重なる月

志生帆 海

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11章

番外編 安志&涼 『SUMMER VACATION』9

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 ゴックンー

 生唾を思い切り呑み込んだ。

 やべっ涎垂れそうだぜ。

 そして一度瞬きし目を開けた時、涼の水着はすべて下へと下がった。

 うぉぉぉ~ やった! ついにやった!

 歓喜の声をあげそうになった。

 ふたつの水着は芝生へと放り投げられた。

 夏の日差しを浴びた裸体。

 水滴をまとう美しい腰のカーブ。

 きゅっと引き締まったヒップ。

 そしてその中央についている美味しそうな果実。

 美しい顔にふさわしい、綺麗な形のそれに俺の目は釘付けだ。

 ああっ~生きていてよかった。

 今日は一体何のご褒美だ。

 興奮冷めやらぬまま、隣の洋のことを見ると、洋もしっかりと脱ぎ終わっていた。

 といっても少しだけ照れくさそうな仕草で、すぐに水の中に沈めてしまったので、水の中で肌色が揺れている状態だ。

「洋兄さんもちゃんと脱いだね!」
「うんちょっと恥ずかしいけどね。あー気持ちいい。こんな解放感久しぶりだね」
「うん!」

 洋と涼が腰から下をプールの水につけて、嬉しそうに話している。

 こっこれは!

 すごい! 最高だ!

 よーしっ! 潜って、二人の股間をしかと見てやろう!

 自分の股間の高まりはそっちのけで、スケベ心に火が付いた。

「よーし、潜るぞ!!」

 そう天に向かって叫ぼうと思った瞬間、後ろから誰かにドつかれた。

「へっ?」

 そのまま俺は、つんのめる形で水中に沈む。

 ゴボゴボゴボ……

「洋、なんだその恰好は!」
「うわっ!あぁ……丈っ」

 洋の驚いた声が、水中にまで響いたような……


****

 流兄さんの黒い水着を握りしめたまま、私は森を駆け抜け中庭に直接出た。

 私が設置したプールに皆いるようで、ほっとした。

 でも何故か……嫌な……妙な胸騒ぎがする。

 洋と涼くんの後ろ姿が見えたのもつかの間、二人の手から何かが青い芝生へと放り投げられた。

「なっ何だ!あれは!」

 慌てて近づいて見れば、二枚の水着が仲良く芝生に並んでいた。

「洋っ!!」

 スーツのまま靴だけを脱ぎ捨て、プールの中を覗けば、真っ裸になったふたりの裸体が水中で揺らいでいた。

 一番けしからん奴は、その二人の下半身を眺めようと今まさに潜ろうとしている……安志くんだ!

 絶対に阻止せねば!

 私はスーツのまま、飛び込んで安志くんの背中を逆方向へと突き飛ばした。

「洋、何て格好なんだ!」

 叱るように声をあげると、洋は一瞬びくっとしたものの、すぐに笑った。

「丈、早かったな。はは……この格好? 笑っちゃうだろう。でもね、俺だけじゃなくて皆、裸なんだよ」

 いつもなら震えあがるところなのに、これは一体? きっと何か悪いものに感化されたに違いない。

「洋、そんな姿になっていいなんて許してないぞ。私は怒ってる」
「……そうか……やっぱり怒ってるのか」

 声のトーンを落として厳しく責めると、さすがに洋は少しシュンとした。

 楽しく盛り上がっているのに可哀そうだとは思ったが、それとこれとでは話が別だ。

 人様の前で裸体を見せるなんて言語道断!

「おーい丈。そうマジになるなって。今日は夏休み企画だろ。ほらお前もハメはずせ」

 後ろから突然すごい力で羽交い絞めされた。

「うっ! な、何を」

 流兄さんに後ろからすごい力で抱きしめられて、焦った!

 兄さんの手は巧みに私のタイを解き、ボタンを外していく。

「ちょっと兄さん!!」

 驚いて硬直してしまった。

「わっ! 流さん、それ新しい!」

 洋が感動した声をあげている。

「おい、安志くん手伝え。この堅苦しい頭の奴を解してやろう! 今日は無礼講だ! 兄である俺が許可する!」

「はい! 了解っす!」

 安志くんが器用に潜って私のベルトを外し、ズボンを下げていく。

 彼は水中での緊急時の対応に慣れている手つきで、私はあっという間に下着姿になっていった。

「おっおい! やめろー翠兄さん助けてください!」

 縋る思いで翠兄さんを見つめれば、なぜか翠兄さんまで真っ裸だった。

 この兄弟は一体……

 もう開き直るしかないのか。

「はぁ……わかりましたよ。郷に入れば郷に従えか。そんなに私の裸が見たいのなら、なってあげましょう。但し……この中で一番いい身体だと思いますよ」

「うん丈、いいね。その心がけは立派だ」

 翠兄さんの菩薩のような声が静かに響く中、私は潔く下着を脱ぎ捨てシャツをパッと開き裸身になった。

 そしてプールサイドに鍛え上げた躰を見せつけるように立ち上がった。

 洋のことを見下ろして甘く微笑んでやると、今度は洋の方が真っ赤に染まった。

「丈さんの身体、すごいかっこいい。腹筋が割れてる! わあーモデルになれそうだ」

「何?涼、俺の方がすごいって、ほら見てみろよ!」

 涼くんの声に煽られ、安志くんまで裸のままプールからあがり私の横に立った!

「おいおい待てよ。一番立派なのは俺だろう」

 さらに流兄さんまで。

 三人で並んで、裸身を見せ合った。

 プールの中では翠兄さんと洋と涼くんがぽかんと、立ち尽くしていた。




 
 なんという夏休みの幕開けだ。

 まさかの裸自慢からだとはな。

 私としたことが……彼らの気にやられ、あり得ない行動をしてしまった。

 だが、こんなことが出来るのも心許せる仲間たちのおかげなんだ。













あとがき (不要な方はスルーしてください0



****

今回はシリアスの後の娯楽企画ということで……9話もこんな話ですいません(;'∀') 次回からは甘くエロい番外編で、安志くんの見せどころを頑張りたいです。いつも読んで下さってありがとうございます。






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