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完結後の甘い話の章
『蜜月旅行 98』終わりは始まり
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俺の上に跨がせていた翠の躰を引き寄せ、シーツに沈める。
「もういいだろう。今度は俺の番だ」
「んっいいよ……流……来てくれ」
白いバスローブの襟元は、もう大きく緩んでいた。腰紐を抜き取り、まるで大切な贈り物の包みを開くようにバスローブを肩から脱がせた。
昨日、一昨日とつぶさに見たはずの翠の裸体が現れる。翠はもう何も隠さず、俺のすることに素直に従ってくれる。
いや目元がうっすら赤いのだから、やはり恥ずかしい気持ちがあるのだろうが。
それにしても今日は名残惜しい気持ちの方が勝っているな。北鎌倉に帰ったら、きっと翠はこんな風に乱れてくれない。
息子の薙を引き取るのは間もなくであり、一つ屋根の下に息子がいる状態では、翠は心をセーブしてしまうのが目に見えるようだ。
次は、次は……いつになるのか。
俺の下で悶えてくれるのは、いつになる?
いや今は余計なことは考えないでおこう。
バスローブを床へと蹴り落して、俺は翠の躰を自分の躰に巻き込むようにして抱きしめ、再び深い口づけを施した。
「ふっ……」
翠の口元から淡い息が漏れて来る。翠はほっそりとした腕を、俺の背中に回してくれる。
俺が求められている。
そのことに、ひしひしと喜びを感じる。
翠の、男のものとは思えない程の甘い息遣いが肩を掠める。もっともっと感じて欲しくて、脇のラインにそって手を這わして抱きしめる。
くすぐったいのか。気持ちがいいのか。
「んっ……」
翠は魚のように躰をくねらしていくので、俺は追いかける。
俺はもうとことん翠の躰に溺れているな。
本当に翠の躰を一度味わったら、忘れることなんて出来ない。
それほど翠の躰は抱き心地が良かった。
こんな時に何故と思うのに、過去に抱いた何人かの男のことを思い出してしまった。
流石にこの歳になるまで、性欲を夢想のまま終わらせることは出来なかった。その日限りで男を抱いた事があるのは認めよう。今考えると、俺は翠にどこか似た面影のある人ばかり抱いた気がする。だが虚しいだけだった。悪いことをした。相手にも翠にも……俺にも、どこか投げやりな時期が多かったのだ。
だがもう俺は二度と他の奴には触れないし、翠も俺だけを見て欲しい。
「……そうか……流は、僕以外の……他の男性を抱いたことがあるんだね」
頭の中が見透かされているような翠の質問に戸惑った。
翠の瞳は、少し潤んでいた。
「悪い……そういう時期もあった。だが、もう二度と抱かない。もう翠だけしか抱けない」
「うん……大丈夫だ。流を責めているわけではない。僕だって結婚して子供だって設けた身だ。でももう僕も……流しか、いらない」
少し嫉妬を含んだような言い方にも、愛しさが募る。
何て長い道のりだったのか。
俺達気が付けば、38歳と36歳になっていた。
それでも初めて恋した人を抱けることに、何もかも新鮮な気持ちで満ちていた。
翠の躰を横抱きにして、ローションを付けた指で解し始めた。翠の躰は緊張で強張っていくので、背後から胸元に手をまわし、小さな乳首を指の腹で捏ねてやる。
「あっ……あ…」
感じた声があがり、ほっとする。
今宵は時間をかけて、ゆっくりと抱きたい。そんな願いから、つい翠を焦らすような動きをしてしまう。
翠が感じる場所をわざと避けて、愛撫する。一番触って欲しいところは掠める程度で、じらしていく。
「んっ……流……なんで? ちゃんと触って……」
「今日はゆっくり抱きたいんだよ。最後の夜だろう。翠はそう何度もイケナイからまだイクな」
「そんな無理だ。それに……」
「それに?」
「最後の夜じゃないだろう?」
「あぁそうだ。そうだけど、こんなにゆっくりと時間をかけて声も気にせずに抱けるのはそうないだろう? だからゆっくりやろう」
たまらなくなった翠の手が、自分のモノを握ろうとするのを阻止し、その手を恋人繋ぎでシーツに絡めとる。
「あっ……ううっ……」
翠は眉根を寄せ、苦し気な声をあげた。同時にそれは縋るような甘えるような声でもあった。その声に反応して、俺の下半身は限界まで張り詰めていく。
「う……苦しっ……もうっ」
翠が苦し気にかくんと顎を反らす。そんな事したら……ほっそりとした首元が露わになって俺を欲情させるだけなのに、翠は何も分かってない。
この無自覚なところすらも、愛おしい。
「好きだ……翠」
愛の言葉は惜しまない。
もう何も恥ずかしいものはないのだから。
好きな人を好きだといって何が悪い。
愛を告げる言葉は口に出して、初めて意味を成す。
「もういいだろう。今度は俺の番だ」
「んっいいよ……流……来てくれ」
白いバスローブの襟元は、もう大きく緩んでいた。腰紐を抜き取り、まるで大切な贈り物の包みを開くようにバスローブを肩から脱がせた。
昨日、一昨日とつぶさに見たはずの翠の裸体が現れる。翠はもう何も隠さず、俺のすることに素直に従ってくれる。
いや目元がうっすら赤いのだから、やはり恥ずかしい気持ちがあるのだろうが。
それにしても今日は名残惜しい気持ちの方が勝っているな。北鎌倉に帰ったら、きっと翠はこんな風に乱れてくれない。
息子の薙を引き取るのは間もなくであり、一つ屋根の下に息子がいる状態では、翠は心をセーブしてしまうのが目に見えるようだ。
次は、次は……いつになるのか。
俺の下で悶えてくれるのは、いつになる?
いや今は余計なことは考えないでおこう。
バスローブを床へと蹴り落して、俺は翠の躰を自分の躰に巻き込むようにして抱きしめ、再び深い口づけを施した。
「ふっ……」
翠の口元から淡い息が漏れて来る。翠はほっそりとした腕を、俺の背中に回してくれる。
俺が求められている。
そのことに、ひしひしと喜びを感じる。
翠の、男のものとは思えない程の甘い息遣いが肩を掠める。もっともっと感じて欲しくて、脇のラインにそって手を這わして抱きしめる。
くすぐったいのか。気持ちがいいのか。
「んっ……」
翠は魚のように躰をくねらしていくので、俺は追いかける。
俺はもうとことん翠の躰に溺れているな。
本当に翠の躰を一度味わったら、忘れることなんて出来ない。
それほど翠の躰は抱き心地が良かった。
こんな時に何故と思うのに、過去に抱いた何人かの男のことを思い出してしまった。
流石にこの歳になるまで、性欲を夢想のまま終わらせることは出来なかった。その日限りで男を抱いた事があるのは認めよう。今考えると、俺は翠にどこか似た面影のある人ばかり抱いた気がする。だが虚しいだけだった。悪いことをした。相手にも翠にも……俺にも、どこか投げやりな時期が多かったのだ。
だがもう俺は二度と他の奴には触れないし、翠も俺だけを見て欲しい。
「……そうか……流は、僕以外の……他の男性を抱いたことがあるんだね」
頭の中が見透かされているような翠の質問に戸惑った。
翠の瞳は、少し潤んでいた。
「悪い……そういう時期もあった。だが、もう二度と抱かない。もう翠だけしか抱けない」
「うん……大丈夫だ。流を責めているわけではない。僕だって結婚して子供だって設けた身だ。でももう僕も……流しか、いらない」
少し嫉妬を含んだような言い方にも、愛しさが募る。
何て長い道のりだったのか。
俺達気が付けば、38歳と36歳になっていた。
それでも初めて恋した人を抱けることに、何もかも新鮮な気持ちで満ちていた。
翠の躰を横抱きにして、ローションを付けた指で解し始めた。翠の躰は緊張で強張っていくので、背後から胸元に手をまわし、小さな乳首を指の腹で捏ねてやる。
「あっ……あ…」
感じた声があがり、ほっとする。
今宵は時間をかけて、ゆっくりと抱きたい。そんな願いから、つい翠を焦らすような動きをしてしまう。
翠が感じる場所をわざと避けて、愛撫する。一番触って欲しいところは掠める程度で、じらしていく。
「んっ……流……なんで? ちゃんと触って……」
「今日はゆっくり抱きたいんだよ。最後の夜だろう。翠はそう何度もイケナイからまだイクな」
「そんな無理だ。それに……」
「それに?」
「最後の夜じゃないだろう?」
「あぁそうだ。そうだけど、こんなにゆっくりと時間をかけて声も気にせずに抱けるのはそうないだろう? だからゆっくりやろう」
たまらなくなった翠の手が、自分のモノを握ろうとするのを阻止し、その手を恋人繋ぎでシーツに絡めとる。
「あっ……ううっ……」
翠は眉根を寄せ、苦し気な声をあげた。同時にそれは縋るような甘えるような声でもあった。その声に反応して、俺の下半身は限界まで張り詰めていく。
「う……苦しっ……もうっ」
翠が苦し気にかくんと顎を反らす。そんな事したら……ほっそりとした首元が露わになって俺を欲情させるだけなのに、翠は何も分かってない。
この無自覚なところすらも、愛おしい。
「好きだ……翠」
愛の言葉は惜しまない。
もう何も恥ずかしいものはないのだから。
好きな人を好きだといって何が悪い。
愛を告げる言葉は口に出して、初めて意味を成す。
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