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13章
安志&涼編 『僕の決意』5
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大学に入ってすぐに日本人留学生の康太の仲良くなった。厳密に言うと、Ryoと同じ日本人という点に興味があったからだけれども。
康太は日本の大きな時計会社の息子で、マンハッタンの一等地にある高級マンションで優雅に暮らしていた。まぁ俺の父も大きな会社の経営者だから価値観が似ていて、すぐに仲良くなれた。
「へぇ……康太はこんな女性誌読むのか」
まだ殺風景な康太の家で、この部屋に似つかわしくない女性誌を見つけたので、ちょっと興味を持った。
「なぁこれ見ていいか」
「あっそれ? 親父が勝手に送り付けて来るんだよ」
「へぇ、なんで?」
「親父の会社の広告が掲載された雑誌をさ、全部送ってくるんだよ。お前も後学のため読んでおけってね」
「なんだ、もう跡取り修行か」
「まぁね。コーヒー淹れてくるよ、お前ブラックでいいか」
「ありがとう!」
机の上に置かれた日本のファッション雑誌をパラパラと捲ってみた。Ryoの国……日本の若者たちの様子を知るいい機会だと思ったからな。すると最後の方のページにふとよく知った顔を見つけた。
「えっあれ?これって、えーー!」
「Billyどうした? 大きな声出して」
「これっ、この青年!」
俺は開いた口が塞がらなかった。 まさか……俺がずっと探していたRyoが、この雑誌の中にいるなんて!思いもしなかった。
「なに?」
康太は冷静に俺が指差す広告を見つめた。
「あぁこれか」
「しっ知ってるのか」
「だってこの広告は親父の会社のものだからさ」
「えっ、じゃあこのモデルの男のことも?」
康太は不思議そうにじっと写真を見つめた。
「あれ? 新しいモデルになったのか。前の奴と違うな」
「知らないのか」
「うーん、どうやら最近モデルを変えたみたいだ」
「この時計をしているモデルは俺のハイスクール時代の友人なんだ! なぁ連絡取りたいんだが出来ないか」
唐突にかなり無茶なことを言ったと思う。康太は、俺が必死に男に会いたいと頼む様子に苦笑していた。
「おいおい、なんかBillyのイメージが崩れるな。お前がこんなに日本人モデルのことで騒ぐなんてさ。しかも男に……ハイスクール時代はアメフト部の主将して女を泣かせまくったんだろう」
「なぁ親父さんに聞いてもらえないか。頼む」
「やめろよ。そんな殊勝になられても困るよ。あーもう、わかったよ。聞いてやるよ」
****
結局そんな経緯で、俺は康太の父親の計らいと自分のおやじのコネを使って、Ryoに会えることになった。
七月のサマーキャンプ以来……五ヶ月ぶりに会うRyoのことを考えたら、恋人を抱く時よりも心臓がドキドキして来た。
そんな様子に康太が訝しげに話しかけて来た。
「なぁソイツって、そんなに大事な友達なのか」
「モチロンそうだ!」
「ふーん日本での連絡先も知らなかったのに?」
「それは……事情があって」
確かに周りから見ればおかしな話だろう。だが俺はあのサマーキャンプでの事件を目の当たりにしていたから、嫌な思い出に蓋をしたくて距離を置こうとRyoが思っていると感じていた。
そんなRyoをこうやって新年早々強引な手段で呼び出して怒られないか……今度は心配になってきた。
「あっ来たみたいだぞ。親父と話しているアイツか……なるほど目立つな」
康太の声にビクッと反応し、人混みの向こうに目を凝らした。
Ryoだ! 俺のRyoだ!
(いや、それはないけど。そう言い切りたいほど、Ryoはどんな綺麗な女性よりも艶やかに輝いていた)
あれ? アメリカにいた時よりも色白になったか。いつも陸上部で走っていた躰はもっと日焼していたのに。でもすっと姿勢のいい立ち姿、本来の健康的な印象は変わってないので、ほっとした。
ただ……ヘアスタイルも着ているものも、モデルをしているだけあって随分と洗練された印象で、それにはちょっと困ってしまった。
参ったな……綺麗すぎるよ。
上品で清楚なまるで異国の王子様っぽい雰囲気に目を奪われる。アメリカ中探したってこんな綺麗で可愛い奴はいないと断言できるぜ!
ハイスクール時代は白いシャツかTシャツに洗い晒しのジーンズという爽やかなスタイルが多かったRyoだったから、なんだかぐっとおしゃれになっていて……しかも妙に甘く色っぽいオーラが滲み出ていて、思わず目を擦ってしまった。
色気……そうだ! なんか妙な色気が出てる!
それが久しぶりにあったRyoへの感想というか、違和感だった。
日本に帰国して数か月でこんなに変わるなんて。一体どんな生活送っているんだ? あっ……もしかして大学でついに深い関係の彼女とか出来たのか。
綺麗なRyoはハイスクールでは、勿論女にもよくモテた。男のファンも密かに多かったけどな。アメリカでステディなガールフレンドがいたのは知っているが、深い関係ではなかったはずだ。ガールフレンドの方が、色気のあることに全く靡かないRyoに対して、俺の彼女に嘆いていた位だからな。それに彼女とは卒業と同時に自然消滅したらしいし……。
とにかく聞きたいことが山ほどある!
これは一晩中話したい。
どうにかしてゆっくり話せる場所と時間を手に入れないと!
康太は日本の大きな時計会社の息子で、マンハッタンの一等地にある高級マンションで優雅に暮らしていた。まぁ俺の父も大きな会社の経営者だから価値観が似ていて、すぐに仲良くなれた。
「へぇ……康太はこんな女性誌読むのか」
まだ殺風景な康太の家で、この部屋に似つかわしくない女性誌を見つけたので、ちょっと興味を持った。
「なぁこれ見ていいか」
「あっそれ? 親父が勝手に送り付けて来るんだよ」
「へぇ、なんで?」
「親父の会社の広告が掲載された雑誌をさ、全部送ってくるんだよ。お前も後学のため読んでおけってね」
「なんだ、もう跡取り修行か」
「まぁね。コーヒー淹れてくるよ、お前ブラックでいいか」
「ありがとう!」
机の上に置かれた日本のファッション雑誌をパラパラと捲ってみた。Ryoの国……日本の若者たちの様子を知るいい機会だと思ったからな。すると最後の方のページにふとよく知った顔を見つけた。
「えっあれ?これって、えーー!」
「Billyどうした? 大きな声出して」
「これっ、この青年!」
俺は開いた口が塞がらなかった。 まさか……俺がずっと探していたRyoが、この雑誌の中にいるなんて!思いもしなかった。
「なに?」
康太は冷静に俺が指差す広告を見つめた。
「あぁこれか」
「しっ知ってるのか」
「だってこの広告は親父の会社のものだからさ」
「えっ、じゃあこのモデルの男のことも?」
康太は不思議そうにじっと写真を見つめた。
「あれ? 新しいモデルになったのか。前の奴と違うな」
「知らないのか」
「うーん、どうやら最近モデルを変えたみたいだ」
「この時計をしているモデルは俺のハイスクール時代の友人なんだ! なぁ連絡取りたいんだが出来ないか」
唐突にかなり無茶なことを言ったと思う。康太は、俺が必死に男に会いたいと頼む様子に苦笑していた。
「おいおい、なんかBillyのイメージが崩れるな。お前がこんなに日本人モデルのことで騒ぐなんてさ。しかも男に……ハイスクール時代はアメフト部の主将して女を泣かせまくったんだろう」
「なぁ親父さんに聞いてもらえないか。頼む」
「やめろよ。そんな殊勝になられても困るよ。あーもう、わかったよ。聞いてやるよ」
****
結局そんな経緯で、俺は康太の父親の計らいと自分のおやじのコネを使って、Ryoに会えることになった。
七月のサマーキャンプ以来……五ヶ月ぶりに会うRyoのことを考えたら、恋人を抱く時よりも心臓がドキドキして来た。
そんな様子に康太が訝しげに話しかけて来た。
「なぁソイツって、そんなに大事な友達なのか」
「モチロンそうだ!」
「ふーん日本での連絡先も知らなかったのに?」
「それは……事情があって」
確かに周りから見ればおかしな話だろう。だが俺はあのサマーキャンプでの事件を目の当たりにしていたから、嫌な思い出に蓋をしたくて距離を置こうとRyoが思っていると感じていた。
そんなRyoをこうやって新年早々強引な手段で呼び出して怒られないか……今度は心配になってきた。
「あっ来たみたいだぞ。親父と話しているアイツか……なるほど目立つな」
康太の声にビクッと反応し、人混みの向こうに目を凝らした。
Ryoだ! 俺のRyoだ!
(いや、それはないけど。そう言い切りたいほど、Ryoはどんな綺麗な女性よりも艶やかに輝いていた)
あれ? アメリカにいた時よりも色白になったか。いつも陸上部で走っていた躰はもっと日焼していたのに。でもすっと姿勢のいい立ち姿、本来の健康的な印象は変わってないので、ほっとした。
ただ……ヘアスタイルも着ているものも、モデルをしているだけあって随分と洗練された印象で、それにはちょっと困ってしまった。
参ったな……綺麗すぎるよ。
上品で清楚なまるで異国の王子様っぽい雰囲気に目を奪われる。アメリカ中探したってこんな綺麗で可愛い奴はいないと断言できるぜ!
ハイスクール時代は白いシャツかTシャツに洗い晒しのジーンズという爽やかなスタイルが多かったRyoだったから、なんだかぐっとおしゃれになっていて……しかも妙に甘く色っぽいオーラが滲み出ていて、思わず目を擦ってしまった。
色気……そうだ! なんか妙な色気が出てる!
それが久しぶりにあったRyoへの感想というか、違和感だった。
日本に帰国して数か月でこんなに変わるなんて。一体どんな生活送っているんだ? あっ……もしかして大学でついに深い関係の彼女とか出来たのか。
綺麗なRyoはハイスクールでは、勿論女にもよくモテた。男のファンも密かに多かったけどな。アメリカでステディなガールフレンドがいたのは知っているが、深い関係ではなかったはずだ。ガールフレンドの方が、色気のあることに全く靡かないRyoに対して、俺の彼女に嘆いていた位だからな。それに彼女とは卒業と同時に自然消滅したらしいし……。
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