605 / 1,657
完結後の甘い話の章
完結後の甘い物語 『流れる星 7』
しおりを挟む
「どうした?洋、変な顔をしているな」
翠さんと流さんのことを考えながら離れの部屋に戻ると、丈にすぐに指摘された。
「そっそう?」
「まったく、今度は何があった?」
「ん……いや……」
これは言うべきか言わないべきか迷うところだ。俺はまだこの家に来て日が浅いから、あまり丈の兄弟について偉そうに口出しはしたくはないし。それでもやはり先ほど見た翠さんと流さんの会話が気になっていた。翠さんがあんな風に酒に飲まれ、流さんに甘えるような様子を見せるなんて、今まで見せたことがなかったから。
「おいで、こんな日に浮かない顔はないぞ」
丈が布団の横のテーブルで、日本酒を飲んでいた。その手に招かれ隣に座ろうとしたら、胡坐をかいている丈の脚の間に座らされた。
「えっここ?」
「そう、ここ」
「丈は相変わらず、いやらしいな」
「何言ってる?待たせたからだ。さぁ飲もう」
丈は俺の腰に左手をまわし、器用に右手で良く冷えた日本酒を、赤ワイン用の大きく膨らんだグラスに注いでくれた。
それから氷を二つ日本酒の中へと浮かべた。氷はグラスの中でくるくると回り、やがてぴたりとくっついた。くっついた氷はもう離れない。
「不思議だな。なんでこれ、くっついた?」
「あぁそれは飲み物は氷に比べて高い温度になっているから、氷の表面が解けてその氷の表面の近くにある飲み物も氷や解けた水に冷えるから、一旦融けた水が氷によって熱を奪われ再凍結し、氷同士がくっつくのだ」
「うわっ。丈、随分難しいことを言うな」
「まぁ平たく言えば、2つの氷の間の水が凍り、それが接着剤の役目を果たすからだろう」
「接着剤か、ふふっ」
「なに笑ってる?」
「いや……俺達も氷みたいに今くっついているなと思って」
「あぁそうだな。二人でくっついている。なぁ洋……二つ、二人、二とうい数字はいいな」
「そうだね」
「もう一人相手がいれば、くっつけるからな」
何故だか丈が、少し寂しな気がした。
「丈……君はもしかして……今まで寂しかった?」
「何故だ?」
「お兄さんが二人いるけれども、その……翠さんと流さんが仲良しだったから」
急に話したくなった。さっき見てしまった光景のことを思い出したから。
「あぁ、また居間で兄達が仲良くしてたのか。だからあんな不思議そうな顔をして戻って来たのか」
何故分かったのか。そんなに俺は分かりやすいのだろうか。
「あ……でも、丈もお兄さんたちに可愛がられているだろう?末っ子だし」
「さぁどうだか。私から見たらずっと二歳ずつ違う兄達は、随分遠い存在だったからな」
「そうかな。でも今は違うだろう。丈のことを可愛い弟だと思っているはずだよ」
「そうだな。確かに洋のことがあってから……最近は様子が違うかもしれない。でも昔は……兄二人の世界に入れないでよくいじけていたのだ。天の邪鬼だからそれを悟られたくなくて、強がって無関心なふりをよくしていたものだ」
「へぇ……そんなことが」
「まぁ誰がどっちにつくかで、三人共、同性というのは喧嘩の種でもあったしな。それでも翠兄さんは分け隔てなく接してくれたが。流兄さんは翠兄さんのことが大好きだったから、私に取られたくなかったんだろうな、きっと」
「そうだったのか」
確かにさっきのあの二人の様子を見ていれば分かる。他人が入り込めない独特の空気だった。
「だがもう寂しくないな」
「ん?」
突然丈の手が、着ていた浴衣の袷の中へと滑り込んで来た。
「わっ!」
冷房の効かない部屋は暑く、風呂上がりなのに汗ばんだ皮膚なのに、丈の長い指先が触れるとぞくぞくした。
「丈っいきなり触るなよ。グラス落とすところだった」
「ははっ悪い。感じたか。私にはこれからは洋がいるからな。私だけの洋だから。さぁもういいだろう。もう二人きりだ」
「うっうん」
俺がそっとテーブルにグラスを置くや否や、丈に浴衣の襟元を大きく剥かれ、露わになった首筋に口づけされた。
翠さんと流さんのことを考えながら離れの部屋に戻ると、丈にすぐに指摘された。
