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11章
夏休み番外編『SUMMER VACATION 2nd』12
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やがて視界は、再び開かれた。
濡れそぼった目を思い切って開くと、流の顔が間近にあった。
心配そうに、年甲斐もなく泣きじゃくった僕のことを見つめていた。
「翠、そんなに泣いて」
「何故だろう。今宵はいろいろ想い出してしまって」
「悲しい想い出か」
「それもあるが、それだけではないよ。嬉しいことも……」
「俺に抱かれて?」
流が痺れるような低音でストレートに聞いてくるので、照れてしまった。
「嬉しいよ。翠が俺の全てを受け入れてくれて。翠の意思でそうしてくれるのが伝わって」
「あぁ全て僕の意思だ。僕がそうしたいと思っている」
「ありがとう」
閨での獰猛な流は消え、優しい口づけを合図に、あとは何もかもしてくれる。風呂場で身を清めてくれ、真新しい浴衣を眠りやすいように着付けてくれる。冷たい水も飲ませてくれ、清潔な布団も全部、流が用意してくれた。
「悪いな……」
「いや、翠のために出来ることなら、何でもしたいんだ。さぁ今日は疲れただろう。もう寝よう」
僕のことを優しく労わってくれる流。
流に抱かれるのも、その後こんな時間を過ごすのも好きだ。
朝になったら……ちゃんと兄の顔に戻るから。
今はお前の恋人のまま眠りにつきたい。
遠い昔の僕にとって明けなかった夜は、明けていく。
やがて橙色に染まる朝日を浴びながら、僕の身体をふわりと抱きしめたまま眠りについた可愛い弟の温もりを感じることになるだろう。
明けない夜は……もうない。
「この世に明けぬ夜は無い……日はまた昇る」
その言葉を、今なら信じられる。
****
離れに戻ってすぐベッドルームへ直行したのはいいが、雲行きが怪しい。
「洋は随分と大胆なことを言うようになったな」
「えっなんで」
「自分でするとか……滅多にそんなこと言わないのに」
「それは……だって、丈が落ち込んでいると思ったから」
そこまで言ってハッとした。
まずいまずい。さっき覗き見していたことがバレてしまう!
「そこだよ。何故、私が落ち込んでいると思ったのだ?」
「いや……別に」
「洋、何を見た?」
「あっその」
逃れられない視線を浴び、そのまま抱きしめられ、苦しい程の口づけを受ける。
「ん……苦し……」
こうなってしまうと本当のことを言うまで、丈は離してくれない。
「洋、何を見た?」
もう一度問われ、観念した。
「その……涼とシャワールームを覗いてしまって」
「なんだって、涼くんまで?」
あっまた墓穴を! 俺は馬鹿か。
「そこで何を見た? こっちにおいで」
口づけされたまま、ベッドに押し倒された。着付けてもらったばかりの浴衣の裾を割られ、丈の大きな手が内股を大きく擦ってきたので、震えてしまう。
「まさかアレを、見たのか!」
「その……悪気はなかったんだ。偶然見えちゃって……あ、でも心配するなよ。俺が満足しているんだし」
はぁ……自分でも何を言っているのだか、支離滅裂じゃないか。
「ふっ、可愛いこと言ってくれるな」
「そっそうだよ。丈のが一番いい。安志や流さんのが大きすぎんだよ」
「んっ? 私以外のも、そんなにじっくり見たのか」
「みっ見てないよ! 想像だよ!」
慌てて訂正した。が……本当はバッチリ見比べたわけだから説得力に欠ける。
「洋……」
丈は少しむっとしたような表情を浮かべたあと、不敵に笑った。
「なっ何?」
「そんなにお仕置きをご所望か」
「お仕置きって何! 」
何故だかその言葉に強く反応してしまった自分に驚いてしまった。
おいっ俺は何で……期待するような反応を。
「確か今日は全部洋がするって言ったよな」
「う……ん」
「じゃあ言うことを聞いてくれるな。本当は私が浴衣を脱がそうと思ったが……。そこに立って、こちらを向いて」
丈が俺を起こし、ベッドの前の大きな窓ガラスの前に立たした。
「胸に手をいれて」
「えっ」
「さぁ」
言われるがままに、自分の胸に浴衣の袷から手を差し込んだ。
「乳首に触れて」
「……」
きゅっと唇を噛んで俯いたまま自分の指で、そっと小さな突起に触れてみる。
「摘まんで揉んで、弄ってごらん」
「うっ……」
必死に目を閉じて、丈がいつもしてくれる指先を思い出しながら、触ってみた。
「もっと強く」
「……でも、これは」
ひどくもどかしい気分になってきた。
自分で触ってみるなんて初めてで……丈の指じゃないだけで、こうも感じ方に差があるのかと思ってしまった。
「洋、これはお仕置きだ」
その言葉が、俺を乱す。
濡れそぼった目を思い切って開くと、流の顔が間近にあった。
心配そうに、年甲斐もなく泣きじゃくった僕のことを見つめていた。
「翠、そんなに泣いて」
「何故だろう。今宵はいろいろ想い出してしまって」
「悲しい想い出か」
「それもあるが、それだけではないよ。嬉しいことも……」
「俺に抱かれて?」
流が痺れるような低音でストレートに聞いてくるので、照れてしまった。
「嬉しいよ。翠が俺の全てを受け入れてくれて。翠の意思でそうしてくれるのが伝わって」
「あぁ全て僕の意思だ。僕がそうしたいと思っている」
「ありがとう」
閨での獰猛な流は消え、優しい口づけを合図に、あとは何もかもしてくれる。風呂場で身を清めてくれ、真新しい浴衣を眠りやすいように着付けてくれる。冷たい水も飲ませてくれ、清潔な布団も全部、流が用意してくれた。
「悪いな……」
「いや、翠のために出来ることなら、何でもしたいんだ。さぁ今日は疲れただろう。もう寝よう」
僕のことを優しく労わってくれる流。
流に抱かれるのも、その後こんな時間を過ごすのも好きだ。
朝になったら……ちゃんと兄の顔に戻るから。
今はお前の恋人のまま眠りにつきたい。
遠い昔の僕にとって明けなかった夜は、明けていく。
やがて橙色に染まる朝日を浴びながら、僕の身体をふわりと抱きしめたまま眠りについた可愛い弟の温もりを感じることになるだろう。
明けない夜は……もうない。
「この世に明けぬ夜は無い……日はまた昇る」
その言葉を、今なら信じられる。
****
離れに戻ってすぐベッドルームへ直行したのはいいが、雲行きが怪しい。
「洋は随分と大胆なことを言うようになったな」
「えっなんで」
「自分でするとか……滅多にそんなこと言わないのに」
「それは……だって、丈が落ち込んでいると思ったから」
そこまで言ってハッとした。
まずいまずい。さっき覗き見していたことがバレてしまう!
「そこだよ。何故、私が落ち込んでいると思ったのだ?」
「いや……別に」
「洋、何を見た?」
「あっその」
逃れられない視線を浴び、そのまま抱きしめられ、苦しい程の口づけを受ける。
「ん……苦し……」
こうなってしまうと本当のことを言うまで、丈は離してくれない。
「洋、何を見た?」
もう一度問われ、観念した。
「その……涼とシャワールームを覗いてしまって」
「なんだって、涼くんまで?」
あっまた墓穴を! 俺は馬鹿か。
「そこで何を見た? こっちにおいで」
口づけされたまま、ベッドに押し倒された。着付けてもらったばかりの浴衣の裾を割られ、丈の大きな手が内股を大きく擦ってきたので、震えてしまう。
「まさかアレを、見たのか!」
「その……悪気はなかったんだ。偶然見えちゃって……あ、でも心配するなよ。俺が満足しているんだし」
はぁ……自分でも何を言っているのだか、支離滅裂じゃないか。
「ふっ、可愛いこと言ってくれるな」
「そっそうだよ。丈のが一番いい。安志や流さんのが大きすぎんだよ」
「んっ? 私以外のも、そんなにじっくり見たのか」
「みっ見てないよ! 想像だよ!」
慌てて訂正した。が……本当はバッチリ見比べたわけだから説得力に欠ける。
「洋……」
丈は少しむっとしたような表情を浮かべたあと、不敵に笑った。
「なっ何?」
「そんなにお仕置きをご所望か」
「お仕置きって何! 」
何故だかその言葉に強く反応してしまった自分に驚いてしまった。
おいっ俺は何で……期待するような反応を。
「確か今日は全部洋がするって言ったよな」
「う……ん」
「じゃあ言うことを聞いてくれるな。本当は私が浴衣を脱がそうと思ったが……。そこに立って、こちらを向いて」
丈が俺を起こし、ベッドの前の大きな窓ガラスの前に立たした。
「胸に手をいれて」
「えっ」
「さぁ」
言われるがままに、自分の胸に浴衣の袷から手を差し込んだ。
「乳首に触れて」
「……」
きゅっと唇を噛んで俯いたまま自分の指で、そっと小さな突起に触れてみる。
「摘まんで揉んで、弄ってごらん」
「うっ……」
必死に目を閉じて、丈がいつもしてくれる指先を思い出しながら、触ってみた。
「もっと強く」
「……でも、これは」
ひどくもどかしい気分になってきた。
自分で触ってみるなんて初めてで……丈の指じゃないだけで、こうも感じ方に差があるのかと思ってしまった。
「洋、これはお仕置きだ」
その言葉が、俺を乱す。
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