893 / 1,657
11章
番外編 安志&涼 『SUMMER VACATION』4
しおりを挟む
白くて長い布。
うぉぉ、これってあれだよな。あれ……
「うん褌《ふんどし》。去年の宮崎旅行でハマってしまってね。どうだろう?君に似合いそうだが……」
翠さんが仏のような穏やかな笑みで勧めてくる。
本当にこの人は浮世離れしている。
いやいや、そうじゃない。
流石に俺は恋人と来ているのに、褌はないだろう?
あーなんで新調したばかりの水着を干したまま忘れるんだよ。洗うんじゃなかった!
「あぁ心配しないで。締め方が分からないから不安なんだね。大丈夫だよ。僕が手伝ってあげるから……さぁ脱いでごらん」
「いや……その……あーーーやっぱりいいです!」
俺は逃げるように、その場から去っていた。
全く俺は……何を恥ずかしがっている。
忘れたなら、素直に認めろ。
男なら潔く行け!
****
「あっ安志くん待って!」
呼び止めたのに、彼は顔を真っ赤にして逃げるように去ってしまった。
ポカンと小さくなっていく後ろ姿を眺めていると、流に思いっきり笑われた。
「はははっ! 彼はなかなか精神を鍛えているようだな。実に逞しいな。翠に靡かなかったのはすごいことだ!俺も見習いたい」
「流、どういう意味だよ? それ」
「あいつはきっと。くくく、洋くんが目をまるくするかな。それとも涼くんが卒倒するかもな」
「……?」
「さてと、じゃあこの褌は翠がつけるといい」
「僕が……なんで?」
流はしたり顔で話を続けた。
「この白い褌はもともと翠のものだったろう。あの宮崎でもらったものだし」
「それはそうだが……でも」
「翠は人に勧めるだけで、まだ自分で締めれないのか」
そう言われると、僕の長男の血が騒いでしまうのに。
「……そんなことないよ。僕だってあれから練習してちゃんと出来るようになったんだ」
「へぇ、じゃあひとりでつけて見ろよ」
「いいよ! 貸して」
ついムキになって、流の手から褌を奪いとってしまった。
「ここで見ているよ」
「……恥ずかしい」
「大丈夫だ。ここには俺しかいない」
「う……ん」
「じゃあ脱衣場で」
流に腕をひっぱられ、脱衣場に入った。脱衣場といっても風呂場と繋がっているし、ガラス張りで丸見えなんだけどな。
僕は着ていた和装を脱ぎ捨てて、下着姿になった。
少し迷いながらそっと下着を脱いでいくと、流の視線も一緒に下半身を舐めるように移動したのを感じで、ゾクゾクしてしまった。
僕、何を期待して……?
「……お前は、いやらしい目をしているな」
「今から視姦する」
「おっ、おい!」
****
「洋兄さん、プール気持ちいいね! 思ったより深いし」
「うん、そうだな」
プールの水はひんやりと冷たくて気持ちがいいし、まだ洋兄さんと二人きりなので広々と使える。
洋兄さんも気持ち良さそうに泳いでいた。
まぁ泳ぐといっても5m程度の距離だけど、簡易プールでこの規模は申し分ない。久しぶりに人の目を気にせず、のびのびと過ごせて僕の心も解放感で一杯だ。
「それにしても、安志さん遅いね」
「うーん……流さんと翠さんも一癖も二癖もあるから、どう料理されているか」
洋兄さんは楽しそうに笑っていた。
「え? どういう意味」
「ちなみに宮崎では褌姿だったよ」
「えー褌?」
「ははっもしかしたら安志も餌食になったかも。あーそれ見たいな!」
今度は洋兄さんが声をあげて笑った。
よほど楽しい思い出だったみたいだ。
「ええっ」
「ふふっ、でも安志なら似合うかもよ。あいつ和風モードだし」
「いやいや、そんな、だって褌なんて困るよ。ほら前も後ろも際どいから、あー心配だ。そんな姿を洋兄さんに見せることになったらどうしよう」
「ん? 大丈夫だよ。俺はあいつの裸なんて見慣れているよ」
「えっ!!」
その発言には、流石に動揺してしまった。
「あ……いや、小さい頃一緒に安志の家に泊まった時にさ、お風呂に入ったとかそういうレベルのこと」
「あぁ……なんだ、そういうことか」
「うん、だってアイツは涼のものだろう。その上手くいっているのか」
洋兄さんがすっと真顔になったので、正直に答えた。
「僕たち、あの春の事件からまた一層絆が深まったと思うよ」
「そうだな。見ていると分かるよ。幸せそうな雰囲気が滲み出ているもんな」
「ありがとう。でももうダメだよ。安志さんの裸はもう見たらダメだ」
「へぇ涼って……案外独占欲強いのな」
「当たり前だ。安志さんの身体、すごくかっこいいんだ。鍛えられていて」
そこで洋兄さんは顔を上げ、遠くを見つめた。
その顔色が、みるみる……
「はいはいお惚気だな。あっ噂をすれば安志がこっちに来るよ……あれ?あ──っ!!」
洋兄さんの驚愕の声につられて僕も振り返ってみた。
……固まってしまった!
ちょっと?
な……んで?
真っ裸なんだよぉぉぉ!!!!!
うぉぉ、これってあれだよな。あれ……
「うん褌《ふんどし》。去年の宮崎旅行でハマってしまってね。どうだろう?君に似合いそうだが……」
翠さんが仏のような穏やかな笑みで勧めてくる。
本当にこの人は浮世離れしている。
いやいや、そうじゃない。
流石に俺は恋人と来ているのに、褌はないだろう?
あーなんで新調したばかりの水着を干したまま忘れるんだよ。洗うんじゃなかった!
「あぁ心配しないで。締め方が分からないから不安なんだね。大丈夫だよ。僕が手伝ってあげるから……さぁ脱いでごらん」
「いや……その……あーーーやっぱりいいです!」
俺は逃げるように、その場から去っていた。
全く俺は……何を恥ずかしがっている。
忘れたなら、素直に認めろ。
男なら潔く行け!
****
「あっ安志くん待って!」
呼び止めたのに、彼は顔を真っ赤にして逃げるように去ってしまった。
ポカンと小さくなっていく後ろ姿を眺めていると、流に思いっきり笑われた。
「はははっ! 彼はなかなか精神を鍛えているようだな。実に逞しいな。翠に靡かなかったのはすごいことだ!俺も見習いたい」
「流、どういう意味だよ? それ」
「あいつはきっと。くくく、洋くんが目をまるくするかな。それとも涼くんが卒倒するかもな」
「……?」
「さてと、じゃあこの褌は翠がつけるといい」
「僕が……なんで?」
流はしたり顔で話を続けた。
「この白い褌はもともと翠のものだったろう。あの宮崎でもらったものだし」
「それはそうだが……でも」
「翠は人に勧めるだけで、まだ自分で締めれないのか」
そう言われると、僕の長男の血が騒いでしまうのに。
「……そんなことないよ。僕だってあれから練習してちゃんと出来るようになったんだ」
「へぇ、じゃあひとりでつけて見ろよ」
「いいよ! 貸して」
ついムキになって、流の手から褌を奪いとってしまった。
「ここで見ているよ」
「……恥ずかしい」
「大丈夫だ。ここには俺しかいない」
「う……ん」
「じゃあ脱衣場で」
流に腕をひっぱられ、脱衣場に入った。脱衣場といっても風呂場と繋がっているし、ガラス張りで丸見えなんだけどな。
僕は着ていた和装を脱ぎ捨てて、下着姿になった。
少し迷いながらそっと下着を脱いでいくと、流の視線も一緒に下半身を舐めるように移動したのを感じで、ゾクゾクしてしまった。
僕、何を期待して……?
「……お前は、いやらしい目をしているな」
「今から視姦する」
「おっ、おい!」
****
「洋兄さん、プール気持ちいいね! 思ったより深いし」
「うん、そうだな」
プールの水はひんやりと冷たくて気持ちがいいし、まだ洋兄さんと二人きりなので広々と使える。
洋兄さんも気持ち良さそうに泳いでいた。
まぁ泳ぐといっても5m程度の距離だけど、簡易プールでこの規模は申し分ない。久しぶりに人の目を気にせず、のびのびと過ごせて僕の心も解放感で一杯だ。
「それにしても、安志さん遅いね」
「うーん……流さんと翠さんも一癖も二癖もあるから、どう料理されているか」
洋兄さんは楽しそうに笑っていた。
「え? どういう意味」
「ちなみに宮崎では褌姿だったよ」
「えー褌?」
「ははっもしかしたら安志も餌食になったかも。あーそれ見たいな!」
今度は洋兄さんが声をあげて笑った。
よほど楽しい思い出だったみたいだ。
「ええっ」
「ふふっ、でも安志なら似合うかもよ。あいつ和風モードだし」
「いやいや、そんな、だって褌なんて困るよ。ほら前も後ろも際どいから、あー心配だ。そんな姿を洋兄さんに見せることになったらどうしよう」
「ん? 大丈夫だよ。俺はあいつの裸なんて見慣れているよ」
「えっ!!」
その発言には、流石に動揺してしまった。
「あ……いや、小さい頃一緒に安志の家に泊まった時にさ、お風呂に入ったとかそういうレベルのこと」
「あぁ……なんだ、そういうことか」
「うん、だってアイツは涼のものだろう。その上手くいっているのか」
洋兄さんがすっと真顔になったので、正直に答えた。
「僕たち、あの春の事件からまた一層絆が深まったと思うよ」
「そうだな。見ていると分かるよ。幸せそうな雰囲気が滲み出ているもんな」
「ありがとう。でももうダメだよ。安志さんの裸はもう見たらダメだ」
「へぇ涼って……案外独占欲強いのな」
「当たり前だ。安志さんの身体、すごくかっこいいんだ。鍛えられていて」
そこで洋兄さんは顔を上げ、遠くを見つめた。
その顔色が、みるみる……
「はいはいお惚気だな。あっ噂をすれば安志がこっちに来るよ……あれ?あ──っ!!」
洋兄さんの驚愕の声につられて僕も振り返ってみた。
……固まってしまった!
ちょっと?
な……んで?
真っ裸なんだよぉぉぉ!!!!!
10
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説

代わりでいいから
氷魚彰人
BL
親に裏切られ、一人で生きていこうと決めた青年『護』の隣に引っ越してきたのは強面のおっさん『岩間』だった。
不定期に岩間に晩御飯を誘われるようになり、何時からかそれが護の楽しみとなっていくが……。
ハピエンですがちょっと暗い内容ですので、苦手な方、コメディ系の明るいお話しをお求めの方はお気を付け下さいませ。
他サイトに投稿した「隣のお節介」をタイトルを変え、手直ししたものになります。
いっそあなたに憎まれたい
石河 翠
恋愛
主人公が愛した男には、すでに身分違いの平民の恋人がいた。
貴族の娘であり、正妻であるはずの彼女は、誰も来ない離れの窓から幸せそうな彼らを覗き見ることしかできない。
愛されることもなく、夫婦の営みすらない白い結婚。
三年が過ぎ、義両親からは石女(うまずめ)の烙印を押され、とうとう離縁されることになる。
そして彼女は結婚生活最後の日に、ひとりの神父と過ごすことを選ぶ。
誰にも言えなかった胸の内を、ひっそりと「彼」に明かすために。
これは婚約破棄もできず、悪役令嬢にもドアマットヒロインにもなれなかった、ひとりの愚かな女のお話。
この作品は小説家になろうにも投稿しております。
扉絵は、汐の音様に描いていただきました。ありがとうございます。

愛する貴方の心から消えた私は…
矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。
周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。
…彼は絶対に生きている。
そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。
だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。
「すまない、君を愛せない」
そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。
*設定はゆるいです。

とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
【完結】双子の伯爵令嬢とその許婚たちの物語
ひかり芽衣
恋愛
伯爵令嬢のリリカとキャサリンは二卵性双生児。生まれつき病弱でどんどん母似の美女へ成長するキャサリンを母は溺愛し、そんな母に父は何も言えない……。そんな家庭で育った父似のリリカは、とにかく自分に自信がない。幼い頃からの許婚である伯爵家長男ウィリアムが心の支えだ。しかしある日、ウィリアムに許婚の話をなかったことにして欲しいと言われ……
リリカとキャサリン、ウィリアム、キャサリンの許婚である公爵家次男のスターリン……彼らの物語を一緒に見守って下さると嬉しいです。
⭐︎2023.4.24完結⭐︎
※2024.2.8~追加・修正作業のため、2話以降を一旦非公開にしていました。
→2024.3.4再投稿。大幅に追加&修正をしたので、もしよければ読んでみて下さい(^^)
六日の菖蒲
あこ
BL
突然一方的に別れを告げられた紫はその後、理由を目の当たりにする。
落ち込んで行く紫を見ていた萌葱は、図らずも自分と向き合う事になった。
▷ 王道?全寮制学園ものっぽい学園が舞台です。
▷ 同室の紫と萌葱を中心にその脇でアンチ王道な展開ですが、アンチの影は薄め(のはず)
▷ 身代わりにされてた受けが幸せになるまで、が目標。
▷ 見た目不良な萌葱は不良ではありません。見た目だけ。そして世話焼き(紫限定)です。
▷ 紫はのほほん健気な普通顔です。でも雰囲気補正でちょっと可愛く見えます。
▷ 章や作品タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではいただいたリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる