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12章
聖夜を迎えよう14
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最初は恥ずかしがっていた涼だったが、月影寺に着く頃には、サンタの衣装を着ているのを楽しもうと、前向きな気持ちになってきたようだ。
「ねぇ安志さん、せっかくだからサンタの衣装のまま洋兄さんの所に寄ってもいい?」
「いいけど、洋を驚かすのか」
「サンタクロースがイブの朝にやってくるなんてfantasticで、きっと喜んでくれるよ」
「うーん、でも……お邪魔じゃないか。まだ朝早いのに」
「まぁ……それはそうかもしれないけど、きっと考えることは同じだからいいよね?」
涼が何を言っているのか、最初分からなかった。
すると涼が自分の首元を指さして、口を尖らせた。
「なんだ? 」
「安志さん、僕に昨夜いっぱい痕をつけたよね?」
「あっ……悪い、今日からオフだっていうからつい」
「首元ギリギリの所だったけど、この衣装ちょっと大きいみたいで……ほらっ動くと見えちゃうよ」
「わっ、ごめん!」
「くすっ、大丈夫。きっと洋兄さんにもついてるだろうし」
「えっ!」
幼馴染の洋のそういうことを想像すると、今でも少し胸がドキドキしてしまう。
「ふふっ、顔赤くなったけど?」
「えっ! そんなことないぞ」
「ははっ、動揺するところが怪しいな~」
「大人を揶揄うなぁー‼」
涼は月影寺の離れへの道をよく覚えているようで、茂みをかき分けてぐんぐんと中に入って行ってしまう。おいおい……不法侵入にならないか心配だぞ。
「おい涼、そっちは道じゃないよ」
「サンタクロースだから、いいんだよ」
「でも、これじゃ覗き見しちゃいそうだ」
「しっ」
洋の暮らす離れは、庭に面して大きな窓がある。誰にも覗かれないことを前提に建てられているから、きっと気を許しているだろうと思っていたが……案の定。
すぐに……屋内の洋たちの姿を見つけた。
洋はベッドの上でパジャマ姿のまま丈さんにギュッと抱きしめられていた。うわっ!朝の挨拶の最中だろうか。でも不思議といやらしさとかそういうのは感じなかった。
なんというか……洋が蕩けそうに幸せそうな微笑みを浮かべているのに、ほっとした。
洋……お前……やっと……そんなに、いい笑顔が出来るようになったな。ここでの暮らしが本当にあっているんだな。
洋が幸せそうだと、本当に嬉しいもんだな。つい親のような気分になってしまった。
「安志さん~いつまで覗き見してんの? さぁ玄関に行こうよ」
まったく……俺が涼に注意される始末じゃないかと、思わず苦笑してしまった。
****
「えっ、本当に……サンタがやってきた!」
抱きしめていた洋の素っ頓狂な声な声に、苦笑してしまった。
「おいおい、まだ寝惚けているのか」
「ちっ違うって!」
「確かに今日はクリスマスだが、寺にサンタはいないと思うが」
「そ、それが、いるんだよ!」
洋の視線を辿ってベッドルームに面した大きな窓の外に目をやると、赤い帽子に赤い服がさっと引っ込んだのが見えた。
ん? あれは……サンタというには華奢な男の子のようだが。
「あれは涼だ! 涼が着いたんだ!」
洋がパジャマ姿のまま、玄関に飛んで行く。
「涼!」
「洋兄さんっメリークリスマス! びっくりした?」
ドアを開くなり、涼くんが洋に飛びついた。
おいおい、なんでまたサンタクロースの衣装で来たんだか。その背後には安志くんが申し訳なさそうに立っていた。
「あのぉ……丈さん、す、すみません。朝早くに……こんな所から登場して」
「いやそれはいいが……涼くん、おはよう」
「丈さん、おはようございます。このカッコを洋兄さんに真っ先に見せたくて」
「涼サンタ、すごくかわいい! なっ丈もそう思うだろう?」
洋が嬉しそうに同意を求めてくる。
「あぁ、似合っているな。洋もやったらどうだ?」
「えっ俺も?」
「見てみたいが」
涼くんのサンタ姿が思いの外可愛かったので、つい口に出してしまった。
「やっぱり、そう来ますよね。実は僕、もう一着持っています」
「おい涼、荷物がパンパンだと思ったら、そんなものまで入れて来たのか」
「うん! だってきっと丈さんも見たがると思って」
いたずらっ子の顔でウィンクする様子に、なるほどこれは帰国子女ならではのノリなのかと納得した。それにしても棚から牡丹餅だ。洋のサンタクロース姿なんて、かなりレアだからな。
「丈も見たい?」
「あぁ見たい。とにかくそろそろ……そのパジャマを早く着替えてくれ」
さっきから洋のパジャマの首元に、私がたっぷり昨夜愛した名残りのキスマークが見え隠れしているのが、気になっている。クリスマス気分が高まってつい沢山残してしまったから。
「うん、そうするよ。涼、サンタの衣裳貸して」
「じゃあ、涼くんと安志くんは中に入って待っていてくれ。一緒に母屋に行こう」
「いいんですか。お邪魔します」
洋は涼くんと接すると、途端にぐっと幼くなってしまうな。
洋にしては珍しく陽気な笑顔で本当に楽しそうだ。いつもは憂いを帯びた表情が多いのに、今日は目がキラキラ輝いているし……もしかしたらまた本来の洋の性格が見え隠れしているのか。
