重なる月

志生帆 海

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12章

番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」4

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 バラエティ番組も終わり、気が付くともう23時過ぎだった。もうこんな時間か。ひとりで随分長時間、テレビを観ていたんだな。

 気が付いたら、まだスーツのままで、ズボンが皺くちゃだ。

 風呂入るのも面倒だし、もう全部明日にするか。

 でもあと一缶だけ……こんな夜は、寝酒がないとな~

 ところが、のろのろと立ち上がり冷蔵庫を覗くと、空っぽだった。

「げっ、さっきのビールでお終いだったのか」

 ひもじいもんだ。涼と会えるのなら今頃ご馳走にワインにと……たんまり買い込んでいただろうに。

 今日はもっと飲みたい。飲んで酔っ払って、眠ってしまいたい。

 恋人がいるのに酷く寂しいクリスマスイブだからな。

 飲みたい気分が収まらないので、結局コートをひっかけてコンビニへ買いに行くことにした。

「うっ、寒っ……っ」

 木枯らしが吹く中、マフラーに顔を隠すようにして歩いた。歩きながらポケットに手を突っ込んでから気が付いた。

 あ……スマホ家に忘れたな。まぁいいか、どうせ涼は撮影中で連絡取れないだろうし。はぁ~全く駄目だな。涼がいない俺は腑抜け過ぎる。こんなだらしない姿は、絶対に涼には見せられないよな。

 再びコンビニの白いレジ袋をカサカサと鳴らしながら歩くと、さっきのバス停前を再び通り過ぎた。

 俺だけのものではない涼が微笑みかけている気がして、胸がズキっとした。

 いや……それでも、涼は涼だ。俺はなんだか涼が恋しくて、思わずバス停のベンチに腰掛けてしまった。

 改めて広告をじっと見つめると、乳白色の光に優しく浮かび上がる涼と目があったような気がして、恥ずかしくなった。

 この綺麗で可愛い人は、俺の恋人なんだ!

 無性に、世界中に向かって……大声で叫びたくなってしまった。

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