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11章
番外編 安志&涼 『SUMMER VACATION』2
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「はーすごっ! 洋……お前愛されてんなぁ」
「なんだよ? 急に」
洋に呼ばれ中庭に出て、かなり驚いた。
これって想像よりかなりデカいぞ!
洋からは、確かにプールを設置したから水遊びをしようと事前に言われていた。どうせ子供のビニールプールに毛が生えた程度だと思っていたが、いやいやなかなか。
どこのアメリカの豪邸だよと思うほどの、立派な簡易設置型のプールに驚いた。幅が6mで奥行きは4m近くはあると思う。深さも十分だ。これなら大人5-6人で入っても大丈夫そうだな。
「丈がね……今年、買ってくれたんだ」
嬉しそうに呟く洋の頬は、丈さんに想いを馳せているのか、薔薇色に染まっていた。
「おーい、お惚気か~」
「ち、違うって!」
洋がこの家に入って一年、ますます幸せそうに輝いていて嬉しくなる。
「わぁー洋兄さん、大きさばっちりだったね」
「うん、涼が相談に乗ってくれて助かったよ」
「向こうではプール付きの豪邸も多かったけれども、ない家でも夏場は広い庭にこのプールを置いているところも多かったからね」
「なるほど!この巨大プールは涼のアドバイスでもあるのか」
「うん、アドバイスしたんだ。まさか僕も入れるとは思ってなかったけどね!」
「あぁ早く泳ぎたいな。涼、水着に着替えようぜ」
「うん!」
プライベートプールみたいな雰囲気たっぷりで、ウキウキしてくる。上機嫌で鞄をひっくり返して、気がついた。
あ、まずい……水着がない。
俺の水着、昨日張り切って洗ってのはいいが、干しっぱなしで忘れた。
「安志さん、どうしたの?」
「いや……ちょっと先に着替えていてくれ」
涼にあんなに水着忘れるなよと言っておきながら、自分が忘れるなんて恥ずかしい。うーむ、こんな時は洋が頼りだ。
丈さんの水着でも貸してもらおうと姿を探すと、ちょうど誰かと廊下で話していた。
「洋……」
「安志どうした?」
「あっこんにちは」
袈裟姿の男性が横に立っていた。
あ……この人は丈さんの一番上のお兄さんの翠さんだ。
「やぁ安志くん、春以来だね」
夏用の少し肌が透けて見える道服《どうふく》を着た翠さんが、たおやかに微笑んでいた。
「安志、水着に着替えるんじゃ?」
「それが忘れちまってさ。なぁ丈さんの貸してくれないか」
「……丈の?」
洋が少し困ったような顔をした。
「……うーん、丈は夜まで帰らないからどうしよう。勝手に貸しても大丈夫かな」
律儀な洋の反応に、お前は本当にいい嫁さんになったなと感心してしまった。同時に『丈さん、どんだけ嫉妬深いんだ!』と突っ込みたくなった。でも確かに勝手に借りて、あとで厄介なことになったら洋も申し訳ない。
さて困ったぞ。
せっかくのプールを目の前にお預けか。
すると隣の翠さんが助け舟を出してくれた。
「あぁそういうこと、なら僕のを……」
「翠さんのじゃ、安志には小さいですよ。破けてしまう」
「あっそうか。君いい身体してるな、じゃあ流のならどうだ?」
翠さんが俺の身体をじっと見つめた。
「確かに。流さんと体格が似てるから丁度いいかも」
「じゃあ僕が案内してあげよう。洋くんは涼くんと先にプールに入っておいで」
「分かりました!」
****
兄さんと俺の家。
この春に新築と増築したばかりの憩いの家。
二棟を繋ぐ渡り廊下の横に、青い芝生の中庭がある。
そこに巨大なプールが設置されたのは、昨日のことだ。
朝っぱらから丈が真剣に組み立てていたので、思わず飛び出してしまった。
「なんだ? これ」
「あっ流兄さんいいところに。ちょっと手伝ってくださいよ」
「いいけど? なんでまた寺に巨大プール?」
「明日、洋の従兄弟の涼くん達が遊びに来るので用意してやったんですよ」
洋くんによく似た子だった。まだ大学生だったな。
「あぁ、あの春に来た可愛い子か。洋君と似ているが正反対の魅力で、またそそられるよな」
「兄さんっ」
「ははっ!ってことは、あの永遠の純朴少年みたいな男も来るか」
「安志くんのことですね。……彼は洋と同い年ですよ」
彼の彼氏も一緒か。
真面目そうな野球少年の名残りを残した顔を思い出して、楽しい気分になった。
「何度聞いても信じらない。っていうか洋くんの色気が壮絶なのか」
「はぁ兄さんのその口、いつになったら治るんですか……」
「悪い悪い。でもこんだけ大きなプールがあれば外に行かなくても十分楽しめるな」
丈は満足げに答える。
「ええ……洋は相変わらず人目を気にするし、涼くんは人気モデルなんで……こうやってここにプールを設置してやれば、少しはストレスを減らせるんじゃないかと」
「なるほどな。本当にお前は甲斐甲斐しいよ」
「……それ、流兄さんに言われたくないですね」
まぁ確かにお互いさまだ。
「ははっ! しかしプール気持ち良さそうだな」
「兄さんたちも一緒にどうぞ。ただし私は明日遅くはなりませんが、彼らが来る時間には帰宅できませんので、くれぐれも羽目をは外さないようにしてくださいよ」
これではどっちが兄だか分からないな。
「分かっているよ。なんだか丈、お前小姑みたいだぞ」
「はぁ……どうとでも」
そんなやり取りをしたんだったな。
客人も来たようだし、俺も水着でひと泳ぎするか。
着ていた作務衣をばっと脱ぎ捨て、黒いショートボクサータイプの水着姿になった。
すると玄関がガチャっと開く音がした。
ん? この家にやってくるのは、翠しかいない。
丁度いいところに来たな。
俺の身体に翠は照れるだろうか、それとも見惚れるか。
「流、いい水着だね。今年はそれにしたのか」
「あぁ、どうだ?」
「うん、いいね」
目を細めて……翠が俺のこと見つめてくれる。
そんな眼差しが、心地よくて溜まらない。
自分の身体を誇示するように翠の前に立ちはだかり抱きしめようとしたら、翠が慌てて一歩下がって首を横に振った。
何だ?
「あっあのお客さんがいて……安志くん、入ってくれ」
遅れて部屋に入ってきたのは、あの『永遠の純朴少年』だった。
「なんだよ? 急に」
洋に呼ばれ中庭に出て、かなり驚いた。
これって想像よりかなりデカいぞ!
洋からは、確かにプールを設置したから水遊びをしようと事前に言われていた。どうせ子供のビニールプールに毛が生えた程度だと思っていたが、いやいやなかなか。
どこのアメリカの豪邸だよと思うほどの、立派な簡易設置型のプールに驚いた。幅が6mで奥行きは4m近くはあると思う。深さも十分だ。これなら大人5-6人で入っても大丈夫そうだな。
「丈がね……今年、買ってくれたんだ」
嬉しそうに呟く洋の頬は、丈さんに想いを馳せているのか、薔薇色に染まっていた。
「おーい、お惚気か~」
「ち、違うって!」
洋がこの家に入って一年、ますます幸せそうに輝いていて嬉しくなる。
「わぁー洋兄さん、大きさばっちりだったね」
「うん、涼が相談に乗ってくれて助かったよ」
「向こうではプール付きの豪邸も多かったけれども、ない家でも夏場は広い庭にこのプールを置いているところも多かったからね」
「なるほど!この巨大プールは涼のアドバイスでもあるのか」
「うん、アドバイスしたんだ。まさか僕も入れるとは思ってなかったけどね!」
「あぁ早く泳ぎたいな。涼、水着に着替えようぜ」
「うん!」
プライベートプールみたいな雰囲気たっぷりで、ウキウキしてくる。上機嫌で鞄をひっくり返して、気がついた。
あ、まずい……水着がない。
俺の水着、昨日張り切って洗ってのはいいが、干しっぱなしで忘れた。
「安志さん、どうしたの?」
「いや……ちょっと先に着替えていてくれ」
涼にあんなに水着忘れるなよと言っておきながら、自分が忘れるなんて恥ずかしい。うーむ、こんな時は洋が頼りだ。
丈さんの水着でも貸してもらおうと姿を探すと、ちょうど誰かと廊下で話していた。
「洋……」
「安志どうした?」
「あっこんにちは」
袈裟姿の男性が横に立っていた。
