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第2部 10章
番外編 安志×涼 「乾いた心」6
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「時計?」
彼女の視線は、俺の腕時計に釘付けだった。
そして俺は、彼女の横顔に釘付けだった。
「涼の!」
(涼の時計のモデルの彼女か!)
俺もつられて涼の名前を出しそうになってので、慌ててひっこめた。
「ええぇ~ずるい! その時計どうしたんですか? それ涼のプレミアムモデルで滅多に手に入らないのに」
「え? あ……そうなんですか」
涼のプレミアムモデル?
まずいな。この時計そんなに貴重なものだったのか。
「そうよ! 今日涼もしていたし」
やっぱり彼女はあの時計のモデルの女の子だ。しかも今日仕事で涼と会っていたのか。変な緊張が走るな。散々広告を見ていたくせに、涼にばかり目が言って、俺としたことが失念していた。
しかし女の子って化粧によって随分雰囲気が変わるもんだな。
「それ限定100個だったのに……不思議だわぁ。普通にはなかなか買えないはずなのに~私も涼にすぐに頼んだけど、もう予約の時点で完売だから、無理って言われたのに」
げっ……なんか……すごい剣幕だ。
どう言い訳しようかと焦っていると、しどろもどろになっていると助け船が!
喫茶店にノートパソコンを抱えながら濃紺のスーツ姿の若い男性が入って来た。業界っぽいラフな姿の客が多いなか、彼のノーブルな雰囲気は人目をひくものだった。そして眼鏡の似合う知的で物腰の柔らかな印象の男性に見覚えがあった。
そうだ! あの陸さんの親友の遠野 空さんだ。
会うのは本当に久しぶりで、洋の結婚式以来だから半年以上経っている。彼とは彼の親友の陸さんが、洋の義父の息子だったということもあり、いろんな縁で繋がっている。
「空さん!」
「えっあ……鷹野くんじゃないですか。久しぶりですね。ん? サオリちゃんと何故ここに? 」
「あー空さんだ!今日はすごくラッキーだわ、サオリの好きな人にばかり会えるなんて」
「ふっ二人は面識が?」
「あぁサオリちゃんはうちの雑誌の専属モデルだから」
「あぁなるほど」
「あー空さん、どうしてボディガードの彼を知っているの?」
「え? あぁ、ちょっと友人の知り合いで」
「ふぅん、それよりこの時計見て。涼の限定モデルで入手困難だったはずなのに、このボディガードさんがしているの、ずるいよねぇ」
俺の腕を掴んで、ぐいぐい時計を空さんに見せるから恐ろしい。
****
「……あの、さっきはいろいろとありがとうございました」
サオリちゃんが撮影の時間だと呼ばれ消えてくれたので、ほっとした。
「いや、彼女は結構強引だからね」
「この時計……まさかそんなにレアだとは知らなくて」
「そうだ。僕のツテで買ったことにしたらいいよ。雑誌の編集者だから、ちょっと苦しい言い訳だけど、なんとか信じてくれて良かったね」
「はぁ、本当にすいません。この時計は、この仕事でするのはやめておきます」
「……そうだね」
空さんは辺りを注意深く見まわした。
「気を付けて。涼くんは今すごい人気がうなぎ上りで、スキャンダルは致命的だから」
「はいっ」
緊張が走った。
その通りだと思った。一気に気が引き締まる。でも、その後彼はふっと優しい笑みを浮かべた。
「でも応援している」
あ……空さんも、もしかして。
はっきり洋から聞いたわけじゃないが…あの時、洋の結婚式に陸さんと一緒にやってきて、陸さんの空さんを見つめる眼がとても温かくいい雰囲気だった。
もしかして…そうなのか。
二人は親友であって、恋人なのか。
彼女の視線は、俺の腕時計に釘付けだった。
そして俺は、彼女の横顔に釘付けだった。
「涼の!」
(涼の時計のモデルの彼女か!)
俺もつられて涼の名前を出しそうになってので、慌ててひっこめた。
「ええぇ~ずるい! その時計どうしたんですか? それ涼のプレミアムモデルで滅多に手に入らないのに」
「え? あ……そうなんですか」
涼のプレミアムモデル?
まずいな。この時計そんなに貴重なものだったのか。
「そうよ! 今日涼もしていたし」
やっぱり彼女はあの時計のモデルの女の子だ。しかも今日仕事で涼と会っていたのか。変な緊張が走るな。散々広告を見ていたくせに、涼にばかり目が言って、俺としたことが失念していた。
しかし女の子って化粧によって随分雰囲気が変わるもんだな。
「それ限定100個だったのに……不思議だわぁ。普通にはなかなか買えないはずなのに~私も涼にすぐに頼んだけど、もう予約の時点で完売だから、無理って言われたのに」
げっ……なんか……すごい剣幕だ。
どう言い訳しようかと焦っていると、しどろもどろになっていると助け船が!
喫茶店にノートパソコンを抱えながら濃紺のスーツ姿の若い男性が入って来た。業界っぽいラフな姿の客が多いなか、彼のノーブルな雰囲気は人目をひくものだった。そして眼鏡の似合う知的で物腰の柔らかな印象の男性に見覚えがあった。
そうだ! あの陸さんの親友の遠野 空さんだ。
会うのは本当に久しぶりで、洋の結婚式以来だから半年以上経っている。彼とは彼の親友の陸さんが、洋の義父の息子だったということもあり、いろんな縁で繋がっている。
「空さん!」
「えっあ……鷹野くんじゃないですか。久しぶりですね。ん? サオリちゃんと何故ここに? 」
「あー空さんだ!今日はすごくラッキーだわ、サオリの好きな人にばかり会えるなんて」
「ふっ二人は面識が?」
「あぁサオリちゃんはうちの雑誌の専属モデルだから」
「あぁなるほど」
「あー空さん、どうしてボディガードの彼を知っているの?」
「え? あぁ、ちょっと友人の知り合いで」
「ふぅん、それよりこの時計見て。涼の限定モデルで入手困難だったはずなのに、このボディガードさんがしているの、ずるいよねぇ」
俺の腕を掴んで、ぐいぐい時計を空さんに見せるから恐ろしい。
****
「……あの、さっきはいろいろとありがとうございました」
サオリちゃんが撮影の時間だと呼ばれ消えてくれたので、ほっとした。
「いや、彼女は結構強引だからね」
「この時計……まさかそんなにレアだとは知らなくて」
「そうだ。僕のツテで買ったことにしたらいいよ。雑誌の編集者だから、ちょっと苦しい言い訳だけど、なんとか信じてくれて良かったね」
「はぁ、本当にすいません。この時計は、この仕事でするのはやめておきます」
「……そうだね」
空さんは辺りを注意深く見まわした。
「気を付けて。涼くんは今すごい人気がうなぎ上りで、スキャンダルは致命的だから」
「はいっ」
緊張が走った。
その通りだと思った。一気に気が引き締まる。でも、その後彼はふっと優しい笑みを浮かべた。
「でも応援している」
あ……空さんも、もしかして。
はっきり洋から聞いたわけじゃないが…あの時、洋の結婚式に陸さんと一緒にやってきて、陸さんの空さんを見つめる眼がとても温かくいい雰囲気だった。
もしかして…そうなのか。
二人は親友であって、恋人なのか。
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