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12章
迫る危機 7
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拓人の父親が、父さんを迎えに行ってしまった。
こんなことが現実に起こるなんて、恐ろしくてガクガクと膝が震えてしまう。一歩……また一歩とタクトが近づいてくる。
「拓人……なんで? ……信じていたのに」
「薙、お前が悪いんだ。何度も何度も幸せを見せつけるから」
「違う! そんなんじゃない! 今日だってお前だからついて来たんだ。拓人が何か良くないことに巻き込まれているような気がして……心配で、悪い方向にいきそうならオレが阻止したかった」
拓人は意外そうな表情を浮かべた。
「オレをどうするつもりだ? 父さんまで呼び出して」
「薙は甘いな……阻止だなんて。薙を壊すのは俺で、父さんが壊すのはお前の父さんだ」
その言葉に思考が停止した。
壊すって、一体どういう意味なのか。
「どうして……君のお父さんが、オレの父さんを狙う? それが、分からない」
「おめでたいな。お前は何も知らないんだな。俺たちが生まれる前からの因縁を。俺の父さんはなぁ……ずっとお前の父さんが好きだったんだ」
「えっ」
どういうことが理解出来なくて、ポカンとしてしまった。
「いじめるほど好きって言葉を聞いたことあるだろう。そのいじめから逃げ出して結婚したのが、お前の父さんだ。お前はその逃避から生まれたんだ」
「……そんなの、聞いていないし、知らない! 父さんに何をするつもりだ!」
「俺は恨んでいたよ。薙の父さんを、ずっと……俺の母さんが死んだのもお前の父さんのせいだ。俺の両親はいつも喧嘩してたよ。スイさんのことで!」
拓人が俺を床に押し倒し、馬乗りになってくる。
「そんなの知らない! 父さんが望んだことじゃないだろう! 一方的な恨みだ!」
「さぁ……それはどうかな。それよりも本当に来てくれるのかな」
「父さんがは何も悪くない。やめろ! 父さんに危害を加えるのだけは」
オレは父さんを、守りたくなっていた。あんなに疎遠にしていた父さんなのに、拓人の話に出てくる父さんは、酷く憐れじゃないか。男なのに男に一方的に思われ、長い間……嬲《なぶ》られていたなんて。
「なぁ俺は父さんと血が繋がっていないのに、なんだか最近よく似て来たみたいだよ。薙を苛めたくなってきた」
拓人の手がオレの着ていたセーターへと伸びてくる。
シャツごと一気に捲り上げられてしまい、羞恥に震えるしかなかった。
オレの胸に拓人が顔を近づけて、舌を出した。
「ひっ……拓人っやめろ! 目を覚ませ! お前はこんなことする奴じゃない! お願いだ‼ 」
大声で叫んだ。
****
早く……! 早く電源が入ってくれと、焦る気持ちで一杯だった。やがて画面に洋くんと流からの着信履歴がずらりと並んでいるのが見え、更に洋くんからメールも入っているのを確認出来た。
……
翠さんどこへ? 心配です。
翠さん、電源を入れてください。
……
とにかく早く僕の居場所を知らせないと。
震える手で流へ電話をかけた。
早く出てくれ。
流……お願いだ。
やがて流と繋がったので、僕は急いでレジから背を向けスマホを握りなおした。
「もしもし! 翠かっ! 」
「りゅっ……」
ところが流が応答した瞬間、戻ってきた克哉にスマホを取り上げられてしまった。
「あっ克哉! 何をするんだ!」
すぐさま克哉はスマホの通話ボタンを押して、終了させてしまった。
「ちょっと目を離したら、あなたって人は。勝手なことをされると困るんですよね。流がここに来ると面倒なことになるでしょう」
更にブチっと電源ごと切られ、スマホは克哉の胸ポケットに収められてしまった。
「さぁ早く行かないと。薙くんが待ってますよ」
「……薙は無事なんだろうな」
「はははっ息子に見てもらってますよ。しかし奇遇な縁ですよね。俺の息子とあなたの息子が同級生で親友だったとは……笑える。薙くんは若い頃の翠さんにそっくりでですね。かなりソソラレましたよ。でも俺はやっぱり本物が欲しいんですよ。翠さんは息子のためなら絶対に一人で来ると踏んでいたからいい出会いでした。あなたは律儀で義理堅いですからね」
逃げられないように、腕を掴まれてしまった。
こんな都会の雑踏にお盆でもないのに袈裟姿の僕は、さぞかし滑稽な姿に映るだろう。月影寺の名誉にかけて、大事にはしたくない。こんな場所で……だから抵抗せずについて行くしかなかった。
「さぁここですよ。あなたを抱く会場は」
「……」
連れて来られたのは、待ち合わせをした喫茶店からほど近いマンションの一室だった。
この部屋に一歩でも入ったら、外の世界と遮断されてしまう。助けを求めることも逃げることも出来なくなる。
どうしたらいい? 何か術はないのか。せめて僕の居場所だけでも知らせたい。もう間に合わないだろう。それでも助けを求めたかった。このまま言いなりになりたくない。
克哉は口笛を吹きながら鍵で玄関を開けて、僕の背中をドンっと押した。中は薄暗く長い廊下に扉が並んでいた。
「さぁ目立つから早く入ってくださいよ」
その一室から男の子同士の争う声が聞こえて、はっとした。
この声は……薙だ!
「あーあ、あいつ本当にやっちまったのか。くくくっ」
「おいっ止めてくれ! お前の目的は僕だろう。僕が来たのだから薙は解放してくれっ……」
顎をぐいっと掴まれ、上を向かせられる。
「翠さん……あんたは甘いよな。そんなんだから長年に渡っていいようにされるんですよ。俺なんかに」
酷く冷めた目つきだった。
克哉は……狂ってる。
なかば強引に引きずられるように、廊下を歩かされた。
「さぁ……かわいい息子たちに挨拶しましょうよ」
「痛っ」
一つの部屋のドアを克哉が蹴とばすように開け、ドンっと押し込まれた。衝撃でそのまま床に倒れてしまい、衝撃でフローリングが頬に当たり、ひやりとした感触に震えた。
「薙くん、お父さんが迎えに来てくれたよ」
「とっ父さん! 拓人どけっ! 離せっ!」
すぐに悲鳴のような薙の声が降ってきて、慌てて顔をあげると……見たくもない光景だった。僕の息子が、同級生の男の子に押し倒されているなんて。
僕が買ってあげたセーターを捲られ、まだ少年の薄い胸が丸見えになっていた。嬲られてしまったのか、胸元が少し……濡れていた。
な、なんてことを……こんな光景……直視できないよ。
「どけっ拓人! お前はこんなことする奴じゃないだろう!」
薙は後ろ手に縛られていて、抵抗できない状態だったが必死に言葉で抵抗を続けていた。
酷い、これは誘拐だ! こんなのあり得ない!
「やめろ……やめてくれ! 薙には手を出さないでくれ! 約束したじゃないか」
「くくくっ。おい拓人、お前まだヤッてなかったのか。好きにしろといったじゃないか。全く初心だな。犯し方が分からないのか」
「うっ……父さん」
「まぁいいさ、真面目なお前にしては上出来だ。今から見本を見せてやるからな」
「何をするつもりだ。よせっ」
さっきの言葉を思い出して、ぞっとした。
克哉は、僕を薙の前で犯すと言っていた。
父親が息子の前で犯されるだって……そんなの狂ってる。
あとがき(不要な方はスルーで)
****
鬼畜展開で申し訳ありません‼
もう少し!なので、頑張ってお付き合いください。
私も頑張って書いています……(>_<)
こんなことが現実に起こるなんて、恐ろしくてガクガクと膝が震えてしまう。一歩……また一歩とタクトが近づいてくる。
「拓人……なんで? ……信じていたのに」
「薙、お前が悪いんだ。何度も何度も幸せを見せつけるから」
「違う! そんなんじゃない! 今日だってお前だからついて来たんだ。拓人が何か良くないことに巻き込まれているような気がして……心配で、悪い方向にいきそうならオレが阻止したかった」
拓人は意外そうな表情を浮かべた。
「オレをどうするつもりだ? 父さんまで呼び出して」
「薙は甘いな……阻止だなんて。薙を壊すのは俺で、父さんが壊すのはお前の父さんだ」
その言葉に思考が停止した。
壊すって、一体どういう意味なのか。
「どうして……君のお父さんが、オレの父さんを狙う? それが、分からない」
「おめでたいな。お前は何も知らないんだな。俺たちが生まれる前からの因縁を。俺の父さんはなぁ……ずっとお前の父さんが好きだったんだ」
「えっ」
どういうことが理解出来なくて、ポカンとしてしまった。
「いじめるほど好きって言葉を聞いたことあるだろう。そのいじめから逃げ出して結婚したのが、お前の父さんだ。お前はその逃避から生まれたんだ」
「……そんなの、聞いていないし、知らない! 父さんに何をするつもりだ!」
「俺は恨んでいたよ。薙の父さんを、ずっと……俺の母さんが死んだのもお前の父さんのせいだ。俺の両親はいつも喧嘩してたよ。スイさんのことで!」
拓人が俺を床に押し倒し、馬乗りになってくる。
「そんなの知らない! 父さんが望んだことじゃないだろう! 一方的な恨みだ!」
「さぁ……それはどうかな。それよりも本当に来てくれるのかな」
「父さんがは何も悪くない。やめろ! 父さんに危害を加えるのだけは」
オレは父さんを、守りたくなっていた。あんなに疎遠にしていた父さんなのに、拓人の話に出てくる父さんは、酷く憐れじゃないか。男なのに男に一方的に思われ、長い間……嬲《なぶ》られていたなんて。
「なぁ俺は父さんと血が繋がっていないのに、なんだか最近よく似て来たみたいだよ。薙を苛めたくなってきた」
拓人の手がオレの着ていたセーターへと伸びてくる。
シャツごと一気に捲り上げられてしまい、羞恥に震えるしかなかった。
オレの胸に拓人が顔を近づけて、舌を出した。
「ひっ……拓人っやめろ! 目を覚ませ! お前はこんなことする奴じゃない! お願いだ‼ 」
大声で叫んだ。