まるで寂しく通り過ぎてしまった青春をもう一度味わうように、洋は涼くんと過ごす時間を味わっている。
そんな洋の姿を見るのが、私も好きだ。
「ねぇ安志さん、せっかくだからサンタの衣装のまま洋兄さんの所に寄ってもいい?」
「いいけど、洋を驚かすのか」
「サンタクロースがイブの朝にやってくるなんてfantasticで、きっと喜んでくれるよ」
「うーん、でも……お邪魔じゃないか。まだ朝早いのに」
「まぁ……それはそうかもしれないけど、きっと考えることは同じだからいいよね?」
涼が何を言っているのか、最初分からなかった。
すると涼が自分の首元を指さして、口を尖らせた。
「なんだ? 」
「安志さん、僕に昨夜いっぱい痕をつけたよね?」
「あっ……悪い、今日からオフだっていうからつい」
「首元ギリギリの所だったけど、この衣装ちょっと大きいみたいで……ほらっ動くと見えちゃうよ」
「わっ、ごめん!」
「くすっ、大丈夫。きっと洋兄さんにもついてるだろうし」
「えっ!」
幼馴染の洋のそういうことを想像すると、今でも少し胸がドキドキしてしまう。
「ふふっ、顔赤くなったけど?」
「えっ! そんなことないぞ」
「ははっ、動揺するところが怪しいな~」
「大人を揶揄うなぁー‼」
涼は月影寺の離れへの道をよく覚えているようで、茂みをかき分けてぐんぐんと中に入って行ってしまう。おいおい……不法侵入にならないか心配だぞ。
「おい涼、そっちは道じゃないよ」
「サンタクロースだから、いいんだよ」
「でも、これじゃ覗き見しちゃいそうだ」
「しっ」
洋の暮らす離れは、庭に面して大きな窓がある。誰にも覗かれないことを前提に建てられているから、きっと気を許しているだろうと思っていたが……案の定。
すぐに……屋内の洋たちの姿を見つけた。
洋はベッドの上でパジャマ姿のまま丈さんにギュッと抱きしめられていた。うわっ!朝の挨拶の最中だろうか。でも不思議といやらしさとかそういうのは感じなかった。
なんというか……洋が蕩けそうに幸せそうな微笑みを浮かべているのに、ほっとした。
洋……お前……やっと……そんなに、いい笑顔が出来るようになったな。ここでの暮らしが本当にあっているんだな。
洋が幸せそうだと、本当に嬉しいもんだな。つい親のような気分になってしまった。
「安志さん~いつまで覗き見してんの? さぁ玄関に行こうよ」
まったく……俺が涼に注意される始末じゃないかと、思わず苦笑してしまった。
****
「えっ、本当に……サンタがやってきた!」
抱きしめていた洋の素っ頓狂な声な声に、苦笑してしまった。
「おいおい、まだ寝惚けているのか」
「ちっ違うって!」
「確かに今日はクリスマスだが、寺にサンタはいないと思うが」
「そ、それが、いるんだよ!」
洋の視線を辿ってベッドルームに面した大きな窓の外に目をやると、赤い帽子に赤い服がさっと引っ込んだのが見えた。
ん? あれは……サンタというには華奢な男の子のようだが。
「あれは涼だ! 涼が着いたんだ!」
洋がパジャマ姿のまま、玄関に飛んで行く。
「涼!」
「洋兄さんっメリークリスマス! びっくりした?」
ドアを開くなり、涼くんが洋に飛びついた。
おいおい、なんでまたサンタクロースの衣装で来たんだか。その背後には安志くんが申し訳なさそうに立っていた。
「あのぉ……丈さん、す、すみません。朝早くに……こんな所から登場して」
「いやそれはいいが……涼くん、おはよう」
「丈さん、おはようございます。このカッコを洋兄さんに真っ先に見せたくて」
「涼サンタ、すごくかわいい! なっ丈もそう思うだろう?」
洋が嬉しそうに同意を求めてくる。
「あぁ、似合っているな。洋もやったらどうだ?」
「えっ俺も?」
「見てみたいが」
涼くんのサンタ姿が思いの外可愛かったので、つい口に出してしまった。
「やっぱり、そう来ますよね。実は僕、もう一着持っています」
「おい涼、荷物がパンパンだと思ったら、そんなものまで入れて来たのか」
「うん! だってきっと丈さんも見たがると思って」
いたずらっ子の顔でウィンクする様子に、なるほどこれは帰国子女ならではのノリなのかと納得した。それにしても棚から牡丹餅だ。洋のサンタクロース姿なんて、かなりレアだからな。
「丈も見たい?」
「あぁ見たい。とにかくそろそろ……そのパジャマを早く着替えてくれ」
さっきから洋のパジャマの首元に、私がたっぷり昨夜愛した名残りのキスマークが見え隠れしているのが、気になっている。クリスマス気分が高まってつい沢山残してしまったから。
「うん、そうするよ。涼、サンタの衣裳貸して」
「じゃあ、涼くんと安志くんは中に入って待っていてくれ。一緒に母屋に行こう」
「いいんですか。お邪魔します」
洋は涼くんと接すると、途端にぐっと幼くなってしまうな。
洋にしては珍しく陽気な笑顔で本当に楽しそうだ。いつもは憂いを帯びた表情が多いのに、今日は目がキラキラ輝いているし……もしかしたらまた本来の洋の性格が見え隠れしているのか。
まるで寂しく通り過ぎてしまった青春をもう一度味わうように、洋は涼くんと過ごす時間を味わっている。
そんな洋の姿を見るのが、私も好きだ。
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