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第2部 10章
引き継ぐということ 29
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「洋さん? 洋さんっ」
薙くんが必死に呼ぶ声が、随分遠くに聴こえる。
「なっ……」
必死に声を出そうとするが、喉にな何かが詰まったように息苦しくて声が出ない。足元へと血が下がり頭がくらくらとして、ガクガクと震える躰が制御できない。目を開けても閉じても、そこには闇しかない。
薙くんが俺の腕に触れた時、急に怖くなって跳ね飛ばしてしまった。
「やっ!」
暫くして再び人の気配がして、闇雲に暴れたような気がする。
次の瞬間、躰がふわりと宙に浮いた。
この匂いは……丈の香りだ。
途端にほっとして……意識をカクンと失ってしまった。
****
目が覚めると白く明るい世界で、和室の丸い電灯が白々しく頭上で光っていた。
「んっ」
「洋、大丈夫か」
枕元に座っていたのは、俺の恋人の丈だ。
「丈……」
ほっとした。手を伸ばせばちゃんと握り返してくれ、俺の上半身を起こしてくれた。俺は丈の肩口に頭を乗せ、縋るように抱きついてしまった。
「どうした? もう大丈夫か。嵐になってきたので早めに帰宅して良かったよ。停電していたな」
「俺……どうして」
「玄関先で薙くんと会ったよ。彼が洋が倒れていることを教えてくれてな……きっと誰か助けを呼ぼうと必死だったんだな、泣きそうな必死な眼をしていたよ」
「そうだったのか、薙くんはどこ? 」
寝かされていた和室には見当たらない。
「あぁ腹ペコらしくて、とりあえず作ってあったおにぎりを食べている」
「そうなんだ……育ちざかりだもんな」
「私も久しぶりに洋のおにぎりが食べれるなんて、嬉しいよ」
丈が俺の背中を擦りながら優しく話しかけてくれる。すっかり気持ちも吐き気も、落ち着いていた。
「何かが引き金でパニックを起こすことがあるんだ。洋は暗闇は駄目だな。リフォームでは照明にも拘ったから大丈夫だ。その点は安心しろ。」
「丈の匂い……とにかく落ち着くよ。それにしても、こんな風になったのは初めてで自分でも驚いた。もう終わった忘れたことなのに、自分でも分からない」
「潜在的なものだ。もう気にするな」
「うん……ありがとう。あっそうだ」
「なんだ?」
「あの……トンカツ揚げてくれる?」
キョトンとした丈の顔に微笑み返すと、丈も破顔した。
「やれやれ、私は洋を少し甘やかしすぎたか。薙くんの手前、もう少し料理を覚えるといい」
****
離れの茶室……ここは翠と愛を交歓する場所だ。
近くで轟く雷の音が一際大きく響いた後に、茶室の脇の小さな灯りがすべて消えてしまった。
停電か。
だがすでにもう俺達は暗黒の世界にいるのだから、構わない。
ただ求めるだけ、与えるだけ。
翠の胸に吸い付き、舌で尖りを嬲るように転がすと、翠の薄い胸が上下し、我慢できないといった風情の喘ぎ声が漏れて来た。
下肢を手をやれば、辛そうな程、ぎちぎちにたかまっていた。そこを持ち上げ、指で輪をつくり擦るように扱いてやる。
「ん…ん、流、もう駄目だ。出てしまう。手を退けて」
「もう少しで出そうか」
翠が涙目でコクコクと頷く。
あぁなんて可愛い顔をするんだよ。
俺は手は放し、そのまま屹立を咥えこんでやった。
「んあっ!! なっ……なんで」
「離してやったろう」
「違う……そうじゃないっ! あぁっ……やめろ! 駄目だ」
薙くんが必死に呼ぶ声が、随分遠くに聴こえる。
「なっ……」
必死に声を出そうとするが、喉にな何かが詰まったように息苦しくて声が出ない。足元へと血が下がり頭がくらくらとして、ガクガクと震える躰が制御できない。目を開けても閉じても、そこには闇しかない。
薙くんが俺の腕に触れた時、急に怖くなって跳ね飛ばしてしまった。
「やっ!」
暫くして再び人の気配がして、闇雲に暴れたような気がする。
次の瞬間、躰がふわりと宙に浮いた。
この匂いは……丈の香りだ。
途端にほっとして……意識をカクンと失ってしまった。
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目が覚めると白く明るい世界で、和室の丸い電灯が白々しく頭上で光っていた。
「んっ」
「洋、大丈夫か」
枕元に座っていたのは、俺の恋人の丈だ。
「丈……」
ほっとした。手を伸ばせばちゃんと握り返してくれ、俺の上半身を起こしてくれた。俺は丈の肩口に頭を乗せ、縋るように抱きついてしまった。
「どうした? もう大丈夫か。嵐になってきたので早めに帰宅して良かったよ。停電していたな」
「俺……どうして」
「玄関先で薙くんと会ったよ。彼が洋が倒れていることを教えてくれてな……きっと誰か助けを呼ぼうと必死だったんだな、泣きそうな必死な眼をしていたよ」
「そうだったのか、薙くんはどこ? 」
寝かされていた和室には見当たらない。
「あぁ腹ペコらしくて、とりあえず作ってあったおにぎりを食べている」
「そうなんだ……育ちざかりだもんな」
「私も久しぶりに洋のおにぎりが食べれるなんて、嬉しいよ」
丈が俺の背中を擦りながら優しく話しかけてくれる。すっかり気持ちも吐き気も、落ち着いていた。
「何かが引き金でパニックを起こすことがあるんだ。洋は暗闇は駄目だな。リフォームでは照明にも拘ったから大丈夫だ。その点は安心しろ。」
「丈の匂い……とにかく落ち着くよ。それにしても、こんな風になったのは初めてで自分でも驚いた。もう終わった忘れたことなのに、自分でも分からない」
「潜在的なものだ。もう気にするな」
「うん……ありがとう。あっそうだ」
「なんだ?」
「あの……トンカツ揚げてくれる?」
キョトンとした丈の顔に微笑み返すと、丈も破顔した。
「やれやれ、私は洋を少し甘やかしすぎたか。薙くんの手前、もう少し料理を覚えるといい」
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離れの茶室……ここは翠と愛を交歓する場所だ。
近くで轟く雷の音が一際大きく響いた後に、茶室の脇の小さな灯りがすべて消えてしまった。
停電か。
だがすでにもう俺達は暗黒の世界にいるのだから、構わない。
ただ求めるだけ、与えるだけ。
翠の胸に吸い付き、舌で尖りを嬲るように転がすと、翠の薄い胸が上下し、我慢できないといった風情の喘ぎ声が漏れて来た。
下肢を手をやれば、辛そうな程、ぎちぎちにたかまっていた。そこを持ち上げ、指で輪をつくり擦るように扱いてやる。
「ん…ん、流、もう駄目だ。出てしまう。手を退けて」
「もう少しで出そうか」
翠が涙目でコクコクと頷く。
あぁなんて可愛い顔をするんだよ。
俺は手は放し、そのまま屹立を咥えこんでやった。
「んあっ!! なっ……なんで」
「離してやったろう」
「違う……そうじゃないっ! あぁっ……やめろ! 駄目だ」
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