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12章
迫る危機 12
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拓人に隣室へ駆け込むのを止められたので、揉めてしまった。
確かに拓人のお父さんはどこか狂気めいていて、まだ子供のオレたちが太刀打ちできる相手ではない。無理やり部屋に突入しても、父さんを人質に取られてしまったら、元も子もない。
だが……オレが犠牲になってでも父さんに危害が及ぶのを阻止したいのが本音だった。
そんな気持ちが拓人にも分かるのか、オレの肩を押さえ「薙、とにかく外に助けを呼ぼう! その方が賢明だ」と諭してきた。
助けと聞いて思い当たるのは、警察ではなくて流さんだ。父さんは流さんを待っているような気がした。
「拓人、オレのスマホはどこだ?」
「あっ……父さんが取り上げてしまったけど……もしかして……」
拓人が慌ててドアの付近に脱ぎ捨てられた男物コートのポケットに手を突っ込むと、オレのスマホが出てきた。
「早く、こっちに!」
主電源はとっくに切られていたので、すぐに立ち上げる。そして俺はすぐに助けを求めるコールをした。
流さんっ、あなたしかいない。父さんを救えるのは!
すぐに流さんは出てくれた。まるでオレからの電話を察知していたかのように。
「流さんっ!! 」
「薙か! よかった。やっと通じた。今どこにいる? 翠は無事か!! 」
「うっ……」
そう聞かれて、一気に涙が溢れた。
そうか……オレ……本当はすごく怖かったんだ。
「流さん助けて!! 今どこなの? お願いだ、早く来て。父さんが大変なことに」
「大丈夫だ。今もう近くまで来ている。マンションの玄関の鍵を見つからないように開けておけ!」
「わ……分かった」
「薙、頑張れ! 必ず助けにいくからな! 」
流さんはいつだってヒーローだ。
お願いだ! 早くオレの父さんを助けて!
「流さん……早く来て! 父さんがアイツに捕らわれて……」
本当にオレは今まで、ひとりよがりに生きて来て……恥ずかしい。
父さんがいてくれたから、今があるのに。
俺たちはそっと玄関の鍵を開け部屋で固唾を飲んで、流さんの到着を待った。
早く! 早く来て!
早く……父さんを助けて。
****
達哉さんが真剣な面持ちで、俺に言った言葉は、当然とも意外とも取れる言葉だった。
「流くん、警察を呼ぼう。もう今回は、うやむやには出来ない」
その時さっきから何度もかけていた通じなかった薙から連絡があった。
よしっ! これで翠の状態が分かるはずだ。達哉さんの話を一旦制した。
「もしもし、薙かっ」
電話越しの薙の声、不安に震える声、助けを求める声に胸が詰まる。そして翠の状況を伺い知ることが出来……怒りがいよいよ沸点に達した。
やはりそうか!
克哉、お前って奴は……薙を拉致し翠を呼び出して、今まさに危害を加えようとしているのか!
そうはさせない。そんなことは出来ない!
翠の蕾は、俺にしか開かない。
翠の躰は、俺しか受け入れられない!
「流くん、やはり克哉が翠を……くそっ! あいつはいよいよ狂ってる!も う駄目だ。今度こそちゃんと公の裁きを受けさせる。だから警察と一緒に突入しよう」
達哉さんの目は本気だった。だが……
「俺は警察の到着まで待っていられない! この手で殴ってやる!」
「流くん、落ち着け!」
「落ち着いてなんかいられるかよっ! 翠が危険な目にまた遭ってるのに!」
達哉さんの静止を振り切り、俺は走った。
殴り殺してやりたいほど、憎かった。
克哉のことが!!
洋くんに教えてもらったマンションに到着すると、意外な人物が待機していた。
確かに拓人のお父さんはどこか狂気めいていて、まだ子供のオレたちが太刀打ちできる相手ではない。無理やり部屋に突入しても、父さんを人質に取られてしまったら、元も子もない。
だが……オレが犠牲になってでも父さんに危害が及ぶのを阻止したいのが本音だった。
そんな気持ちが拓人にも分かるのか、オレの肩を押さえ「薙、とにかく外に助けを呼ぼう! その方が賢明だ」と諭してきた。
助けと聞いて思い当たるのは、警察ではなくて流さんだ。父さんは流さんを待っているような気がした。
「拓人、オレのスマホはどこだ?」
「あっ……父さんが取り上げてしまったけど……もしかして……」
拓人が慌ててドアの付近に脱ぎ捨てられた男物コートのポケットに手を突っ込むと、オレのスマホが出てきた。
「早く、こっちに!」
主電源はとっくに切られていたので、すぐに立ち上げる。そして俺はすぐに助けを求めるコールをした。
流さんっ、あなたしかいない。父さんを救えるのは!
すぐに流さんは出てくれた。まるでオレからの電話を察知していたかのように。
「流さんっ!! 」
「薙か! よかった。やっと通じた。今どこにいる? 翠は無事か!! 」
「うっ……」
そう聞かれて、一気に涙が溢れた。
そうか……オレ……本当はすごく怖かったんだ。
「流さん助けて!! 今どこなの? お願いだ、早く来て。父さんが大変なことに」
「大丈夫だ。今もう近くまで来ている。マンションの玄関の鍵を見つからないように開けておけ!」
「わ……分かった」
「薙、頑張れ! 必ず助けにいくからな! 」
流さんはいつだってヒーローだ。
お願いだ! 早くオレの父さんを助けて!
「流さん……早く来て! 父さんがアイツに捕らわれて……」
本当にオレは今まで、ひとりよがりに生きて来て……恥ずかしい。
父さんがいてくれたから、今があるのに。
俺たちはそっと玄関の鍵を開け部屋で固唾を飲んで、流さんの到着を待った。
早く! 早く来て!
早く……父さんを助けて。
****
達哉さんが真剣な面持ちで、俺に言った言葉は、当然とも意外とも取れる言葉だった。
「流くん、警察を呼ぼう。もう今回は、うやむやには出来ない」
その時さっきから何度もかけていた通じなかった薙から連絡があった。
よしっ! これで翠の状態が分かるはずだ。達哉さんの話を一旦制した。
「もしもし、薙かっ」
電話越しの薙の声、不安に震える声、助けを求める声に胸が詰まる。そして翠の状況を伺い知ることが出来……怒りがいよいよ沸点に達した。
やはりそうか!
克哉、お前って奴は……薙を拉致し翠を呼び出して、今まさに危害を加えようとしているのか!
そうはさせない。そんなことは出来ない!
翠の蕾は、俺にしか開かない。
翠の躰は、俺しか受け入れられない!
「流くん、やはり克哉が翠を……くそっ! あいつはいよいよ狂ってる!も う駄目だ。今度こそちゃんと公の裁きを受けさせる。だから警察と一緒に突入しよう」
達哉さんの目は本気だった。だが……
「俺は警察の到着まで待っていられない! この手で殴ってやる!」
「流くん、落ち着け!」
「落ち着いてなんかいられるかよっ! 翠が危険な目にまた遭ってるのに!」
達哉さんの静止を振り切り、俺は走った。
殴り殺してやりたいほど、憎かった。
克哉のことが!!
洋くんに教えてもらったマンションに到着すると、意外な人物が待機していた。
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