693 / 1,657
完結後の甘い話の章
『蜜月旅行 75』明けゆく想い
しおりを挟む
あ……まずい。
注意されたばかりなのに、ずっと「翠」と呼び続けてしまった。
駄目だ、これじゃ。もっと気を引き締めていかないと。兄さんの覚悟を聞いてほっとしたのと同時に、胸に誓った。兄さんが守りたいものは、俺が守りたいものと同じなのだから、絶対に周囲に俺達の関係がバレないように気を配っていく。どんなことでも協力する。「兄さん」という、いつもの呼び方と丁寧な言葉遣いを決して忘れるな。
やがて丈と洋くんが戻ってくるようで、馬の蹄の音が遠くから聞こえて来た。
「兄さん……最後に一つだけ聴いてもいいですか」
「……なに?」
「その……躰はきつくないですか」
「んっ?躰って」
「だから……その昨夜の……」
「……あっ」
いつも澄ました兄さんの顔が、途端に火が付いたように赤く染まってしまった。だが本当は朝起きてすぐに聞きたかったことなんだ。
兄さんは男を受け入れるのは初めてだったから、躰はさぞかしきつい状態のはずだ。俺の方も、冷静に兄さんの躰を傷つけないように自制したつもりが、最後の方は何かがふり切れてしまっていた。
兄さんの後ろの初めては、俺のものだった。
そのことが本当に嬉しかった。
やはりあの時……最後までは……無事だったんだ。何もなかったのだ。
ずっと心配していたんだ。もしかして……と。
「……」
「えっ?小さすぎて聞こえませんよ」
兄さんが蚊の鳴くような声で何か喋った。
「だから……」
「なんです?ちゃんと話して下さい」
「その……い……痛かった」
あああ、やっぱり。
その言葉に頭を抱えてしまった。
そうだよな。俺は余裕なくて、指まではなんとかじっくりことを進められたのに、いざ挿入したら、兄さんの中があまりに熱くて蕩けるように気持ちよくて、初めてそこに男を受け入れた兄さんが痛がって泣いていたのに、もう途中で抜くことなんて出来なくて、半ば強引に進めてしまったことを認めざるを得ない。
「兄さん、すまなかった。理性ぶっ飛んだ」
「いいんだ……その……あれ位、耐えてみせる」
はっ?耐える?
いや……それはちょっと違うような……
「え?耐えてって……兄さん、あれは修行じゃないんだからっ」
「あっ、ははっ、……それもそうだな」
途端に面白そうに笑う兄さんの様子に拍子抜けした。
いや、でも翠らしいよ。そういうところ。
次はもっと気持ち良くしてやりたい。
俺のカタチを忘れないうちに、また抱きたい。
その言葉は、今は呑み込んでおいた。
兄さんには刺激が強すぎるだろうから。
注意されたばかりなのに、ずっと「翠」と呼び続けてしまった。
駄目だ、これじゃ。もっと気を引き締めていかないと。兄さんの覚悟を聞いてほっとしたのと同時に、胸に誓った。兄さんが守りたいものは、俺が守りたいものと同じなのだから、絶対に周囲に俺達の関係がバレないように気を配っていく。どんなことでも協力する。「兄さん」という、いつもの呼び方と丁寧な言葉遣いを決して忘れるな。
やがて丈と洋くんが戻ってくるようで、馬の蹄の音が遠くから聞こえて来た。
「兄さん……最後に一つだけ聴いてもいいですか」
「……なに?」
「その……躰はきつくないですか」
「んっ?躰って」
「だから……その昨夜の……」
「……あっ」
いつも澄ました兄さんの顔が、途端に火が付いたように赤く染まってしまった。だが本当は朝起きてすぐに聞きたかったことなんだ。
兄さんは男を受け入れるのは初めてだったから、躰はさぞかしきつい状態のはずだ。俺の方も、冷静に兄さんの躰を傷つけないように自制したつもりが、最後の方は何かがふり切れてしまっていた。
兄さんの後ろの初めては、俺のものだった。
そのことが本当に嬉しかった。
やはりあの時……最後までは……無事だったんだ。何もなかったのだ。
ずっと心配していたんだ。もしかして……と。
「……」
「えっ?小さすぎて聞こえませんよ」
兄さんが蚊の鳴くような声で何か喋った。
「だから……」
「なんです?ちゃんと話して下さい」
「その……い……痛かった」
あああ、やっぱり。
その言葉に頭を抱えてしまった。
そうだよな。俺は余裕なくて、指まではなんとかじっくりことを進められたのに、いざ挿入したら、兄さんの中があまりに熱くて蕩けるように気持ちよくて、初めてそこに男を受け入れた兄さんが痛がって泣いていたのに、もう途中で抜くことなんて出来なくて、半ば強引に進めてしまったことを認めざるを得ない。
「兄さん、すまなかった。理性ぶっ飛んだ」
「いいんだ……その……あれ位、耐えてみせる」
はっ?耐える?
いや……それはちょっと違うような……
「え?耐えてって……兄さん、あれは修行じゃないんだからっ」
「あっ、ははっ、……それもそうだな」
途端に面白そうに笑う兄さんの様子に拍子抜けした。
いや、でも翠らしいよ。そういうところ。
次はもっと気持ち良くしてやりたい。
俺のカタチを忘れないうちに、また抱きたい。
その言葉は、今は呑み込んでおいた。
兄さんには刺激が強すぎるだろうから。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる