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12章
迫る危機 10
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※本日……暴力的描写が苦手な方は、Uターンもしくは飛ばしてください!
****
閉じ込められた密室には、パイプベッドが置かれていた。
「あぁ……最高のシチュエーションだ。翠さんの袈裟姿をずっと間近で見たかった。あの高校時代の巫女姿であなたに心を奪われてから、長い間恋慕って来たんですよ。どうしてもっと早く……最後まで俺のものにしなかったのかと、ずっと悔やんでいましたよ。さぁあの日の続きをしましょうよ。あの日は邪魔が入ったから」
克哉の眼は狂気に満ちていた。
もう……まともな神経が残っていない。母親を亡くしたばかりの血の通わない息子を言い成りにさせ、血の通った子供がいる身で、こんな暴挙に出るなんて。
僕が嫌がれば嫌がるほど……それは克哉を喜ばせるだけだ。
ここまで克哉の悪を育ててしまったのは、僕にも原因があったのかもしれない。最初からもっとキッパリと断り、抵抗していたら道は違ったのか。
あの頃の僕は……弱かった。弱いくせに流を守りたくてアンバランスで中途半端なことばかりしてきたせいだ。こんなことになったのは……
「翠さん何をぼんやりしているんですか。さぁ脱ぎましょう……あなたは歳をとっても劣化しない。ますます色香が滲みでていますよ。壮絶に美しい」
すでに乱された胸元を、さらに強引に剥かれる。
隣には薙がいる。だから決して……声は出すまい。
僕はどこか達観した気持ちになっていた。
この男につける薬はもはやないのだ。『馬鹿に付ける薬はない』とはよく言ったものだ。欲望を貫くことしか考えてない、考えが足りなく愚かな人間だ。どうやっても、もはや救いようがない。僧侶である僕が持つべき感情ではないのは重々承知だが……
「君は……そんなに僕の躰を征服したいのか」
「あぁ夢だった」
「そんな夢しか持てなかったのか。僕は君に何度も再生のチャンスを作ったと思っていたのに……」
「ハッ! 相変わらず偉そうに。俺は欲しいものは欲しい! いつだって手に入れてきた。俺が望めば何でも貰えたんだよ! なのに翠さんだけは、どうしても手に入らない。だから力尽くで奪うだけさ」
勢いに任せて肩まで降ろされていた袈裟を一気に脱がされ……その中の法衣を乱されていく。
克哉も……寺の息子だ。本来ならば脱ぎ気しにくいものを器用に剥いていく。僕が身に着けている最後の一枚まで、容赦なく克哉は奪い取った。
こんな男の前で裸体を晒すなんて……悔しくて……ギリッと奥歯を噛みしめた。
「んっ……なんだ? この玩具みたいなキーホルダー」
克哉が、法衣の袖から零れ落ちた三日月の形のキーホルダーを摘まみ上げた。
それはさっき洋くんからもらったものだ。
そう言えば……何故あれを持っていてくれと彼は必死だったのか。さっきのメールの「電源を入れて」とは?
ようやく一つの考えにぶつかった。あれは何か意味があるものなのかもしれない。もしかしたら……一縷の望みに縋りたくなる。
「翠さんにしては可愛い趣味ですねぇ。こんな物はどうでもいい。あぁ想像通り綺麗な躰だ。黒い法衣と対照的な白い肌……この乳首のピンク色……そしてここだ。俺がつけた印。俺の所有の印は健在だな」
上半身を汗ばんだ手で撫でられた。それから心臓の下に執拗につけられた火傷痕をべろりと舐められ、嫌悪感で吐きそうになった。
「あぁやっと手に入る。翠さんを俺のものにできる」
舌がそのまま臍のあたりまで下りてもう我慢できずに、克哉を押しのけた!
