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完結後の甘い話の章
『蜜月旅行 53』もう一つの月
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「へぇ……これはブルゴーニュ・ピノ・ノワール ですね」
丈がワインを口に含んでから呟いた。
なかなかやるな。でも俺は香りをかげば、飲まなくとも分かる。これは兄さんが大好きな銘柄だからな。
兄さんが好きなものは、いつだってすべて俺が好きなものになる。
「へぇ~お子様な丈もやっと味が分かるようになったのか」
「ちょっと流兄さん、もう揶揄うのはやめてください。その……洋の前では困ります」
幼少の頃から寡黙で、兄弟といってもどこか異質だった弟は、いつの間にか俺達の仲間になっていたようだ。最近はこいつを弄るのが楽しくて仕方がない。
ずっと無表情だったその顔には、喜怒哀楽がはっきりと浮かび、人間らしく柔軟さを持つようになって来ていた。全部洋くんのお陰なんだろう。
丈は本当に欲しいものを手に入れたのだ。俺も丈に続きたい。そう渇望している。
「ふーん、洋くんの前ではカッコつけたいって?」
洋くんがそんな俺達のやりとりをニコニコと楽し気に見つめている。
会話に加わりたそうな様子が可愛いな。洋くんは酒に弱いのか、既に頬が赤く染まり出していた。
「流さん、あの……少し聞いていいですか」
「何でも」
「丈の子供の頃の話を何かしてくださいよ。その……どんな子供だったのですか。もしかして異常に独占欲が強かったとか」
冗談交じりに笑う洋くんは、華やかな笑みを浮かべていた。
「あー?丈は気難しくてな、爺みたいだったよ」
「え!爺(じじい)って!」
「兄さん!兄さんこそいつだって大騒ぎして、いつも私より幼く見えましたよ」
「なんだと!こいつ!」
「洋、独占欲の塊は、流兄さんの方だぞ」
「ははっ、出来なかった兄弟喧嘩なら今からでも存分にどうぞ」
そんな様子を翠も嬉しそうに見ている。そっと誰にも気が付かれないように俺は翠の様子を伺った。
もう落ち着いたか……大丈夫か。今日は驚かせたよな。
とにかく早くこいつらを酔わして、爆睡させないと……先に進めない。そう思うと、丈と洋くんにワインを注ぐピッチが速くなる。
「まぁもっと飲めよ。洋くんもね」
「わぁ……もう飲めませんよ、俺すぐ眠くなっちゃうから」
「そうですよ。流兄さん、まだ洋は寝るわけにいかないからやめてくださいよ」
「なんでだ?」
「仕上げが残っているからですよ」
既にお互い酔い始めているのだろう。丈も俺も普段なら言わないところまで踏み込んでいる。
「お前、まだ抱くのか?」
「悪いですか」
「洋くんの躰も労わってやれよ、受け入れる方は大変なんだろう」
「何を、あっそうだ!昼間一体どこまで見たんですか、私達のこと」
「どこまでって……そりゃ白波にお前たちのものが……」
「あーーー!!!!もうやめてくださいっ」
洋くんが顔を真っ赤にして震えている。
「丈も、もういい加減にしろよ」
洋くんが珍しく丈の胸ぐらを掴んで揺すっているのが、なんだか全然迫力がなくて思わず噴き出した。
「ぷぷぷっ」
「流さんも流さんですよ!丈を調子にのせないでくださいよ。後で厄介なことになるんです!」
「おい、洋もう引っ張るな。着崩れてしまうだろう」
「はぁ丈はいつも余裕過ぎて、嫌になるよ」
洋くんがそれでも手を離さずに丈の浴衣をふざけて引っ張ると、袷が大きく緩んでしまった。その拍子に現れた丈の逞しい胸板の上に、静かに白く光るものを俺は見つけた。
胸がドキッとした。
躰がゾクッとした。
「お前、胸元に何を?」
「あ……これですか」
丈がワインを口に含んでから呟いた。
なかなかやるな。でも俺は香りをかげば、飲まなくとも分かる。これは兄さんが大好きな銘柄だからな。
兄さんが好きなものは、いつだってすべて俺が好きなものになる。
「へぇ~お子様な丈もやっと味が分かるようになったのか」
「ちょっと流兄さん、もう揶揄うのはやめてください。その……洋の前では困ります」
幼少の頃から寡黙で、兄弟といってもどこか異質だった弟は、いつの間にか俺達の仲間になっていたようだ。最近はこいつを弄るのが楽しくて仕方がない。
ずっと無表情だったその顔には、喜怒哀楽がはっきりと浮かび、人間らしく柔軟さを持つようになって来ていた。全部洋くんのお陰なんだろう。
丈は本当に欲しいものを手に入れたのだ。俺も丈に続きたい。そう渇望している。
「ふーん、洋くんの前ではカッコつけたいって?」
洋くんがそんな俺達のやりとりをニコニコと楽し気に見つめている。
会話に加わりたそうな様子が可愛いな。洋くんは酒に弱いのか、既に頬が赤く染まり出していた。
「流さん、あの……少し聞いていいですか」
「何でも」
「丈の子供の頃の話を何かしてくださいよ。その……どんな子供だったのですか。もしかして異常に独占欲が強かったとか」
冗談交じりに笑う洋くんは、華やかな笑みを浮かべていた。
「あー?丈は気難しくてな、爺みたいだったよ」
「え!爺(じじい)って!」
「兄さん!兄さんこそいつだって大騒ぎして、いつも私より幼く見えましたよ」
「なんだと!こいつ!」
「洋、独占欲の塊は、流兄さんの方だぞ」
「ははっ、出来なかった兄弟喧嘩なら今からでも存分にどうぞ」
そんな様子を翠も嬉しそうに見ている。そっと誰にも気が付かれないように俺は翠の様子を伺った。
もう落ち着いたか……大丈夫か。今日は驚かせたよな。
とにかく早くこいつらを酔わして、爆睡させないと……先に進めない。そう思うと、丈と洋くんにワインを注ぐピッチが速くなる。
「まぁもっと飲めよ。洋くんもね」
「わぁ……もう飲めませんよ、俺すぐ眠くなっちゃうから」
「そうですよ。流兄さん、まだ洋は寝るわけにいかないからやめてくださいよ」
「なんでだ?」
「仕上げが残っているからですよ」
既にお互い酔い始めているのだろう。丈も俺も普段なら言わないところまで踏み込んでいる。
「お前、まだ抱くのか?」
「悪いですか」
「洋くんの躰も労わってやれよ、受け入れる方は大変なんだろう」
「何を、あっそうだ!昼間一体どこまで見たんですか、私達のこと」
「どこまでって……そりゃ白波にお前たちのものが……」
「あーーー!!!!もうやめてくださいっ」
洋くんが顔を真っ赤にして震えている。
「丈も、もういい加減にしろよ」
洋くんが珍しく丈の胸ぐらを掴んで揺すっているのが、なんだか全然迫力がなくて思わず噴き出した。
「ぷぷぷっ」
「流さんも流さんですよ!丈を調子にのせないでくださいよ。後で厄介なことになるんです!」
「おい、洋もう引っ張るな。着崩れてしまうだろう」
「はぁ丈はいつも余裕過ぎて、嫌になるよ」
洋くんがそれでも手を離さずに丈の浴衣をふざけて引っ張ると、袷が大きく緩んでしまった。その拍子に現れた丈の逞しい胸板の上に、静かに白く光るものを俺は見つけた。
胸がドキッとした。
躰がゾクッとした。
「お前、胸元に何を?」
「あ……これですか」
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