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第2部 10章
ただいまとお帰り 8
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「洋、風呂が沸いたから入っておいで」
「あ……丈は?」
「もう浴びた。私は朝食の準備をしてくるよ」
「分かった」
また一緒に入ろうと言われるのかと思ったが、流石にそこまでの時間はないようだ。俺がベッドでまどろんでいるうちに、丈は済ましたようだ。
それにしても相変わらず……俺は朝が弱い。低血圧なのか目覚めてもなかなかすぐに躰が動かない。
だが今は俺の事よりも……丈の事が気になるな。
昨日病院で働いている姿を見て、想像以上に激務だと分かった。それなのに俺のために朝食を作ったり、風呂の準備をしてくれたり……甲斐甲斐しくされて、少し居たたまれないよ。
俺も、もう少し役に立つ人間になりたい。
「ほら、これを着て」
丈に渡されたバスローブを羽織りバスルームへ行くと、ブルーグレーのタイルが一面に敷かれていて、浴槽の横には大きな窓があった。
どこまでも解放感のある造りだ。
窓の向こうには月影寺の緑の風景が溢れ、朝陽が木漏れ日となり降り注ぐ庭は、今は静寂に包まれている。
ここでは俺は、誰の目も気にしなくていい。
俺が俺らしく過ごせる場所だ。
そんな場所を、丈が作ってくれた。
浴槽の真横にはガラス張りのシャワールーム。
昨夜も使ったのに、慌てていたのかよく覚えていない。降り注ぐシャワーの水量を変化でき、まるで柔らかい雨に打たれているようだったことを思い出した。
床のブルーグレーのタイルとお揃いのバスタオルも用意されており、しかも浴槽はご丁寧に泡風呂になっていた。
「丈の奴、どこまでも徹底しているな」
一緒に暮らすようになって、丈が意外とロマンチストでマメだってことに気が付いた。俺のために何かをするのが本当に好きみたいだから、俺も甘えてしまうよ。
「ふぅ……」
真っ白な弾ける泡に躰を包まれると、気持ち良かった。
「すごい……泡が躰に吸い付くようだ」
ふと自分の胸元を見ると、昨夜散々弄られた乳首が充血したように赤くなっているのが見え、羞恥に震えた。
丈がここばかり吸うから、まだこんなにぷっくりしてしまって恥ずかしい。
男なのにこんな場所で感じてしまうことも、恥ずかしい。でもこんなになるまで丈に愛された証だと思うと、それも悪くないかもと、つい自分の手で触れてしまった。
「洋、それ……誘っているのか」
「え! わっ! なっ何でもない」
慌てて手を胸元から離して、泡の中に躰をブクブクと沈めた。
「なんだよ!いきなり」
「洗濯しようと思ってな。しかし濃いシーツだと白い汚れが目立つもんだな。失敗したかな」
「ばっ……馬鹿!」
浴槽の向かい側で丈がしゃがみ込んで、シーツを洗濯機に放り込んでいた。
外国製の大きなドラム式だ。そして洗面所にはステンレスのボトルのアメニティも用意されている。改めて見ても本当に洗練されているコーナーだ。
「なんか、ホテルみたいだ。ここ」
「ふっそうか?バスルームにも拘ったからな」
「へぇどんなところに?」
「シーツが洗える大きな洗濯機とかか」
「また!もう言うなよ」
「ははっ!」
丈が朝日を背負って快活に笑っていた。
なぁ……俺たちこんな風に笑いあったことあるか。
こんなに明るい場所で、こんな大きな笑い声をあげたことあったか。
思わず丈の笑顔に見惚れてしまった。
きっと、この開放的な空間のおかげだ。
俺たちの心はまた一つ開いていく。
そんな満ち足りた朝だった。
「さぁそろそろあがれ、のぼせるぞ。また」
「うん、一緒に朝食を食べよう」
「あぁ、一緒に」
「あ……丈は?」
「もう浴びた。私は朝食の準備をしてくるよ」
「分かった」
また一緒に入ろうと言われるのかと思ったが、流石にそこまでの時間はないようだ。俺がベッドでまどろんでいるうちに、丈は済ましたようだ。
それにしても相変わらず……俺は朝が弱い。低血圧なのか目覚めてもなかなかすぐに躰が動かない。
だが今は俺の事よりも……丈の事が気になるな。
昨日病院で働いている姿を見て、想像以上に激務だと分かった。それなのに俺のために朝食を作ったり、風呂の準備をしてくれたり……甲斐甲斐しくされて、少し居たたまれないよ。
俺も、もう少し役に立つ人間になりたい。
「ほら、これを着て」
丈に渡されたバスローブを羽織りバスルームへ行くと、ブルーグレーのタイルが一面に敷かれていて、浴槽の横には大きな窓があった。
どこまでも解放感のある造りだ。
窓の向こうには月影寺の緑の風景が溢れ、朝陽が木漏れ日となり降り注ぐ庭は、今は静寂に包まれている。
ここでは俺は、誰の目も気にしなくていい。
俺が俺らしく過ごせる場所だ。
そんな場所を、丈が作ってくれた。
浴槽の真横にはガラス張りのシャワールーム。
昨夜も使ったのに、慌てていたのかよく覚えていない。降り注ぐシャワーの水量を変化でき、まるで柔らかい雨に打たれているようだったことを思い出した。
床のブルーグレーのタイルとお揃いのバスタオルも用意されており、しかも浴槽はご丁寧に泡風呂になっていた。
「丈の奴、どこまでも徹底しているな」
一緒に暮らすようになって、丈が意外とロマンチストでマメだってことに気が付いた。俺のために何かをするのが本当に好きみたいだから、俺も甘えてしまうよ。
「ふぅ……」
真っ白な弾ける泡に躰を包まれると、気持ち良かった。
「すごい……泡が躰に吸い付くようだ」
ふと自分の胸元を見ると、昨夜散々弄られた乳首が充血したように赤くなっているのが見え、羞恥に震えた。
丈がここばかり吸うから、まだこんなにぷっくりしてしまって恥ずかしい。
男なのにこんな場所で感じてしまうことも、恥ずかしい。でもこんなになるまで丈に愛された証だと思うと、それも悪くないかもと、つい自分の手で触れてしまった。
「洋、それ……誘っているのか」
「え! わっ! なっ何でもない」
慌てて手を胸元から離して、泡の中に躰をブクブクと沈めた。
「なんだよ!いきなり」
「洗濯しようと思ってな。しかし濃いシーツだと白い汚れが目立つもんだな。失敗したかな」
「ばっ……馬鹿!」
浴槽の向かい側で丈がしゃがみ込んで、シーツを洗濯機に放り込んでいた。
外国製の大きなドラム式だ。そして洗面所にはステンレスのボトルのアメニティも用意されている。改めて見ても本当に洗練されているコーナーだ。
「なんか、ホテルみたいだ。ここ」
「ふっそうか?バスルームにも拘ったからな」
「へぇどんなところに?」
「シーツが洗える大きな洗濯機とかか」
「また!もう言うなよ」
「ははっ!」
丈が朝日を背負って快活に笑っていた。
なぁ……俺たちこんな風に笑いあったことあるか。
こんなに明るい場所で、こんな大きな笑い声をあげたことあったか。
思わず丈の笑顔に見惚れてしまった。
きっと、この開放的な空間のおかげだ。
俺たちの心はまた一つ開いていく。
そんな満ち足りた朝だった。
「さぁそろそろあがれ、のぼせるぞ。また」
「うん、一緒に朝食を食べよう」
「あぁ、一緒に」
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