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12章
出逢ってはいけない 15
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「薙、待たせたな」
「流さん!」
薙の部屋に入ると、友達と熱心に勉強しているようだった。机の上には参考書や辞書、ノートなどが山積みで、ふたりで課題に格闘していたようだ。
こういう光景って懐かしいな。中間とか期末とか、俺は兄さんと違って、出来が悪かったけど、英語と美術と書道。それと体育はよく出来た。
「さてと、どこを教えてたらいい?」
「あっあの、岩本拓人と言います。俺までありがとうございます」
薙の友達も律儀に挨拶してくれた。昨日は少し心配したが、どうやら問題なさそうだな。そんな気持ちで、すっかりリラックスしてしまった。ふたりともなかなかいい生徒で、俺の説明を聞いては頷いて、可愛いもんだった。
「なんか腹減った」
薙がふと呟くと、その友達も腹をぐうっと鳴らした。
「くくっ、若いな。よしっ、何か食うか」
「うん、もう腹ペコだ」
「確かにもう昼だしな。パスタかなんかでいいか」
「わーオレ、流さんのパスタ大好きだ」
「OK! 可愛いこと言うのな。いつも薙は。ちょっと待ってろ」
薙と友達はハイタッチで喜んでいる。無邪気なもんだ。
「やったー拓人喜べ、流さんのパスタは絶品だ」
「へぇ楽しみだな」
俺も楽しい気持ちで廊下に出ると、翠こちらに向かって歩いてくるところだった。
「兄さん、どうした?」
「あ……そろそろお昼だろう。お腹空いたんじゃないかと思ってこれを」
お盆の上には、お稲荷さんの弁当が載っていた。
「買って来たのか」
「うん、お前は手が離せないと思って……僕は作れないからね」
「……そうか、気が利くな」
翠なりに何か息子のためにしてやりたかったのだろう。父親らしい優しい心遣いだ。そのまま一緒に部屋にUターンをした。
「あっ……父さん」
「薙、勉強、頑張っているね。これ……お昼にお友達と食べるといい」
「え? 」
薙は困惑した表情を浮かべていた。
「何これ? 」
「あ……お稲荷さんの弁当だよ。薙は昔これが好きだったから」
「……いらない! こんなのよりも流さんのパスタの方がいい!」
げっ……薙それを言うか。翠が固まってしまったじゃないか。まずいな……この状況。せっかく上手くいっていたのに。あーくそっ俺が安易にパスタ作ってやるなんて言わなきゃよかった。悪い、悪かった。もう反省だ。
必死に取り繕うとする翠の顔は、無理をしているのがありありと分かって心苦しい。
「そっそうか。そうだね。……若い子にはパスタがいいよな。父さん気が利かなくて悪かったな」
泣きそうな目をしていた。そのまま背中を向けて去っていこうとするので、思わず呼び止めてしまった。
「翠っ、待てよ!」
****
父さんに……悪態をついてしまった。せっかく弁当を買ってきてくれたのに、オレはどうしてあんな言い方しちゃったのかな。
でも流さんのパスタが食べたかったんだ。だからつい我儘を言ってしまった。
頭の中でぐるぐると反省していると、隣に座っている拓人の様子がおかしいことに気がついた。顔色が悪い。青ざめているように見えた。
「拓人? どうした」
「あ……今のはお前の父さんだよな」
「うん、そうだけど?」
「……お父さんの名前って……『スイ』っていうのか」
「そうだけど? それがどうかしたか」
拓人の顔が一瞬強張った。
「……悪い。俺……帰るよ。用事思い出した」
「え? どうしたんだよ。急に」
血相を変えて帰っていく拓人の様子に、得体のしれない不安を感じてしまった。
オレ……何かとんでもないことをしたのか。
****
「あら拓人くん、どこに行っていたの」
薙の家から飛ぶ勢いで、母さんが死んでから世話になっている義父の実家、祖父母が暮らすマンションに戻ってきた。
帰るなり、義父のお母さん、俺がみつ子さんと呼んでいる女性に話しかけられたので、聞いてみた。
「月影寺に行ってきました」
「えっ今なんて……?」
「月影寺の『スイさん』に会ってきました」
みつ子さんの顔色はみるみる青ざめ、手に持っていたマグカップを床に落とした。
「なんで……あんな場所に。あなたは絶対にあそこに行ってはいけないのに……不吉だわ……」
「流さん!」
薙の部屋に入ると、友達と熱心に勉強しているようだった。机の上には参考書や辞書、ノートなどが山積みで、ふたりで課題に格闘していたようだ。
こういう光景って懐かしいな。中間とか期末とか、俺は兄さんと違って、出来が悪かったけど、英語と美術と書道。それと体育はよく出来た。
「さてと、どこを教えてたらいい?」
「あっあの、岩本拓人と言います。俺までありがとうございます」
薙の友達も律儀に挨拶してくれた。昨日は少し心配したが、どうやら問題なさそうだな。そんな気持ちで、すっかりリラックスしてしまった。ふたりともなかなかいい生徒で、俺の説明を聞いては頷いて、可愛いもんだった。
「なんか腹減った」
薙がふと呟くと、その友達も腹をぐうっと鳴らした。
「くくっ、若いな。よしっ、何か食うか」
「うん、もう腹ペコだ」
「確かにもう昼だしな。パスタかなんかでいいか」
「わーオレ、流さんのパスタ大好きだ」
「OK! 可愛いこと言うのな。いつも薙は。ちょっと待ってろ」
薙と友達はハイタッチで喜んでいる。無邪気なもんだ。
「やったー拓人喜べ、流さんのパスタは絶品だ」
「へぇ楽しみだな」
俺も楽しい気持ちで廊下に出ると、翠こちらに向かって歩いてくるところだった。
「兄さん、どうした?」
「あ……そろそろお昼だろう。お腹空いたんじゃないかと思ってこれを」
お盆の上には、お稲荷さんの弁当が載っていた。
「買って来たのか」
「うん、お前は手が離せないと思って……僕は作れないからね」
「……そうか、気が利くな」
翠なりに何か息子のためにしてやりたかったのだろう。父親らしい優しい心遣いだ。そのまま一緒に部屋にUターンをした。
「あっ……父さん」
「薙、勉強、頑張っているね。これ……お昼にお友達と食べるといい」
「え? 」
薙は困惑した表情を浮かべていた。
「何これ? 」
「あ……お稲荷さんの弁当だよ。薙は昔これが好きだったから」
「……いらない! こんなのよりも流さんのパスタの方がいい!」
げっ……薙それを言うか。翠が固まってしまったじゃないか。まずいな……この状況。せっかく上手くいっていたのに。あーくそっ俺が安易にパスタ作ってやるなんて言わなきゃよかった。悪い、悪かった。もう反省だ。
必死に取り繕うとする翠の顔は、無理をしているのがありありと分かって心苦しい。
「そっそうか。そうだね。……若い子にはパスタがいいよな。父さん気が利かなくて悪かったな」
泣きそうな目をしていた。そのまま背中を向けて去っていこうとするので、思わず呼び止めてしまった。
「翠っ、待てよ!」
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父さんに……悪態をついてしまった。せっかく弁当を買ってきてくれたのに、オレはどうしてあんな言い方しちゃったのかな。
でも流さんのパスタが食べたかったんだ。だからつい我儘を言ってしまった。
頭の中でぐるぐると反省していると、隣に座っている拓人の様子がおかしいことに気がついた。顔色が悪い。青ざめているように見えた。
「拓人? どうした」
「あ……今のはお前の父さんだよな」
「うん、そうだけど?」
「……お父さんの名前って……『スイ』っていうのか」
「そうだけど? それがどうかしたか」
拓人の顔が一瞬強張った。
「……悪い。俺……帰るよ。用事思い出した」
「え? どうしたんだよ。急に」
血相を変えて帰っていく拓人の様子に、得体のしれない不安を感じてしまった。
オレ……何かとんでもないことをしたのか。
****
「あら拓人くん、どこに行っていたの」
薙の家から飛ぶ勢いで、母さんが死んでから世話になっている義父の実家、祖父母が暮らすマンションに戻ってきた。
帰るなり、義父のお母さん、俺がみつ子さんと呼んでいる女性に話しかけられたので、聞いてみた。
「月影寺に行ってきました」
「えっ今なんて……?」
「月影寺の『スイさん』に会ってきました」
みつ子さんの顔色はみるみる青ざめ、手に持っていたマグカップを床に落とした。
「なんで……あんな場所に。あなたは絶対にあそこに行ってはいけないのに……不吉だわ……」
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