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早く……! 早く電源が入ってくれと、焦る気持ちで一杯だった。やがて画面に洋くんと流からの着信履歴がずらりと並んでいるのが見え、更に洋くんからメールも入っているのを確認出来た。
……
翠さんどこへ? 心配です。
翠さん、電源を入れてください。
……
とにかく早く僕の居場所を知らせないと。
震える手で流へ電話をかけた。
早く出てくれ。
流……お願いだ。
やがて流と繋がったので、僕は急いでレジから背を向けスマホを握りなおした。
「もしもし! 翠かっ! 」
「りゅっ……」
ところが流が応答した瞬間、戻ってきた克哉にスマホを取り上げられてしまった。
「あっ克哉! 何をするんだ!」
すぐさま克哉はスマホの通話ボタンを押して、終了させてしまった。
「ちょっと目を離したら、あなたって人は。勝手なことをされると困るんですよね。流がここに来ると面倒なことになるでしょう」
更にブチっと電源ごと切られ、スマホは克哉の胸ポケットに収められてしまった。
「さぁ早く行かないと。薙くんが待ってますよ」
「……薙は無事なんだろうな」
「はははっ息子に見てもらってますよ。しかし奇遇な縁ですよね。俺の息子とあなたの息子が同級生で親友だったとは……笑える。薙くんは若い頃の翠さんにそっくりでですね。かなりソソラレましたよ。でも俺はやっぱり本物が欲しいんですよ。翠さんは息子のためなら絶対に一人で来ると踏んでいたからいい出会いでした。あなたは律儀で義理堅いですからね」
逃げられないように、腕を掴まれてしまった。
こんな都会の雑踏にお盆でもないのに袈裟姿の僕は、さぞかし滑稽な姿に映るだろう。月影寺の名誉にかけて、大事にはしたくない。こんな場所で……だから抵抗せずについて行くしかなかった。
「さぁここですよ。あなたを抱く会場は」
「……」
連れて来られたのは、待ち合わせをした喫茶店からほど近いマンションの一室だった。
この部屋に一歩でも入ったら、外の世界と遮断されてしまう。助けを求めることも逃げることも出来なくなる。
どうしたらいい? 何か術はないのか。せめて僕の居場所だけでも知らせたい。もう間に合わないだろう。それでも助けを求めたかった。このまま言いなりになりたくない。
克哉は口笛を吹きながら鍵で玄関を開けて、僕の背中をドンっと押した。中は薄暗く長い廊下に扉が並んでいた。
「さぁ目立つから早く入ってくださいよ」
その一室から男の子同士の争う声が聞こえて、はっとした。
この声は……薙だ!
「あーあ、あいつ本当にやっちまったのか。くくくっ」
「おいっ止めてくれ! お前の目的は僕だろう。僕が来たのだから薙は解放してくれっ……」
顎をぐいっと掴まれ、上を向かせられる。
「翠さん……あんたは甘いよな。そんなんだから長年に渡っていいようにされるんですよ。俺なんかに」
酷く冷めた目つきだった。
克哉は……狂ってる。
なかば強引に引きずられるように、廊下を歩かされた。
「さぁ……かわいい息子たちに挨拶しましょうよ」
「痛っ」
一つの部屋のドアを克哉が蹴とばすように開け、ドンっと押し込まれた。衝撃でそのまま床に倒れてしまい、衝撃でフローリングが頬に当たり、ひやりとした感触に震えた。
「薙くん、お父さんが迎えに来てくれたよ」
「とっ父さん! 拓人どけっ! 離せっ!」
すぐに悲鳴のような薙の声が降ってきて、慌てて顔をあげると……見たくもない光景だった。僕の息子が、同級生の男の子に押し倒されているなんて。
僕が買ってあげたセーターを捲られ、まだ少年の薄い胸が丸見えになっていた。嬲られてしまったのか、胸元が少し……濡れていた。
な、なんてことを……こんな光景……直視できないよ。
「どけっ拓人! お前はこんなことする奴じゃないだろう!」
薙は後ろ手に縛られていて、抵抗できない状態だったが必死に言葉で抵抗を続けていた。
酷い、これは誘拐だ! こんなのあり得ない!
「やめろ……やめてくれ! 薙には手を出さないでくれ! 約束したじゃないか」
「くくくっ。おい拓人、お前まだヤッてなかったのか。好きにしろといったじゃないか。全く初心だな。犯し方が分からないのか」
「うっ……父さん」
「まぁいいさ、真面目なお前にしては上出来だ。今から見本を見せてやるからな」
「何をするつもりだ。よせっ」
さっきの言葉を思い出して、ぞっとした。
克哉は、僕を薙の前で犯すと言っていた。
父親が息子の前で犯されるだって……そんなの狂ってる。
あとがき(不要な方はスルーで)
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