重なる月

志生帆 海

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完結後の甘い話の章

完結後の甘い物語 『蜜月旅行 11』

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 まさか今日、翠兄さんの褌姿を拝めるなんて!

 もう胸がいっぱいだ。
 兄さんの褌姿をこの目で生で見る。
 それは俺の長年の夢だった。

「兄さんの分は、これですよ」

「へぇ……これは『さらし』ではないんだね?」

「これは黒猫褌といって簡易版ですよ。初心者でも簡単に装着できるから、便利です」

 さらしの状態から締め上げる※六尺ふんどしは、装着が難しそうだったの、俺は※黒猫ふんどしというタイプのものを予備で選んでいた。

 ※六尺ふんどしとは、長さ約180cm~300cm程度、幅約16cm~34cm程度のさらしの布を用いた日本人男性用の下着。臀部が露出していることに特徴がある。現在では、下着に用いられるよりも、主に、祭事や水着などで使用されることが多い。

 ※黒猫褌とは、戦後水泳の授業で子供用の水着として使われていた物で、もっこふんどしのタイプで後ろがTバックとなっています。 現代では、ビキニタイプのふんどしと位置づけされています。装着が簡単です。

「あぁ、そういえば今になって思い出した。こういうの高校の遠泳で締めたな」

「……そのようですね」

 その通りだ。兄さんの通っていた中高一貫校は進学校で、褌で遠泳させるのが伝統の習わしだった。俺はそれをどうしても見たかったのに、だが学校を抜け出せずに地団駄を踏んだことを思い出した。

「流、これなら自分で締めれそうだよ」

 とんでもない!ここからが醍醐味なのに。

「いやいや、俺がしますよ、途中で外れたら大変でしょう」

「あっそうだね、じゃあ……任せるよ。脱ぐね」

 兄さんは着ていた白いラッシュガードを潔く脱ぎ捨てた。

 日に焼けていない滑らかな白い肌が露わになる。更衣室の控えめな照明のもと、胸元の二つの小さな果実が桃色に見えて、背筋がゾクゾクとした。それからなんの迷いもなくライムグリーンのサーフパンツに手をかけて、一気に下ろそうととした。

 うわっ!そんなに躊躇なく脱ぐなよ。
 こっちが照れてしまう。

 思わず水着のウエストに手をかけていた兄さんの手をグイッと掴んで、動きを制止してしまった。

「ちょっと待って、着替えはもっと奥で」

 更衣室には他の宿泊客もいたので、なるべく兄さんの裸体を人目に触れさせたくなくて、腕を掴んで隅っこへ連れて来た。

「ふふっ流は意外とデリケートだな。人前で裸になるなんて※滝行の時の着替えでよくあることだよ」

※滝行…滝に白装束を着て入り、修行すること。

「なっなんだって!!」

 はぁーーーーやっぱり案じていた通りだ。
 兄さんの修行には危険がつきものだ。

 こんな無防備な人が、よく今まで貞操を守れたものだ。
 
 いや……本当に守れたのか。いよいよ心配になってきた。

「流、どうした?さぁ早く着せてくれよ。もう脱いでもいいか」

 この人は全く歳を感じさせない、しなやかな躰つき。美しい輪郭を描く顔で、そんな風に俺を見ないでくれ。

 いつもなら袈裟を着ている兄さんは手を出せない領域にいる。でもここでは僧侶の禁欲的な姿ではないから、いつもの倍以上の色気が溢れ出ているような気がする。

「脱いで……いいですよ」

「うん、流……ところで顔が赤いけれども、熱でもあるのか」

 兄さんが眉根を寄せて心配そうに、俺の額に手をあてようとしたので、思わず振り払ってしまった。

 違う!今俺が見たいのは、兄の顔なんかじゃない!

 俺が愛する翠としての顔なんだ。

 そんな我儘な心の声を思わず叫びたくなってしまった!

「何でもない。大丈夫だ」

 ゴクッ

 兄さんに聴こえそうな程、唾を呑み込む音が大きく聞こえて恥ずかしかった。

 ズボンが下がり、徐々に現れる兄さんの下半身。男にしては細い腰。ほっそりとした太股。真っすぐに伸びるしなやかな脚。そして小さな尻の丸い膨らみ。

 いつも肝心なところは見せない、見ない……間柄だったから、いよいよ俺の興奮も最高潮に高まっていく。





「おや!兄さんたち若いのに褌かい?いいねぇ」

 その時、急に近くにいた初老の男性が、ズカズカと俺たちの間に入って来た。

なっなんだよ!この甘い時間の邪魔をする気か!!


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