だが……押しのけたつもりだったのに狂気に満ちた相手の力は凄まじかった。その手を逆に奪われ、あっという間に手錠で万歳をするような形でパイプベッドに柱に固定されてしまった。
自分のあられもない姿に……震える。なんだ……これは……いよいよ克哉が常軌を逸していると確信した。
「やめろ! これは犯罪だ! 」
「えぇ犯罪ですねぇ。その位自覚してますよ。俺ね、交通事故で死ぬところだったんですよ。あの時の恐怖忘れられないんです。やり残しはない方がいいじゃないですか。九死に一生を得て浮かんだのが翠さん、あなたですよ。悔いのないように、今日は存分に抱かせてもらいますよ」
「卑怯だ! 一方的な想いに溺れて……僕はそんなこと一つも望んでいない。一方的な想いをぶつけられて、ずっと困っていたのが、どうして分からないのだ!」
「なんとでもっ」
自分が堪えていたものが、はらはらと散っていくのを感じた。
荒涼とした風が通りすぎていく。
虚しさがすり抜けていく。
最後まで諦めないつもりだったが、僕の中の道理が通じる相手ではない。
そんな人間によって汚されてしまう。
流が大切に扱って愛してくれた身体が、こんな卑劣な奴に……
克哉の太った下腹部の肉が僕の腹にあたり、その太った短い指が尻を辿り、後ろへと回る。入口を執拗に撫でられる。
「へへっ~ここ、使ってないみたいですね。よく締まってるぜ。あぁ早く挿れたい」
鼻息も荒い克哉は、欲に眩んだ悪鬼のような恐ろしい形相だった。
「や……やめろっ!」
やがて何かの液を大量に垂らされて、クチュクチュと聞いてはいけない音が静かな部屋に響き出した。
あまりの卑猥さんに耳を塞ぎたくて堪らない! 突然口づけされそうになり必死に顔を反らしたら、顎が砕けるような勢いで固定され、生臭い息を吸い込む羽目になり、涙が滲む。
「うっ……う……」
もう嫌だ……もう駄目だ。
こんな風に無理やり性欲の対象にされることの恐ろしさを、身をもって知ることになった。
突然、洋くんのことを思い出した。
洋くんもこんな目にあったのか。だからあんなに心配してくれて……
「あ……あ……」
唇を克哉の分厚い唇によって塞がれたまま、指が出入りする気持ち悪さにもう耐えられなくて、渾身の力で克哉を押し退けた。
そして、薙に聞かれたくなくてずっと我慢して押し殺していた声を、とうとうあげてしまった。
「流っ! 流っ! 助けてくれ!!!!」
必死に声が枯れるほど、喉が擦り切れるほど叫んでいた。
****
聞こえた……父さんの悲鳴。
今、隣室であの太った男に何をされているのか、想像するのも恐ろしい。
なんてことだ。なんでこんなことに……全部俺のせいだ。
助けにいかないと。オレの父さんを!
なのにオレは後ろ手に縛られ、足も縛られていて……動けない。
父さんのことを、助けに行けない。
オレの父さんが踏みにじられそうになっているのに、なんで何も出来ないんだよ!
「……拓人……お願いだ。これを解いてくれ! 俺の父さんがヤラレてしまう! そんなのあり得ない……嫌だ……」
涙を零しながら、拓人に縋った。
拓人はさっきから俺の正面に蹲まり頭を抱えたままだ。
さっき父さんがこの部屋から連れて行かれる前に放った言葉について、考えているようだった。
……
拓人くん、君は一生かかっても償えない罪を犯す勇気があるのか。僕のこの傷を見て欲しい。大学時代に克哉につけられたものだ。目に見える傷だって、何十年経っても完全に癒えない。こうやって惨いことを思い出させる痕を残す。まして心の尊厳を傷つけられた傷は深いよ。一生薙に恨まれる覚悟があるのか
……
オレの父さんの過去。そこから察せられた苦難の人生。
オレはそんな苦労も知らずに、父さんに冷たくあたってきた。そして今……父さんの危機を救えないでいる。
「拓人……お願いだ。オレ、こんなことされてもお前のこと嫌いになれない。お前はあの男とは違うだろう? お前はオレの親友だろう? この先も一緒に成長していきたいんだ。肩を並べていきたいんだよ!」
こんなことされたのに、どこか恨めない……
拓人を、見切りたくない。どうか……信じさせてくれよ!
「……薙……父さんは、お前を俺の好きなようにしていいって言った」
拓人が決心した面持ちで近づいてきた。
何をされるのか……思わずズリズリと後ろに下がってしまう。
すると拓人が俺をギュッと抱きしめてきた。
「うっ! な、何を……」
「だから俺は……薙を……」
あとがき(不要な方はスルーです)
****
あぁ……一番深いところまで……堕ちました。
鬼畜展開で本当にすいません。
明日までお待ちください!
