重なる月

志生帆 海

文字の大きさ
上 下
634 / 1,657
完結後の甘い話の章

完結後の甘い物語 『蜜月旅行 16』

しおりを挟む
「あれ……丈と洋くんは何処だ?」

 海辺に戻ると、ビーチパラソルの下に二人の姿が見えなかった。キャップの外れた日焼け止めクリームが、ビーチマットの上に転がっているだけだった。

 ははん……さては丈の奴・大方、日焼け止めクリームを洋くんに塗ってあげているうちにムラムラ来たのだろう。男なら分かるぜ。

 さては、二人して消えたな。

 それにしても……丈も結構大胆だよな。
 あんなに冷静沈着だったくせにさ。
 その勇気を少し俺にも分けて欲しい位だ。

「流、どうしよう」

 兄さんは俺とは違って、とても心配そうな表情を浮かべていた。

「何がです?」

「また洋くんに何かあったら」

「はぁ?あぁ兄さん今日は大丈夫ですよ」

「なんで分かるんだ?」

「そりゃあ二人が新婚旅行だからですよ」

「いや、でも海にもいないし……心配だな」

 いやいや、きっと……ぐるっと四方を見渡すと、海岸の左手に大きな岩場が見えた。その付近は深いらしく、浮輪の子供たちもいなく静かそうだ。

 ふふん、恐らくあの岩場だな。
 確かに穴場だな。

「流、探しに行った方がいいんじゃないか」

「いやそれは……兄さん、お邪魔でしょう」

「お邪魔って、どうして?洋くんの姿が見えないのが心配なのに」

 生真面目な兄さんはどうやら本気で心配しているようだ。洋くんの過去の話を聞いてから、兄さんはとても神経質になった。

 兄さんは洋くんの心の痛みを真摯に受け止め、共に悩んでいた。兄さんも多かれ少なかれ同性からそういう眼で見られた経験があるから……

 翠兄さんのキュっと切なげに唇を噛みしめる横顔に、心臓が跳びはねる。

 はぁ、その顔やめてくれよ!
 庇護欲を誘うような無防備な顔すんなって!

「兄さん大丈夫だから。今日は丈がぴったりくっついていますよ」

「あぁそうか、そうだね。丈も一緒だものな」

 納得するようにコクッと頷く兄さんのラッシュガードを脱いだ上半身に、つい目が行ってしまう。

 滅多に拝めない兄さんの胸の粒。

 やっぱり色……淡くて綺麗だな。
 それに、いつもは袈裟に覆われている肌は、しっとりと滑らかに艶やめいている。

 あまりにじっと見過ぎたのか、俺の視線を感じた兄さんと目が合ってしまった。

「流、どうかした?」

 俺は慌てて視線を泳がせ、ビーチマットに転がっている日焼け止めクリームに移した。

「いやっ兄さんも日焼け止めクリーム塗った方がいいと思って、日焼けするとすぐ赤くなってしまうから」

「あっそうだね」

「俺が塗りますよ」

 開放的な気分のせいか、つい余計なことを口出してしまった。

「いや、大丈夫だよ。これくらい出来るよ」

 小さく微笑んで、兄さんは自分の手の平に白いクリームを絞り出した。そしてその手を、首筋から胸元へと滑らせていく。その所作が美しくて、俺は思わず見惚れてしまった。

 クリームによって、兄さんの乳首は、うっすらと白い膜を張るように覆われた。

 更にその上を……兄さんの手が、まるで誰かの手によって揉まれているかの如く、官能的に滑っていく。

 うっこれは……視覚的にかなりヤバイっ!

しおりを挟む
感想 54

あなたにおすすめの小説

別れの夜に

大島Q太
BL
不義理な恋人を待つことに疲れた青年が、その恋人との別れを決意する。しかし、その別れは思わぬ方向へ。

悩める文官のひとりごと

きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。 そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。 エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。 ムーンライト様にも掲載しております。 

番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ

紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか? 何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。 12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。 R15は、念のため。 自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)

僕は君になりたかった

15
BL
僕はあの人が好きな君に、なりたかった。 一応完結済み。 根暗な子がもだもだしてるだけです。

「恋みたい」

悠里
BL
親友の二人が、相手の事が好きすぎるまま、父の転勤で離れて。 離れても親友のまま、連絡をとりあって、一年。 恋みたい、と気付くのは……? 桜の雰囲気とともにお楽しみ頂けたら🌸

あなたが好きでした

オゾン層
BL
 私はあなたが好きでした。  ずっとずっと前から、あなたのことをお慕いしておりました。  これからもずっと、このままだと、その時の私は信じて止まなかったのです。

【完結】記憶を失くした旦那さま

山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。 目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。 彼は愛しているのはリターナだと言った。 そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。

孕めないオメガでもいいですか?

月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから…… オメガバース作品です。

処理中です...