね。涼はお酒も飲んでないのに、こんなに熟睡しちゃうなんて」
「あぁきっと涼はもう朝まで起きなさそうだ」
横抱きにして連れて来た涼を、そっと布団の上に下ろした。
「目を瞑っていると、やっぱりまだまだ洋に似てるな」
「そうか?もう安志の……涼だな。まだまだ幼い所もあるけど、お前の恋人として奮闘してるよ」
「あぁ、すごい頑張り屋だよ」
「ずっと傍にいてやってくれ。ちゃんと守ってやってくれ」
「もちろんだよ」
そう答えると洋は嬉しそうに、花のように笑った。洋にとって血の繋がった大事な従兄弟の涼は、俺にとってもかけがえのない人だよ。
洋は「ここは宿坊だけど……新年なので泊り客は誰もいない。風呂もちゃんとついているし入れるようにしてある」としつこい程、念を押してから、離れに戻っていった。
おいおい、もしかしてそれって俺達への気遣いなのか。
あーでもかわいい涼は残念ながら夢の中だ。
暫くじっと待ってみたが、規則正しい寝息しか聞こえてこない。これってお預けくらった犬みたいんだなと苦笑してしまった。
結局起きる気配もないので、諦めて俺も涼の隣で眠ることにした。
ぐっすり眠っている涼は目を覚ますことはなかったので、俺の腕の中にすっぽりと抱きしめてみた。ほっそりとしたまだ少年のような躰を抱きしめ、項にキスすると、途端に甘い香りが漂った。ふぅ……洋とはまた別のいい香りだ。おっと昨夜のことは忘れないと!
それにしても、こんなにも綺麗で可愛い子が俺のことを好きでいてくれるなんて、まだたまに夢みたいだと思ってしまう。
俺はちゃんと、その愛と同等のものを涼に返せているだろうか。
涼とクリスマスに誓ったように、お互いに歩み寄って過ごす一年にしたい。
今宵は涼の甘い香りに誘われるように、深く穏やかな幸せな眠りに落ちていくだろう。でも今日は下半身は擦り付けないぞ。昨日懲りたからな。こうやって抱きしめているだけでも、とても幸せなんだ。
ところが俺がうとうとと微睡んでいると、突然涼がムクっと起き上がった。そして「起きたのか」と言う前に、突然キスしてきた。
「んっ?」
えっと……涼からのキスなんて珍しいな。一体どうしたんだ?
「……安志さん、起きている? 」
「あぁ、どうした? 」
「……好きだ」
どこか切羽詰まったような、切ない声だった。
洋に通されたのは、昨日とは違う寺の離れの宿坊の一室。六畳ほどの和室でこじんまりしているが、よく手入れされていた。布団が既に二つぴったり並んで敷かれているのが、なんだか照れ臭かった。
「ん?ははっ、もうヘマはしないよ。それに今日はちゃんと涼だ」
「……だなっ」
「洋、クリスマスから正月にかけて、いろいろありがとうな。涼は最近疲れていたんだ。モデルの仕事が軌道に乗ったのはいいが、いろいろ気を遣うことが多いし、自由な外出もままならなくて……俺には弱音を吐かないが」
「そうみたいだね。涼はお酒も飲んでないのに、こんなに熟睡しちゃうなんて」
「あぁきっと涼はもう朝まで起きなさそうだ」
横抱きにして連れて来た涼を、そっと布団の上に下ろした。
「目を瞑っていると、やっぱりまだまだ洋に似てるな」
「そうか?もう安志の……涼だな。まだまだ幼い所もあるけど、お前の恋人として奮闘してるよ」
「あぁ、すごい頑張り屋だよ」
「ずっと傍にいてやってくれ。ちゃんと守ってやってくれ」
「もちろんだよ」
そう答えると洋は嬉しそうに、花のように笑った。洋にとって血の繋がった大事な従兄弟の涼は、俺にとってもかけがえのない人だよ。
洋は「ここは宿坊だけど……新年なので泊り客は誰もいない。風呂もちゃんとついているし入れるようにしてある」としつこい程、念を押してから、離れに戻っていった。
おいおい、もしかしてそれって俺達への気遣いなのか。
あーでもかわいい涼は残念ながら夢の中だ。
暫くじっと待ってみたが、規則正しい寝息しか聞こえてこない。これってお預けくらった犬みたいんだなと苦笑してしまった。
結局起きる気配もないので、諦めて俺も涼の隣で眠ることにした。
ぐっすり眠っている涼は目を覚ますことはなかったので、俺の腕の中にすっぽりと抱きしめてみた。ほっそりとしたまだ少年のような躰を抱きしめ、項にキスすると、途端に甘い香りが漂った。ふぅ……洋とはまた別のいい香りだ。おっと昨夜のことは忘れないと!
それにしても、こんなにも綺麗で可愛い子が俺のことを好きでいてくれるなんて、まだたまに夢みたいだと思ってしまう。
俺はちゃんと、その愛と同等のものを涼に返せているだろうか。
涼とクリスマスに誓ったように、お互いに歩み寄って過ごす一年にしたい。
今宵は涼の甘い香りに誘われるように、深く穏やかな幸せな眠りに落ちていくだろう。でも今日は下半身は擦り付けないぞ。昨日懲りたからな。こうやって抱きしめているだけでも、とても幸せなんだ。
ところが俺がうとうとと微睡んでいると、突然涼がムクっと起き上がった。そして「起きたのか」と言う前に、突然キスしてきた。
「んっ?」
えっと……涼からのキスなんて珍しいな。一体どうしたんだ?
「……安志さん、起きている? 」
「あぁ、どうした? 」
「……好きだ」
どこか切羽詰まったような、切ない声だった。
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