どうかスター特典で癒されて下さいませ。
****
閉じ込められた密室には、パイプベッドが置かれていた。
「あぁ……最高のシチュエーションだ。翠さんの袈裟姿をずっと間近で見たかった。あの高校時代の巫女姿であなたに心を奪われてから、長い間恋慕って来たんですよ。どうしてもっと早く……最後まで俺のものにしなかったのかと、ずっと悔やんでいましたよ。さぁあの日の続きをしましょうよ。あの日は邪魔が入ったから」
克哉の眼は狂気に満ちていた。
もう……まともな神経が残っていない。母親を亡くしたばかりの血の通わない息子を言い成りにさせ、血の通った子供がいる身で、こんな暴挙に出るなんて。
僕が嫌がれば嫌がるほど……それは克哉を喜ばせるだけだ。
ここまで克哉の悪を育ててしまったのは、僕にも原因があったのかもしれない。最初からもっとキッパリと断り、抵抗していたら道は違ったのか。
あの頃の僕は……弱かった。弱いくせに流を守りたくてアンバランスで中途半端なことばかりしてきたせいだ。こんなことになったのは……
「翠さん何をぼんやりしているんですか。さぁ脱ぎましょう……あなたは歳をとっても劣化しない。ますます色香が滲みでていますよ。壮絶に美しい」
すでに乱された胸元を、さらに強引に剥かれる。
隣には薙がいる。だから決して……声は出すまい。
僕はどこか達観した気持ちになっていた。
この男につける薬はもはやないのだ。『馬鹿に付ける薬はない』とはよく言ったものだ。欲望を貫くことしか考えてない、考えが足りなく愚かな人間だ。どうやっても、もはや救いようがない。僧侶である僕が持つべき感情ではないのは重々承知だが……
「君は……そんなに僕の躰を征服したいのか」
「あぁ夢だった」
「そんな夢しか持てなかったのか。僕は君に何度も再生のチャンスを作ったと思っていたのに……」
「ハッ! 相変わらず偉そうに。俺は欲しいものは欲しい! いつだって手に入れてきた。俺が望めば何でも貰えたんだよ! なのに翠さんだけは、どうしても手に入らない。だから力尽くで奪うだけさ」
勢いに任せて肩まで降ろされていた袈裟を一気に脱がされ……その中の法衣を乱されていく。
克哉も……寺の息子だ。本来ならば脱ぎ気しにくいものを器用に剥いていく。僕が身に着けている最後の一枚まで、容赦なく克哉は奪い取った。
こんな男の前で裸体を晒すなんて……悔しくて……ギリッと奥歯を噛みしめた。
「んっ……なんだ? この玩具みたいなキーホルダー」
克哉が、法衣の袖から零れ落ちた三日月の形のキーホルダーを摘まみ上げた。
それはさっき洋くんからもらったものだ。
そう言えば……何故あれを持っていてくれと彼は必死だったのか。さっきのメールの「電源を入れて」とは?
ようやく一つの考えにぶつかった。あれは何か意味があるものなのかもしれない。もしかしたら……一縷の望みに縋りたくなる。
「翠さんにしては可愛い趣味ですねぇ。こんな物はどうでもいい。あぁ想像通り綺麗な躰だ。黒い法衣と対照的な白い肌……この乳首のピンク色……そしてここだ。俺がつけた印。俺の所有の印は健在だな」
上半身を汗ばんだ手で撫でられた。それから心臓の下に執拗につけられた火傷痕をべろりと舐められ、嫌悪感で吐きそうになった。
「あぁやっと手に入る。翠さんを俺のものにできる」
舌がそのまま臍のあたりまで下りてもう我慢できずに、克哉を押しのけた!
