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完結後の甘い話の章
『蜜月旅行 49』もう一つの月
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「流……もう駄目だ。それ以上は触れてはいけないっ!」
「翠っ……この後に及んで、まだそんなことを」
「あうっ!」
乳首をカリッと噛まれて、躰が大きく仰け反ってしまった。
「痛っ」
僕の声に反応して拘束が緩んだ隙に、僕は躰を懸命に捻って窓へ両手をついた。そんな僕の躰を、流の大きな手のひらが追いかけて来て、もう片方の肩もずるっと剥きだしにされてしまう。
浴衣が乱れていってしまう。どんどん着崩れていく。
僕の頭の中は、もうぐちゃぐちゃだ。
上手く考えられない。
このまま快楽に溺れそうだ。
「あぁっ」
快楽に抗い涙がにじむ目で窓の外を見ると、大きな満月が海上に浮かんでいた。
白く気高く、眩い光が僕を包む。
そうだ……今の僕に存在するのは、流とあの月だけ。
月に見られてしまっているのだ。この行為の一部始終を。そう思うと怖くなった。自分の仕出かしていることが恐ろしくなった。
実の兄弟なのに、こんなことを……これは立派な背徳行為だ。
頭の中ではちゃんと理解している。ずっと自制していたのに、なんで今宵……こんなにも脆く長年の戒めが解かれてしまったのか。
もう戻れない。これ以上触れ合ってしまったら……いや、もうすでに戻れない場所に来てしまっているのか。
「翠、逃げるな!ずっと触れたかった。ずっと昔から……愛している」
耳元で弟から囁かれる愛の言葉に震えた。
そうだ……僕の躰はその言葉を待っていた。
ずっとそう言ってもらいたかった。
ずっとずっと昔、一人で泣いて……最期まで……
どんなに待っても会えなかった。
その言葉は届くことはなかった。
だからなのか。
今こそ、この想いを受け止めたい。
そう心の奥底から渇望するのは……
後ろから回された流の手に、そっと僕の手を重ねた。
包まれていることに安らぎを感じ……僕はこの腕を待っていたのだと確信出来る。
今宵、宇宙を漂う船のように僕たちは重なり旅に出るのか。
流に抱かれ……禁断の世界へと。
「翠……好きだ……好きなんだ!ずっと愛していた!」
苦しげな表情を浮かべた弟の口から溢れ出すのは、愛の言葉。それは僕の躰に潤いを与えるように、しっとりと吸い込まれていく。
禁断の愛の言葉なのに、とても自然に受け止められるのは何故だ。
分からない……分からないけれども、これだけは分かる。
僕も流を愛している。
恐らくずっとずっと前から潜在的に潜んでいたこの気持ち。弟への、家族の愛情だと思うように仕向けていただけで、本当は、そうじゃなかった。男女の恋愛のように、男であり、実の弟でもある流のことを……
僕は君を愛してしまっていた。
流が悪いんじゃない。
僕の方から好きになった。
「もう長いこと我慢していた。翠は……俺の兄さんなのに、ごめん。もう兄さんだとは思えない」
「流……謝るのは僕の方だ。僕も……流のこと……」
「翠っ……この後に及んで、まだそんなことを」
「あうっ!」
乳首をカリッと噛まれて、躰が大きく仰け反ってしまった。
「痛っ」
僕の声に反応して拘束が緩んだ隙に、僕は躰を懸命に捻って窓へ両手をついた。そんな僕の躰を、流の大きな手のひらが追いかけて来て、もう片方の肩もずるっと剥きだしにされてしまう。
浴衣が乱れていってしまう。どんどん着崩れていく。
僕の頭の中は、もうぐちゃぐちゃだ。
上手く考えられない。
このまま快楽に溺れそうだ。
「あぁっ」
快楽に抗い涙がにじむ目で窓の外を見ると、大きな満月が海上に浮かんでいた。
白く気高く、眩い光が僕を包む。
そうだ……今の僕に存在するのは、流とあの月だけ。
月に見られてしまっているのだ。この行為の一部始終を。そう思うと怖くなった。自分の仕出かしていることが恐ろしくなった。
実の兄弟なのに、こんなことを……これは立派な背徳行為だ。
頭の中ではちゃんと理解している。ずっと自制していたのに、なんで今宵……こんなにも脆く長年の戒めが解かれてしまったのか。
もう戻れない。これ以上触れ合ってしまったら……いや、もうすでに戻れない場所に来てしまっているのか。
「翠、逃げるな!ずっと触れたかった。ずっと昔から……愛している」
耳元で弟から囁かれる愛の言葉に震えた。
そうだ……僕の躰はその言葉を待っていた。
ずっとそう言ってもらいたかった。
ずっとずっと昔、一人で泣いて……最期まで……
どんなに待っても会えなかった。
その言葉は届くことはなかった。
だからなのか。
今こそ、この想いを受け止めたい。
そう心の奥底から渇望するのは……
後ろから回された流の手に、そっと僕の手を重ねた。
包まれていることに安らぎを感じ……僕はこの腕を待っていたのだと確信出来る。
今宵、宇宙を漂う船のように僕たちは重なり旅に出るのか。
流に抱かれ……禁断の世界へと。
「翠……好きだ……好きなんだ!ずっと愛していた!」
苦しげな表情を浮かべた弟の口から溢れ出すのは、愛の言葉。それは僕の躰に潤いを与えるように、しっとりと吸い込まれていく。
禁断の愛の言葉なのに、とても自然に受け止められるのは何故だ。
分からない……分からないけれども、これだけは分かる。
僕も流を愛している。
恐らくずっとずっと前から潜在的に潜んでいたこの気持ち。弟への、家族の愛情だと思うように仕向けていただけで、本当は、そうじゃなかった。男女の恋愛のように、男であり、実の弟でもある流のことを……
僕は君を愛してしまっていた。
流が悪いんじゃない。
僕の方から好きになった。
「もう長いこと我慢していた。翠は……俺の兄さんなのに、ごめん。もう兄さんだとは思えない」
「流……謝るのは僕の方だ。僕も……流のこと……」
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