あ……この人は丈さんの一番上のお兄さんの翠さんだ。
「やぁ安志くん、春以来だね」
夏用の少し肌が透けて見える道服《どうふく》を着た翠さんが、たおやかに微笑んでいた。
「安志、水着に着替えるんじゃ?」
「それが忘れちまってさ。なぁ丈さんの貸してくれないか」
「……丈の?」
洋が少し困ったような顔をした。
「……うーん、丈は夜まで帰らないからどうしよう。勝手に貸しても大丈夫かな」
律儀な洋の反応に、お前は本当にいい嫁さんになったなと感心してしまった。同時に『丈さん、どんだけ嫉妬深いんだ!』と突っ込みたくなった。でも確かに勝手に借りて、あとで厄介なことになったら洋も申し訳ない。
さて困ったぞ。
せっかくのプールを目の前にお預けか。
すると隣の翠さんが助け舟を出してくれた。
「あぁそういうこと、なら僕のを……」
「翠さんのじゃ、安志には小さいですよ。破けてしまう」
「あっそうか。君いい身体してるな、じゃあ流のならどうだ?」
翠さんが俺の身体をじっと見つめた。
「確かに。流さんと体格が似てるから丁度いいかも」
「じゃあ僕が案内してあげよう。洋くんは涼くんと先にプールに入っておいで」
「分かりました!」
****
兄さんと俺の家。
この春に新築と増築したばかりの憩いの家。
二棟を繋ぐ渡り廊下の横に、青い芝生の中庭がある。
そこに巨大なプールが設置されたのは、昨日のことだ。
朝っぱらから丈が真剣に組み立てていたので、思わず飛び出してしまった。
「なんだ? これ」
「あっ流兄さんいいところに。ちょっと手伝ってくださいよ」
「いいけど? なんでまた寺に巨大プール?」
「明日、洋の従兄弟の涼くん達が遊びに来るので用意してやったんですよ」
洋くんによく似た子だった。まだ大学生だったな。
「あぁ、あの春に来た可愛い子か。洋君と似ているが正反対の魅力で、またそそられるよな」
「兄さんっ」
「ははっ!ってことは、あの永遠の純朴少年みたいな男も来るか」
「安志くんのことですね。……彼は洋と同い年ですよ」
彼の彼氏も一緒か。
真面目そうな野球少年の名残りを残した顔を思い出して、楽しい気分になった。
「何度聞いても信じらない。っていうか洋くんの色気が壮絶なのか」
「はぁ兄さんのその口、いつになったら治るんですか……」
「悪い悪い。でもこんだけ大きなプールがあれば外に行かなくても十分楽しめるな」
丈は満足げに答える。
「ええ……洋は相変わらず人目を気にするし、涼くんは人気モデルなんで……こうやってここにプールを設置してやれば、少しはストレスを減らせるんじゃないかと」
「なるほどな。本当にお前は甲斐甲斐しいよ」
「……それ、流兄さんに言われたくないですね」
まぁ確かにお互いさまだ。
「ははっ! しかしプール気持ち良さそうだな」
「兄さんたちも一緒にどうぞ。ただし私は明日遅くはなりませんが、彼らが来る時間には帰宅できませんので、くれぐれも羽目をは外さないようにしてくださいよ」
これではどっちが兄だか分からないな。
「分かっているよ。なんだか丈、お前小姑みたいだぞ」
「はぁ……どうとでも」
そんなやり取りをしたんだったな。
客人も来たようだし、俺も水着でひと泳ぎするか。
着ていた作務衣をばっと脱ぎ捨て、黒いショートボクサータイプの水着姿になった。
すると玄関がガチャっと開く音がした。
ん? この家にやってくるのは、翠しかいない。
丁度いいところに来たな。
俺の身体に翠は照れるだろうか、それとも見惚れるか。
「流、いい水着だね。今年はそれにしたのか」
「あぁ、どうだ?」
「うん、いいね」
目を細めて……翠が俺のこと見つめてくれる。
そんな眼差しが、心地よくて溜まらない。
自分の身体を誇示するように翠の前に立ちはだかり抱きしめようとしたら、翠が慌てて一歩下がって首を横に振った。
何だ?
「あっあのお客さんがいて……安志くん、入ってくれ」
遅れて部屋に入ってきたのは、あの『永遠の純朴少年』だった。
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