だが……押しのけたつもりだったのに狂気に満ちた相手の力は凄まじかった。その手を逆に奪われ、あっという間に手錠で万歳をするような形でパイプベッドに柱に固定されてしまった。
自分のあられもない姿に……震える。なんだ……これは……いよいよ克哉が常軌を逸していると確信した。
「やめろ! これは犯罪だ! 」
「えぇ犯罪ですねぇ。その位自覚してますよ。俺ね、交通事故で死ぬところだったんですよ。あの時の恐怖忘れられないんです。やり残しはない方がいいじゃないですか。九死に一生を得て浮かんだのが翠さん、あなたですよ。悔いのないように、今日は存分に抱かせてもらいますよ」
「卑怯だ! 一方的な想いに溺れて……僕はそんなこと一つも望んでいない。一方的な想いをぶつけられて、ずっと困っていたのが、どうして分からないのだ!」
「なんとでもっ」
自分が堪えていたものが、はらはらと散っていくのを感じた。
荒涼とした風が通りすぎていく。
虚しさがすり抜けていく。
最後まで諦めないつもりだったが、僕の中の道理が通じる相手ではない。
そんな人間によって汚されてしまう。
流が大切に扱って愛してくれた身体が、こんな卑劣な奴に……
克哉の太った下腹部の肉が僕の腹にあたり、その太った短い指が尻を辿り、後ろへと回る。入口を執拗に撫でられる。
「へへっ~ここ、使ってないみたいですね。よく締まってるぜ。あぁ早く挿れたい」
鼻息も荒い克哉は、欲に眩んだ悪鬼のような恐ろしい形相だった。
「や……やめろっ!」
やがて何かの液を大量に垂らされて、クチュクチュと聞いてはいけない音が静かな部屋に響き出した。
あまりの卑猥さんに耳を塞ぎたくて堪らない! 突然口づけされそうになり必死に顔を反らしたら、顎が砕けるような勢いで固定され、生臭い息を吸い込む羽目になり、涙が滲む。
「うっ……う……」
もう嫌だ……もう駄目だ。
こんな風に無理やり性欲の対象にされることの恐ろしさを、身をもって知ることになった。
突然、洋くんのことを思い出した。
洋くんもこんな目にあったのか。だからあんなに心配してくれて……
「あ……あ……」
唇を克哉の分厚い唇によって塞がれたまま、指が出入りする気持ち悪さにもう耐えられなくて、渾身の力で克哉を押し退けた。
そして、薙に聞かれたくなくてずっと我慢して押し殺していた声を、とうとうあげてしまった。
「流っ! 流っ! 助けてくれ!!!!」
必死に声が枯れるほど、喉が擦り切れるほど叫んでいた。
****
聞こえた……父さんの悲鳴。
今、隣室であの太った男に何をされているのか、想像するのも恐ろしい。
なんてことだ。なんでこんなことに……全部俺のせいだ。
助けにいかないと。オレの父さんを!
なのにオレは後ろ手に縛られ、足も縛られていて……動けない。
父さんのことを、助けに行けない。
オレの父さんが踏みにじられそうになっているのに、なんで何も出来ないんだよ!
「……拓人……お願いだ。これを解いてくれ! 俺の父さんがヤラレてしまう! そんなのあり得ない……嫌だ……」
涙を零しながら、拓人に縋った。
拓人はさっきから俺の正面に蹲まり頭を抱えたままだ。
さっき父さんがこの部屋から連れて行かれる前に放った言葉について、考えているようだった。
……
拓人くん、君は一生かかっても償えない罪を犯す勇気があるのか。僕のこの傷を見て欲しい。大学時代に克哉につけられたものだ。目に見える傷だって、何十年経っても完全に癒えない。こうやって惨いことを思い出させる痕を残す。まして心の尊厳を傷つけられた傷は深いよ。一生薙に恨まれる覚悟があるのか
……
オレの父さんの過去。そこから察せられた苦難の人生。
オレはそんな苦労も知らずに、父さんに冷たくあたってきた。そして今……父さんの危機を救えないでいる。
「拓人……お願いだ。オレ、こんなことされてもお前のこと嫌いになれない。お前はあの男とは違うだろう? お前はオレの親友だろう? この先も一緒に成長していきたいんだ。肩を並べていきたいんだよ!」
こんなことされたのに、どこか恨めない……
拓人を、見切りたくない。どうか……信じさせてくれよ!
「……薙……父さんは、お前を俺の好きなようにしていいって言った」
拓人が決心した面持ちで近づいてきた。
何をされるのか……思わずズリズリと後ろに下がってしまう。
すると拓人が俺をギュッと抱きしめてきた。
「うっ! な、何を……」
「だから俺は……薙を……」
あとがき(不要な方はスルーです)
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あぁ……一番深いところまで……堕ちました。
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