重なる月

志生帆 海

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完結後の甘い話の章

完結後の甘い物語 『蜜月旅行 6』

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「ええっ!本気で?これを俺に着ろと?」

 丈が鞄から出したデパートの包みを受け取った。プレゼントだというのでワクワクと開けてみると、なんとも破廉恥な水着が三枚も出て来た!

 それは思わずこちらが赤面してしまうほどの、露出度の高いものばかりで絶句した。

「これって……これってビキニじゃないのか!」

 薄い水色でサイドが紐のようになっているデザインの水着を、震える手でプルプルと持ち上げてみた。

「どうだ?光沢とハリ感のあるウェット素材を使用したハーフバックビキニだそうで、サイドは細いループデザインだ。気に入ったか?」

「丈っ!気に入るはずないだろう!そっそれに……こっちは……なんだよっこれ!」

 もう一枚はもっと酷い。ライムグリーンの水着は生地なんてほとんどない、紐みたいな存在じゃないか。後ろがほぼ紐?

「それはだな、Tバックスタイルだそうだ。脇幅は細めでなかなかセクシーで良いだろう……フロントの膨らみ具合も洋のものの収まりが良いだろう」

「じょ……冗談じゃないよ!なんだよ!さっきからそのキャッチコピーみたいな変な台詞!丈、人格壊れてるぞ!」

 最後に手に取ったのは有名なスポーツブランドのブラックの水着。

「ふぅ……これはまだマシか」

他の二枚よりは使っている生地の量が幾分多いが、やっぱりボディにぴったりとしたビキニパンツタイプだ。

「あぁ……それは一番つまらないが、店員に勧められて購入したのだ」

 丈がつまらなそうに言うので、頭に来た。

「無理だ!無理!こんな水着を着て人前になんて無理だ!それに俺が自分で持って来たものがあるから、これは着ないっ」

 ところが自分の鞄を開けて荷物をひっくり返し探すが、どこにも見当たらない。ラッシュガードとセットの露出度の低いサーフパンツを確かに入れたはずなのに。

「あれっなんで?」

「あぁ……あれか。あんなつまらない水着は置いてきたよ」

「丈っ!!!!なんてことするんだよ」

「洋、そう怒るなよ。ここのプライベートビーチは、ホテル客のごく限られた人しか入れない。そもそもこの旅行は新婚旅行だろう?少しは私好みのものを着てもバチは当たらないだろう。私がすぐ傍にいるから大丈夫だ」

「はぁ……なんの罰ゲームだよぉ」

 がっくりと肩を落としていると、丈は嬉しそうに最初の二枚を見比べながら、ニヤニヤと手に取って見せつけてきた。

「で……今日はどちらにする?」

「丈は……変態だ!!!」



「流っ!これ無理だっ」


 その時……真っ赤になって叫ぶ俺の声に呼応するように、翠さんの焦った叫び声が、こちらの部屋にまで聴こえて来た。それを聞いた丈が可笑しそうに肩を揺らした。

「はははっ。おそらく洋の言う変態が、もう一人いるようだな」

「はぁ……流さんか」

 もしかして流さんも、翠さんにこんな破廉恥な水着を選んだのか。

 こっ……この変態兄弟!!

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