628 / 1,657
完結後の甘い話の章
完結後の甘い物語 『蜜月旅行 10』
しおりを挟む
「洋、何をふてくされている?」
「別に……」
「くくくっ、それにそんなに着込んで……さぁせめてラッシュガードは脱ごう。背中に日焼け止めを塗ってやるから横になれ」
「……イヤだ」
ちらちらと遠巻きに感じる女の子の厳しい視線が、さっきから突き刺さるんだよ。
そんな状況で、俺が背中に日焼け止めを塗ってもらったら変だろう。
男が男に……そんなこと分かっているくせに。丈は意地悪だ。
「その通りだ。洋くんも潔く脱ごうぜ!君は肌が白すぎるからもう少し日焼けした方が逞しくみえるよ」
隣で褌一丁という大胆な姿で胡坐をかく流さんが、快活に笑っている。
え……日焼けしたら逞しく見える?
その言葉に少し惹かれるが、でもこんな裸同然の姿を公衆の面前に晒すなんて、俺にはやっぱり……どうしても無理そうだ。
「しかし翠兄さん、褌っていいもんですね」
「そうなのか」
翠さんが流さんの褌姿をまじまじと見つめた。少し頬が赤いのは気のせいか。
「確かに流にはよく似合っているが、そんなに着心地も良いのか」
「ええ、開放感一杯の世界に浸ることができますよ。 あまりの気持ちの良さに、これは病み付きになりそうです」
「へぇ……そんなにいいのか」
翠さんが身を乗り出して興味深そうに尋ねる。
あれ?なんかまずい雰囲気じゃないか。
ちょっと待って……翠さん……それ単純すぎる。
「そりゃそうですよ。そもそも暑い季節に褌一丁での生活は、少し前の日本の男には至極当然のことですからね」
「確かに褌って、古来からの伝統だね」
「ええ、燦々と降り注ぐ宮崎の太陽のもと、こうやって褌一丁でいると、心が癒されゆったりとした気分でこの休暇を謳歌できますね」
「ふぅん……そんなにいいのか」
「ええ、これは男冥利に尽きます」
流さんの演説に、ますます力が入る。
「そっか、流がそんなに言うのなら……僕も褌に挑戦してみたくなった」
途端に『釣れた!』とでも言いたげな満面の笑みを、流さんが浮かべた。
「本当ですか。兄さんなら絶対そう言うと思って、ちゃんと予備も持ってきましたよ。兄さんもせっかく若住職の重たい袈裟を脱いでいるのだから、褌に挑戦してみるといい」
「そうだね。でもどうやってつけるんだ?流はよく一人で出来たな」
「ははっちゃんと予行練習を……さぁさぁ兄さん、もう一度更衣室にいって着替えましょう」
「うん、でも出来るかな。なぁ……流が着せてくれるのか」
「心配しなくても、もちろん俺が全部やってあげますよ。さぁ行きましょう」
頬を赤らめた流さんが嬉しそうに答え、翠さんを立たせ更衣室に意気揚々と向かおうとした。
「ええっ!ちょっと待って下さい!翠さん、おっ俺を裏切るんですか!」
思わず縋りつくように呼び止めると、振り返った翠さんは、俺の水着姿を改めてまじまじと見つめ……ふんわりと微笑んだ。
「そうだ洋くん。君もラッシュガードなんて脱いで、この太陽に肌を晒すべきだよ。丈、日焼け止め塗ってあげるといい」
「ええ、翠兄さんそうしようと思ったところです」
「そんなっ」
「くくっ洋、観念しろ。あの翠兄さんが褌になるっていうのだから、それよりましだろ。男のくせにラッシュガードなんて着込んで、さぁ脱げ」
ラッシュガードのファスナーに、すっと丈の指が伸びて来たので、思わず一歩退いて叫んでしまった。
「じっ自分で脱げる!!!!」
思ったより大声だったのか、それを聞きつけた周りの女の人たちの冷たい視線が飛んできて、もうクラクラと眩暈がしてきた。
この三兄弟……癖ありすぎだ!
「別に……」
「くくくっ、それにそんなに着込んで……さぁせめてラッシュガードは脱ごう。背中に日焼け止めを塗ってやるから横になれ」
「……イヤだ」
ちらちらと遠巻きに感じる女の子の厳しい視線が、さっきから突き刺さるんだよ。
そんな状況で、俺が背中に日焼け止めを塗ってもらったら変だろう。
男が男に……そんなこと分かっているくせに。丈は意地悪だ。
「その通りだ。洋くんも潔く脱ごうぜ!君は肌が白すぎるからもう少し日焼けした方が逞しくみえるよ」
隣で褌一丁という大胆な姿で胡坐をかく流さんが、快活に笑っている。
え……日焼けしたら逞しく見える?
その言葉に少し惹かれるが、でもこんな裸同然の姿を公衆の面前に晒すなんて、俺にはやっぱり……どうしても無理そうだ。
「しかし翠兄さん、褌っていいもんですね」
「そうなのか」
翠さんが流さんの褌姿をまじまじと見つめた。少し頬が赤いのは気のせいか。
「確かに流にはよく似合っているが、そんなに着心地も良いのか」
「ええ、開放感一杯の世界に浸ることができますよ。 あまりの気持ちの良さに、これは病み付きになりそうです」
「へぇ……そんなにいいのか」
翠さんが身を乗り出して興味深そうに尋ねる。
あれ?なんかまずい雰囲気じゃないか。
ちょっと待って……翠さん……それ単純すぎる。
「そりゃそうですよ。そもそも暑い季節に褌一丁での生活は、少し前の日本の男には至極当然のことですからね」
「確かに褌って、古来からの伝統だね」
「ええ、燦々と降り注ぐ宮崎の太陽のもと、こうやって褌一丁でいると、心が癒されゆったりとした気分でこの休暇を謳歌できますね」
「ふぅん……そんなにいいのか」
「ええ、これは男冥利に尽きます」
流さんの演説に、ますます力が入る。
「そっか、流がそんなに言うのなら……僕も褌に挑戦してみたくなった」
途端に『釣れた!』とでも言いたげな満面の笑みを、流さんが浮かべた。
「本当ですか。兄さんなら絶対そう言うと思って、ちゃんと予備も持ってきましたよ。兄さんもせっかく若住職の重たい袈裟を脱いでいるのだから、褌に挑戦してみるといい」
「そうだね。でもどうやってつけるんだ?流はよく一人で出来たな」
「ははっちゃんと予行練習を……さぁさぁ兄さん、もう一度更衣室にいって着替えましょう」
「うん、でも出来るかな。なぁ……流が着せてくれるのか」
「心配しなくても、もちろん俺が全部やってあげますよ。さぁ行きましょう」
頬を赤らめた流さんが嬉しそうに答え、翠さんを立たせ更衣室に意気揚々と向かおうとした。
「ええっ!ちょっと待って下さい!翠さん、おっ俺を裏切るんですか!」
思わず縋りつくように呼び止めると、振り返った翠さんは、俺の水着姿を改めてまじまじと見つめ……ふんわりと微笑んだ。
「そうだ洋くん。君もラッシュガードなんて脱いで、この太陽に肌を晒すべきだよ。丈、日焼け止め塗ってあげるといい」
「ええ、翠兄さんそうしようと思ったところです」
「そんなっ」
「くくっ洋、観念しろ。あの翠兄さんが褌になるっていうのだから、それよりましだろ。男のくせにラッシュガードなんて着込んで、さぁ脱げ」
ラッシュガードのファスナーに、すっと丈の指が伸びて来たので、思わず一歩退いて叫んでしまった。
「じっ自分で脱げる!!!!」
思ったより大声だったのか、それを聞きつけた周りの女の人たちの冷たい視線が飛んできて、もうクラクラと眩暈がしてきた。
この三兄弟……癖ありすぎだ!
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
孕めないオメガでもいいですか?
月夜野レオン
BL
病院で子供を孕めない体といきなり診断された俺は、どうして良いのか判らず大好きな幼馴染の前から消える選択をした。不完全なオメガはお前に相応しくないから……
オメガバース作品です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
君に望むは僕の弔辞
爺誤
BL
僕は生まれつき身体が弱かった。父の期待に応えられなかった僕は屋敷のなかで打ち捨てられて、早く死んでしまいたいばかりだった。姉の成人で賑わう屋敷のなか、鍵のかけられた部屋で悲しみに押しつぶされかけた僕は、迷い込んだ客人に外に出してもらった。そこで自分の可能性を知り、希望を抱いた……。
全9話
匂わせBL(エ◻︎なし)。死ネタ注意
表紙はあいえだ様!!
小説家になろうにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる