重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
999 / 1,657
12章

番外編SSのおまけ 安志×涼 「そして二人は…」3

しおりを挟む

「涼とペア? 」
「うん、実は撮影でスポンサーからプレゼントしてもらって……安志さんにも同じものを購入したんだ」
「これ、高かったろう」
「あの……気に入らない? 」

 おそるおそる聞くと、安志さんの胸にガバッとハグされた。

「涼ありがとうな!滅茶苦茶嬉しいよ。俺たち、ペアとかそういうの初めてだな」
「良かった。洋兄さんと丈さんのペアの月輪や指輪を見ていたら羨ましくなって……僕も何か同じもの持ちたくなったんだ」

 早速安志さんが腕にはめると、サイズもぴったりのようで安心した。

 僕も腕にはめた。

 黒い文字盤に黒いバンド、文字盤の繊細なデザインとリューズガードとの大胆な組み合わせが素敵だったんだ。機能は最小限だけど、3時の位置にあるリューズガードがアクセントとなっていてオシャレだ。裏蓋にはブランドのマークが描かれ、僕のようなカジュアルスタイルにも、安志さんのスーツにもよく似合うと、僕自身も惚れ込んだものだった。

 今、僕たちの腕には同じものが二つ並んでいる。
 ずっと憧れていた嬉しい光景だ。

「涼、メリークリスマス。これからも一緒に時を刻もうな」

 安志さんから嬉しい言葉をもらった。
 あったかくて優しい言葉が降って来た。

「ペアの時計っていいもんだな」

 安志さんに肩をぎゅっと抱かれた。

 その手に僕の手を重ねたら……時計と時計が、コツンっとキスをした。

「約束のキスみたいだな。これって」
「僕もそう思った!」

 心暖まるひと時だ。
 これでまた朝まで撮影を頑張れるよ。
 心も躰も満ちた。満タンにチャージされた気分だ。

 会えなくて不安だった心のざわつきも吹き飛んで、今は躰のなかにエネルギーが満ちている。

 僕たちは、この先もまだいろいろあるだろう。その度に素直な気持ち出し合って二人で進んでいけたらいい。

 僕はもう……この人以外には考えられないのだから。

 夢はいつか洋兄さん達のように、二人で過ごせるようになりたい。その夢に近づくためにも、今はモデルとしての仕事を頑張る。

「安志さん、待っていて!なるべく早く安志さんのいるところに行くから」

 そんな想いで安志さんから降り注ぐ熱いキスを受け止めていると、安志さんが頭を撫でてくれた。

「涼……急がなくていい。俺は今の涼が好きなんだから、無理して早く大人になろうなんて思わなくていい。俺も涼の方まで歩み寄るから。そうだな、中間地点で会おう」
 
 その言葉に、ほろりとした。
 背伸びしたり走ったりばかりは、本当は本当は……少し大変だったんだ。

「うん……うっ…」
「涼、もう泣くなよ。目が腫れたらまずいだろう」
「でも嬉しくて」

 そして二人は、いつも歩み寄る。

 共に進むために、歩み寄る。



                              了





****

安志と涼のクリスマスの番外編を、読んでくださってありがとうございます。
明日からまた通常運転になりますね!
しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

帰宅

pAp1Ko
BL
遊んでばかりいた養子の長男と実子の双子の次男たち。 双子を庇い、拐われた長男のその後のおはなし。 書きたいところだけ書いた。作者が読みたいだけです。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

処理中です...