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第2部 10章
引き継ぐということ 16
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階段を勢いよく降りきった所で急に人が過ったので、思いっきりぶつかってしまった。すぐにガシャンっと陶器の割れる音がした。
「いてっ!」
「痛っ」
誰だ? 暗くて相手の顔がよく見えないと目を凝らすと、突然ぱっと灯りがついて、流さんが駆け寄って来た。
「洋くん、どうした?」
「あっすみません。お皿を割ってしまって」
「皿なんていいが、怪我はないか」
「ええ大丈夫です。俺がぼんやりしていたから……あっ君が薙くん? ごめんね、驚かせて」
オレがぶつかった男性、いや男性と呼ぶには美しすぎる顔の人が、花のように笑った。一瞬見惚れてしまったことに自分が驚いた。世の中にはこんな男の人がいるんだと思った。
「……あんた誰? 」
どうやら背格好からして、父さんの一番下の弟の丈さんではなさそうだ。といってもオレは丈さんの顔なんて記憶にないが。とにかくあまりにタイプが違う人の登場に驚いた。
「あ……えっと」
彼が言い淀んでいると、流さんが横から口を出した。
「こいつは、洋。俺んちに最近養子に来たから、まぁ弟だ」
「流さんありがとうございます。あの俺は洋といいます。薙くんどうぞよろしくね。その服、似合っているね」
「あ? あぁ」
あっそうか。この服や家具を用意してくれた人なのか。そう思うと、まぁ悪い気はしなかった。センスが良いのは認めてやる。そんな風に偉そうに心の中で思ってしまった。
それから促されるがままに食卓に座り、メンバーを見回した。
父さん。
流さん。
そして流さんの横に座っているのが父さんたちの弟の丈さんか。へぇ少し流さんに似ているな。医者だと聞いていた。そして丈さんと話しているのが、さっきの洋って人。
なんでこの人はわざわざ養子に来たんだ?
そんな話一言も父さんから聞いてない。
でも父さんたちよりはずっと若そうだ。
大学生くらいなのかな……年齢不詳だ。
それにしても男ばかりの食卓なのに、朝食が旅館みたいに豪華だった。
朝から焼き魚に味噌汁に茶碗蒸しまで。これ一体誰が作っているんだよ。
分からないことや疑問も不満も多いけれども、ぐううと腹が鳴ったので、とにかく無言で頬張った。
****
離れの部屋に戻り出勤の仕度をしている丈に、話かけた。
「なぁ丈、俺のこと、どう説明したらいい? 幼い薙くんをいざ前にしたら、やっぱり説明しようがなかったよ」
やっぱり同性で愛し合っているなんて、まだ14歳の子供に言う内容じゃないと、薙くんの意志の強そうな瞳を見て思ってしまった。
「洋、そんなに心配するな。今は訳あって養子に入った弟でいいじゃないか」
「だが本当のことを知った時のショックを考えると」
「私も薙とはほぼ初対面で、まだどんな性格をしているのか全く分からない。結構意志が強そうな子だ。あまり一度に驚かせず様子を見よう。さぁもう行くよ」
丈の手が腰にまわって来る。
キスの時間だ。
カーテンも襖もしまっているか思わず確認してしまった。
そして少し背伸びして俺の方からキスをする。チュっと軽いキス。目を開けると丈が嬉しそうに笑っていた。
「洋のキスは……いつまでたっても慎ましい」
もう一度腰を抱かれ、今度は丈からのキスを受ける番だ。撫でるように唇を舐められ、堪らず口を開くとすかさず舌が中へ入って来て、震える舌を誘い出される。
朝から腰が砕けそうになる濃厚なキスだ。
「んっ……はぁ…」
「洋、その声はやめろ、止まらなくなるよ」
「だが……」
もう行く時間なのに、俺達はキスを止めることが出来ない。
「いてっ!」
「痛っ」
誰だ? 暗くて相手の顔がよく見えないと目を凝らすと、突然ぱっと灯りがついて、流さんが駆け寄って来た。
「洋くん、どうした?」
「あっすみません。お皿を割ってしまって」
「皿なんていいが、怪我はないか」
「ええ大丈夫です。俺がぼんやりしていたから……あっ君が薙くん? ごめんね、驚かせて」
オレがぶつかった男性、いや男性と呼ぶには美しすぎる顔の人が、花のように笑った。一瞬見惚れてしまったことに自分が驚いた。世の中にはこんな男の人がいるんだと思った。
「……あんた誰? 」
どうやら背格好からして、父さんの一番下の弟の丈さんではなさそうだ。といってもオレは丈さんの顔なんて記憶にないが。とにかくあまりにタイプが違う人の登場に驚いた。
「あ……えっと」
彼が言い淀んでいると、流さんが横から口を出した。
「こいつは、洋。俺んちに最近養子に来たから、まぁ弟だ」
「流さんありがとうございます。あの俺は洋といいます。薙くんどうぞよろしくね。その服、似合っているね」
「あ? あぁ」
あっそうか。この服や家具を用意してくれた人なのか。そう思うと、まぁ悪い気はしなかった。センスが良いのは認めてやる。そんな風に偉そうに心の中で思ってしまった。
それから促されるがままに食卓に座り、メンバーを見回した。
父さん。
流さん。
そして流さんの横に座っているのが父さんたちの弟の丈さんか。へぇ少し流さんに似ているな。医者だと聞いていた。そして丈さんと話しているのが、さっきの洋って人。
なんでこの人はわざわざ養子に来たんだ?
そんな話一言も父さんから聞いてない。
でも父さんたちよりはずっと若そうだ。
大学生くらいなのかな……年齢不詳だ。
それにしても男ばかりの食卓なのに、朝食が旅館みたいに豪華だった。
朝から焼き魚に味噌汁に茶碗蒸しまで。これ一体誰が作っているんだよ。
分からないことや疑問も不満も多いけれども、ぐううと腹が鳴ったので、とにかく無言で頬張った。
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離れの部屋に戻り出勤の仕度をしている丈に、話かけた。
「なぁ丈、俺のこと、どう説明したらいい? 幼い薙くんをいざ前にしたら、やっぱり説明しようがなかったよ」
やっぱり同性で愛し合っているなんて、まだ14歳の子供に言う内容じゃないと、薙くんの意志の強そうな瞳を見て思ってしまった。
「洋、そんなに心配するな。今は訳あって養子に入った弟でいいじゃないか」
「だが本当のことを知った時のショックを考えると」
「私も薙とはほぼ初対面で、まだどんな性格をしているのか全く分からない。結構意志が強そうな子だ。あまり一度に驚かせず様子を見よう。さぁもう行くよ」
丈の手が腰にまわって来る。
キスの時間だ。
カーテンも襖もしまっているか思わず確認してしまった。
そして少し背伸びして俺の方からキスをする。チュっと軽いキス。目を開けると丈が嬉しそうに笑っていた。
「洋のキスは……いつまでたっても慎ましい」
もう一度腰を抱かれ、今度は丈からのキスを受ける番だ。撫でるように唇を舐められ、堪らず口を開くとすかさず舌が中へ入って来て、震える舌を誘い出される。
朝から腰が砕けそうになる濃厚なキスだ。
「んっ……はぁ…」
「洋、その声はやめろ、止まらなくなるよ」
「だが……」
もう行く時間なのに、俺達はキスを止めることが出来ない。
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