重なる月

志生帆 海

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第2部 10章

番外編 安志×涼 「乾いた心」 12

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 乾いた躰と乾いた心。

 とにかく今の僕たちには、飢えを解消するためにお互いが必要だ。

 安志さんに求められ、僕も安志さんを求め、渇きを二人で癒していく。

 安志さんの背中に精一杯手を伸ばし、その腕に力を込め求めるように抱きしめた。

 安志さんが嬉しそうに微笑んでくれる。それが僕も嬉しい。

 安志さんの裸の胸と僕の胸をぴったりと合わせて、一つに重なり、それから再び唇も重ねた。

 舌は滑らかに僕の中へやってきて、僕を愛撫する。

 僕の背中を安志さんの逞しい手が辿っていく。僕も安志さんの肩甲骨をなぞるように触れていく。

 長い時間キスをした。

 その熱いキスによって、僕のものははっきりと屹立してしまった。もちろん安志さんもだ。

「ふっお互い限界だな」
「んっ」

 長いキスをしている間……安志さんの指が僕の中へやって来てずっと蠢いていた。受け入れられるようになるまで、ゆっくりと広げられていく。一カ月ぶりなのでまた入り口が硬くなってしまったようだった。

「まるで初めてみたいに固く閉じているな……ここ」
「うっ……」

 快感を生む場所があるのに、なかなか触れてもらえなくてもどかしい。

「安志さんっ……もう、お……ねがい…」
「ここ?」

 突然、指がその場所を押すと甲高い声が上がってしまった。

「あ、ああぁ……」

 甘い声がどんどん出て来てしまう。もう止まらないよ。

「まだだよ」

 突然指がそこを離れると、僕の先端からとろりと滴が垂れた。

「なんで……? 今日は……意地悪だ」
「求めて欲しい。もっともっと」

 また一番感じる部分を外した刺激を、増やされた指で受ける。もう焦れてしまう。堪え切れず僕はそっと自分を慰めようと前に手を伸ばした。

「涼、駄目だよ」

 僕の手を安志さんは掴んで、頭上に固定してしまう。

「あっ……やだ…もうイキたいっ」
「ギリギリまで我慢してみて」

 そう言いながら安志さんが僕の首筋に吸い付き、痕がつかないように優しく吸われた。そこはとても敏感な場所だった。

「あ……んじ、さん…」

 顎がかくんと上がって、無防備にすべてをさらしてしまう。

「そろそろか」

 両脚を開かれ、背中にはクッションを差し込まれた。

 腰があがり、何もかも丸見えだ。

 とても卑猥な姿。

 でも愛し合う僕たちには関係ない。

 互いに求め合う。

 ただそれだけの行為に耽る。

 潤滑油が丁寧に塗り込まれ、もう一度指先が潜り込み確認するようにぐるりと蠢く。腰をしっかり掴まれて、一気に挿入を受け入れることとなった。

「んっ!くっ……」

 もう……何度も躰を重ねているけれども、どうしてもこの瞬間だけは慣れない。衝撃に耐えていると、耳元で唇が触れる程の距離で囁かれ、腰が震える。

「涼ありがとう。愛している」

 飾らないストレートな言葉が、じんと躰に響く。

「あんじさん、僕も……僕もあなたが好き」
「嬉しいよ」

 迸る安志さんの汗。

 僕のものに手を絡めてくれ、適度の刺激を与えてもらう。

「イクか……」

 一緒に上りつめるように誘われる。

「んっ……んっん」

 その後はもう嵐のように揺らされ、ひっきりなしに啼かされて……わずか一時間とは思えないほどの濃密な時間を、味わうことになった。

 互いに果てた後は、確かに僕たちの飢えは収まっていた。

 乾いた心は満たされた。

 でもきっとまた……すぐに乾いてしまうだろう。

 その時はまた求め合えばいい。

 水を吸収し植物が成長するように、僕たちの愛も育っていけばいい。




「乾いた心」了









****

「乾いた心」は今回までですが、番外編の後日談的なものが続きます。
もう少しお付き合いください♪

志生帆 海より
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