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完結後の甘い話の章
完結後の甘い物語 『蜜月旅行 37』
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楓のような無邪気な小さな手に誘われ、ホテルの室内遊園地のような場所へ連れて行かれた。
キッズランド と言われるそこには、小学校高学年の子供までが体を動かして遊べる、大きな滑り台やボールプール、天井の高さまで登れるアスレチック、おままごとハウスなど様々な大型遊具が並んでいた。
もちろん付き添いの大人も、一緒に遊べる仕様だ。
へぇ……今時のリゾートホテルってすごいな。こんなの俺が小さい時にはなかった施設だ。
「おにいちゃんってば~早く早く!」
「お兄さん、一緒にあれ登ろうぜ」
「ああ、分かった!」
よしっ!一緒に遊ぶと宣言したんだ。頑張ろう!
滑り台を滑るのはよかったが、ボールプールは初めて入ったので足元がゴロゴロとおぼつかなくて、危うく転びそうになってしまった。
俺……カッコ悪い。
それに天井まで届くアスレチックは、身軽な子供の方が楽々と登っていく。
「お兄ちゃんっ、遅い~」
「わっ!ちょっと待って!」
普段の運動不足を、猛烈に反省した。北鎌倉に戻ったら、流さんを見習って体づくりをしようと誓った。
十五分足らずの時間だったのに、嵐のような子供たちのテンションに振り回され、汗びっしょりだ。でも体は疲れたが、全く違う世界に触れられて楽しかった。
やがて流石に子どもたちも少し疲れたのか、絵本コーナーで本を読みだしたので、俺も一息つけた。
「あの……お疲れ様。これどうぞ」
脇に設置されているベンチに腰掛けて汗を拭うと、子供たちの母親からペットボトルの水を差しだされた。
「あっ、ありがとうございます」
「ごめんなさいね。見ず知らずの人にこんなに遊んでもらって。でも子供たち大喜びよ。うちの主人はこういう遊びに付き合ってくれないから」
「とんでもないです。俺もこんな機会がなければ、ここに来ませんし……楽しかったですよ」
「本当?良かったわ。ずっと子供たちと楽しそうに遊んでいるあなたの姿を見ていて、あーあ、こんな若くて綺麗なパパだったらいいのにって思っていたの」
「そんな、立派なお父さんじゃないですか」
「そうかしら……ねぇあなたはどちらからいらしたの?宮崎にはご旅行で?」
「えっと神奈川からで、そうです。旅行で来ています」
まさか新婚旅行中で相手が同性だなんて、死んでも言えないよな。
「まぁ!神奈川なのね!私もなのよ。どのあたりなの?私たちは横浜なの」
「そうなんですね」
なんだか妙に根掘り葉掘り聞かれている気がして、警戒心が芽生えた。
「あら?もしかして……お若いから気が付かなかったけど、もうご結婚されているの?」
「えっ?」
「その……ほら指輪をされているから」
「あ……ええまぁ」
左手の薬指に、指輪をしていたことを思い出した。
丈と結婚式で交換したペアリング。
俺の両親がしていたものを、リメイクしてもらった物だ。
「あら、ごめんなさいね。奥様を差し置いて、うちの子供たちの面倒なんてみてもらって」
「いえ、大丈夫です。俺も楽しかったですから」
「良かった!うちの主人はね、夏休みの旅行でここに来ているのにホテルの部屋でゲームばかりしていて、子供と遊んでくれないから困っていたの。そんなだから……息子は勝手に部屋から出て行ってしまうしで、さっきは大変だったのよ」
「そうだったのですか」
世の中にはいろんな夫婦生活があるのだと思った。そんな会話をベンチでしていると、女の子が再びやって来て、俺の手をひっぱった。
「お兄ちゃん、今度はおままごとしましょう。ママも来て!」
「はいはい」
キッズスペースの奥には、大型のおままごとハウスが沢山並んでいて、ドアを開けて中に入るとキッチンやテーブルなどが設置されていた。
ちゃんとした一軒家みたいだな。でも壁が低いので、外から丸見えだ。
「じゃあお兄ちゃんがパパ役ね」
「え……あぁ……うん」
小さな女の子の頼みだ。無下には断れない。
それにしても参ったな。まさかこんな所でパパ役を頼まれるなんて。
「ママはママ」
「えーじゃあ、ユイは何をするの?ユイがママかと思った!」
母親が不思議そうに女の子に問うと
「私はお兄ちゃんのガールフレンド!ママはママ役が嫌なら、おばーちゃん役よ」
「え?嫌だ。ママはママにするわ」
「えーユイ。パパとママはセットだから、その設定は変だぞ?」
玲くんが不服そうに言った。
「変じゃないもん、お兄ちゃん優しいからパパ役がいいけど、王子様みたいだからユイのボーイフレンドもいい!だからカレシとダンナサマの両方やってもらう」
「まぁこの子ったら、いつの間にそんな言葉覚えて」
「ねっお兄ちゃんいいでしょ?」
頭が混乱してた。パパ役なのに彼女もいる設定?イマドキのおままごとって怖いな。
でも……ユイと呼ばれる女の子ににっこりと微笑まれると、薔薇色のほっぺたと可愛いまん丸の瞳に思わずつられて、思わず微笑んでしまった。これ位の歳の女の子って砂糖菓子みたいだな。甘くてふわふわしている。
「コホンっ。えーーお兄ちゃん、ユイと付き合ってください」
「…クスっ、はい、いいですよ」
その甘い雰囲気に負けて、そう答えるとユイちゃんが飛びついて来た。
「やったー!王子さまと結婚できる~!」
「えっ?」
いきなりそう来る?
「王子様~誓いのキスを!」
「ええっ?」
きっキス??流石に展開に付いていけない。
その時突き刺さるような冷たい視線を背後に感じた。
その視線をおそるおそる辿ると、恐ろしい顔をした丈と目が合った。
キッズコーナーの外の通路で、手には大きな荷物を持って仁王立ちしている。
うわっ!まずい。
事の成り行きをきちんと話して分かってもらわないと、これってかなりびっくりな光景だ!
キッズランド と言われるそこには、小学校高学年の子供までが体を動かして遊べる、大きな滑り台やボールプール、天井の高さまで登れるアスレチック、おままごとハウスなど様々な大型遊具が並んでいた。
もちろん付き添いの大人も、一緒に遊べる仕様だ。
へぇ……今時のリゾートホテルってすごいな。こんなの俺が小さい時にはなかった施設だ。
「おにいちゃんってば~早く早く!」
「お兄さん、一緒にあれ登ろうぜ」
「ああ、分かった!」
よしっ!一緒に遊ぶと宣言したんだ。頑張ろう!
滑り台を滑るのはよかったが、ボールプールは初めて入ったので足元がゴロゴロとおぼつかなくて、危うく転びそうになってしまった。
俺……カッコ悪い。
それに天井まで届くアスレチックは、身軽な子供の方が楽々と登っていく。
「お兄ちゃんっ、遅い~」
「わっ!ちょっと待って!」
普段の運動不足を、猛烈に反省した。北鎌倉に戻ったら、流さんを見習って体づくりをしようと誓った。
十五分足らずの時間だったのに、嵐のような子供たちのテンションに振り回され、汗びっしょりだ。でも体は疲れたが、全く違う世界に触れられて楽しかった。
やがて流石に子どもたちも少し疲れたのか、絵本コーナーで本を読みだしたので、俺も一息つけた。
「あの……お疲れ様。これどうぞ」
脇に設置されているベンチに腰掛けて汗を拭うと、子供たちの母親からペットボトルの水を差しだされた。
「あっ、ありがとうございます」
「ごめんなさいね。見ず知らずの人にこんなに遊んでもらって。でも子供たち大喜びよ。うちの主人はこういう遊びに付き合ってくれないから」
「とんでもないです。俺もこんな機会がなければ、ここに来ませんし……楽しかったですよ」
「本当?良かったわ。ずっと子供たちと楽しそうに遊んでいるあなたの姿を見ていて、あーあ、こんな若くて綺麗なパパだったらいいのにって思っていたの」
「そんな、立派なお父さんじゃないですか」
「そうかしら……ねぇあなたはどちらからいらしたの?宮崎にはご旅行で?」
「えっと神奈川からで、そうです。旅行で来ています」
まさか新婚旅行中で相手が同性だなんて、死んでも言えないよな。
「まぁ!神奈川なのね!私もなのよ。どのあたりなの?私たちは横浜なの」
「そうなんですね」
なんだか妙に根掘り葉掘り聞かれている気がして、警戒心が芽生えた。
「あら?もしかして……お若いから気が付かなかったけど、もうご結婚されているの?」
「えっ?」
「その……ほら指輪をされているから」
「あ……ええまぁ」
左手の薬指に、指輪をしていたことを思い出した。
丈と結婚式で交換したペアリング。
俺の両親がしていたものを、リメイクしてもらった物だ。
「あら、ごめんなさいね。奥様を差し置いて、うちの子供たちの面倒なんてみてもらって」
「いえ、大丈夫です。俺も楽しかったですから」
「良かった!うちの主人はね、夏休みの旅行でここに来ているのにホテルの部屋でゲームばかりしていて、子供と遊んでくれないから困っていたの。そんなだから……息子は勝手に部屋から出て行ってしまうしで、さっきは大変だったのよ」
「そうだったのですか」
世の中にはいろんな夫婦生活があるのだと思った。そんな会話をベンチでしていると、女の子が再びやって来て、俺の手をひっぱった。
「お兄ちゃん、今度はおままごとしましょう。ママも来て!」
「はいはい」
キッズスペースの奥には、大型のおままごとハウスが沢山並んでいて、ドアを開けて中に入るとキッチンやテーブルなどが設置されていた。
ちゃんとした一軒家みたいだな。でも壁が低いので、外から丸見えだ。
「じゃあお兄ちゃんがパパ役ね」
「え……あぁ……うん」
小さな女の子の頼みだ。無下には断れない。
それにしても参ったな。まさかこんな所でパパ役を頼まれるなんて。
「ママはママ」
「えーじゃあ、ユイは何をするの?ユイがママかと思った!」
母親が不思議そうに女の子に問うと
「私はお兄ちゃんのガールフレンド!ママはママ役が嫌なら、おばーちゃん役よ」
「え?嫌だ。ママはママにするわ」
「えーユイ。パパとママはセットだから、その設定は変だぞ?」
玲くんが不服そうに言った。
「変じゃないもん、お兄ちゃん優しいからパパ役がいいけど、王子様みたいだからユイのボーイフレンドもいい!だからカレシとダンナサマの両方やってもらう」
「まぁこの子ったら、いつの間にそんな言葉覚えて」
「ねっお兄ちゃんいいでしょ?」
頭が混乱してた。パパ役なのに彼女もいる設定?イマドキのおままごとって怖いな。
でも……ユイと呼ばれる女の子ににっこりと微笑まれると、薔薇色のほっぺたと可愛いまん丸の瞳に思わずつられて、思わず微笑んでしまった。これ位の歳の女の子って砂糖菓子みたいだな。甘くてふわふわしている。
「コホンっ。えーーお兄ちゃん、ユイと付き合ってください」
「…クスっ、はい、いいですよ」
その甘い雰囲気に負けて、そう答えるとユイちゃんが飛びついて来た。
「やったー!王子さまと結婚できる~!」
「えっ?」
いきなりそう来る?
「王子様~誓いのキスを!」
「ええっ?」
きっキス??流石に展開に付いていけない。
その時突き刺さるような冷たい視線を背後に感じた。
その視線をおそるおそる辿ると、恐ろしい顔をした丈と目が合った。
キッズコーナーの外の通路で、手には大きな荷物を持って仁王立ちしている。
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