重なる月

志生帆 海

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12章

『月のため息』(丈・洋編 3)

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「うわっ! すごい動きだな」

 丈の手元でウィーンと音と立て震えるそれを、まじまじと見つめてしまった。誘惑に負けてそっと手を伸ばして触れてみると、ふんわり、しっとりした不思議な感触だった。

 なんだ? この感じ!

「なるほどシリコンとゲルの二重構造になっているらしいな、なかなかよく出来ている」
「丈、何をじっくり観察してんだよ。もう返してくれ!」

 こういうのは普通女性が使うんだろ。まさか……丈は以前女性に使ったことがあるのかと喉まで出かかったが、野暮なことだ。聞くのはやめておいた。

「洋、せっかくだから少し使ってみるか」
「なっ! もう変態!」
「おいおい、それはないぞ。これは洋がもらったものなんだろう。涼くんもまた……何故このような物を。まぁ、せっかくもらったのだから一度位は試してみたらどうだ?」
「うっ……」
「涼くんに感想を言わないと駄目だろう」
「いちいち、そんなこと言わない! 」

 もぅ! 丈は意地悪だ。それにこんなものを俺に渡した涼のことも後で電話して叱ってやると心に誓った。
 
「洋、ほらいい子にしていろ」

 丈がさっきの続きの甘いキスを仕掛けながら、俺をソファに押し倒してくる。このソファはそういうことが出来るように奥行きが広い特注品だから、そのまま俺はすっぽりとソファの上で、丈に包まれるような姿勢になってしまう。

 こんな風に朝から押し倒され襲われそうな状況だというのに、相手が丈だというだけで相変わらず俺は許してしまう。本当に昔からの願いというものは、どこまでも俺を駄目にする。

「はぁ、分かったよ。じゃあ……一度だけだぞ。よくなかったらすぐにやめろよ」
「いいのか」

 丈の方も嬉しそうに嬉々として答えるのだから全く。これが外では立派な外科医として通っているなんて信じられないよ。

「もう、しょうがないな、ほら」

 躰から力を抜くとすぐに、ズボンの上からバイブをあてられた。

「んっ」

 想像以上に振動が伝わってきた。まだ反応を見せていないそこに沿うように丈が動かすので、まるで丈のものを擦りあわされているような感覚と似ている気がして、溜らない。

「気持ちいいか」
「……わ……わからない」

 素直に答えると、丈が俺のベルトを外し、今度は下着越しにあてて来た。

「ふっ……ん……」

 ズボンよりももっと薄い生地越しに振動が伝わってくると、むずむずと下半身が疼き始めるのを感じてしまった。まずい……布との摩擦が想像以上に気持ちいい。
 
「あっ……」
「ん? 感じるのか」
「……もうっ、いちいち確認するな!」

 そもそも、ここは明るすぎないか。

「丈、ブラインド降ろせよ。前みたいに誰か来たらどうするんだよ」
「正月早々、誰も来ないよ。洋は心配症だな」
「そう言って……クリスマスには涼サンタが来たじゃないか!」
「余裕だな。洋。どれ振動を『強』にしてみよう」

 格段に振動が強くなった途端に、俺のモノが確実に芯をもって勃起していくのを感じた。

「あっ……や、見るなよ」
「あてているだけで、もうこんなに?」
「うっ、五月蠅い!」

 俺は……本当にどうしてこんなに感度のいい躰になってしまったんだ。それというのも全部丈によって数年かけて開拓されたせいだ。男なのに、もう後ろでしかイケなくなってしまったことも自覚している。

「あっ……もっと……そこじゃなくて」

 もう……機械の振動をあてられるだけでは、物足りなくなってきてしまった。

「気持ち良さそうだ。ちゃんとあててやるから」

 気が付けば下着を全部脱がされてしまっていた。上半身にはもこもこのセーターを着ているのに、下半身は丸見えで淫靡な雰囲気だ。

「膝を立てて……そうだ」
「もう……丈は、立派な変態だ」
「ふっ、洋に関しては、どうとでも」
「お前、開き直っているな」

 傍で聞いたらとんでもない会話だろう。俺と丈の間では日常茶飯事だが。腰にクッションを敷かれ、そのまま茶せんのようなバイブが内股の行き止まりまで辿ってくると、ゾクゾクとした感触と期待が満ちてくる。

「さぁ……本来の使い方を」
「本来でもないよっ! あっ」

 本来は女の子の入り口を刺激するものだろう。俺の場所とは違うのに……それでも丈を受け入れる入り口をその茶せんの先のような凹凸の突起の振動で触れられると、キュッと、そこがしまっていくのを感じた。

「あ……なんか変だ……んっくっ……」
「感じるのか」
「ん……」
「気持ちいいのか」
「あっ……んんっ」

 グリッと少しだけ侵入して内部を揺さぶられる。指の時とは違う質感と動きに戸惑ってしまう。

「ん……変っ……変な感じ」
「私のより気持ちいいか」
「ん……わからない」
「どっちだ?」
 
 バイブの動きは機械的で、柔らかい形状も最初は気持ち良かったのだが、微妙に物足りない。確実に気持ちがいいことはいいのだが、これじゃイケない。俺のものはもう固くなって勃ちあがり、先端から透明の汁を漏らしているのに。

「はっ……はっ……」

 呼吸が荒くなってくる。
 我慢できない。もう……もういかせてほしい。

「洋……蕩けるような顔しているな」

 丈が口づけをしてくれる。その肩に手を回しぎゅっと引き寄せる。俺の方から……

「丈……もう苦しいよ」
「どうして欲しい?」
「ん……その……」
「ちゃんと言わないと、ずっとこれを挿れたままにするぞ」
「え……やだ……」
「じゃあどうする?」
「……丈の……挿れて欲しい」

 とんだ痴態だ!こんな朝からこんなこと口走るなんて。
 丈は、とても嬉しそうな顔になったが。

「最高だな。朝から洋のおねだりを聞けるなんて」
「ばっ、馬鹿」
「ははっなんとでも。洋の中に、入ってもいいか」
「……いいよ」


 丈は俺の窄まりにあてていたバイブを床に放り投げ、自分のベルトを緩めた。






あとがき (不要な方はスルーです)






****

 おはようございます。朝からこんな話。
 どうでもいい内容なんですが、珍しいシチュの二人を描くのが楽しくなってしまいました。もう少しだけお付き合いくださいね!
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