「そっそう?」
「まったく、今度は何があった?」
「ん……いや……」
これは言うべきか言わないべきか迷うところだ。俺はまだこの家に来て日が浅いから、あまり丈の兄弟について偉そうに口出しはしたくはないし。それでもやはり先ほど見た翠さんと流さんの会話が気になっていた。翠さんがあんな風に酒に飲まれ、流さんに甘えるような様子を見せるなんて、今まで見せたことがなかったから。
「おいで、こんな日に浮かない顔はないぞ」
丈が布団の横のテーブルで、日本酒を飲んでいた。その手に招かれ隣に座ろうとしたら、胡坐をかいている丈の脚の間に座らされた。
「えっここ?」
「そう、ここ」
「丈は相変わらず、いやらしいな」
「何言ってる?待たせたからだ。さぁ飲もう」
丈は俺の腰に左手をまわし、器用に右手で良く冷えた日本酒を、赤ワイン用の大きく膨らんだグラスに注いでくれた。
それから氷を二つ日本酒の中へと浮かべた。氷はグラスの中でくるくると回り、やがてぴたりとくっついた。くっついた氷はもう離れない。
「不思議だな。なんでこれ、くっついた?」
「あぁそれは飲み物は氷に比べて高い温度になっているから、氷の表面が解けてその氷の表面の近くにある飲み物も氷や解けた水に冷えるから、一旦融けた水が氷によって熱を奪われ再凍結し、氷同士がくっつくのだ」
「うわっ。丈、随分難しいことを言うな」
「まぁ平たく言えば、2つの氷の間の水が凍り、それが接着剤の役目を果たすからだろう」
「接着剤か、ふふっ」
「なに笑ってる?」
「いや……俺達も氷みたいに今くっついているなと思って」
「あぁそうだな。二人でくっついている。なぁ洋……二つ、二人、二とうい数字はいいな」
「そうだね」
「もう一人相手がいれば、くっつけるからな」
何故だか丈が、少し寂しな気がした。
「丈……君はもしかして……今まで寂しかった?」
「何故だ?」
「お兄さんが二人いるけれども、その……翠さんと流さんが仲良しだったから」
急に話したくなった。さっき見てしまった光景のことを思い出したから。
「あぁ、また居間で兄達が仲良くしてたのか。だからあんな不思議そうな顔をして戻って来たのか」
何故分かったのか。そんなに俺は分かりやすいのだろうか。
「あ……でも、丈もお兄さんたちに可愛がられているだろう?末っ子だし」
「さぁどうだか。私から見たらずっと二歳ずつ違う兄達は、随分遠い存在だったからな」
「そうかな。でも今は違うだろう。丈のことを可愛い弟だと思っているはずだよ」
「そうだな。確かに洋のことがあってから……最近は様子が違うかもしれない。でも昔は……兄二人の世界に入れないでよくいじけていたのだ。天の邪鬼だからそれを悟られたくなくて、強がって無関心なふりをよくしていたものだ」
「へぇ……そんなことが」
「まぁ誰がどっちにつくかで、三人共、同性というのは喧嘩の種でもあったしな。それでも翠兄さんは分け隔てなく接してくれたが。流兄さんは翠兄さんのことが大好きだったから、私に取られたくなかったんだろうな、きっと」
「そうだったのか」
確かにさっきのあの二人の様子を見ていれば分かる。他人が入り込めない独特の空気だった。
「だがもう寂しくないな」
「ん?」
突然丈の手が、着ていた浴衣の袷の中へと滑り込んで来た。
「わっ!」
冷房の効かない部屋は暑く、風呂上がりなのに汗ばんだ皮膚なのに、丈の長い指先が触れるとぞくぞくした。
「丈っいきなり触るなよ。グラス落とすところだった」
「ははっ悪い。感じたか。私にはこれからは洋がいるからな。私だけの洋だから。さぁもういいだろう。もう二人きりだ」
「うっうん」
俺がそっとテーブルにグラスを置くや否や、丈に浴衣の襟元を大きく剥かれ、露わになった首筋に口づけされた。
10
お気に入りに追加
445
あなたにおすすめの小説
【完結】Amnesia(アムネシア)~カフェ「時遊館」に現れた美しい青年は記憶を失っていた~
紫紺
ミステリー
郊外の人気カフェ、『時游館』のマスター航留は、ある日美しい青年と出会う。彼は自分が誰かも全て忘れてしまう記憶喪失を患っていた。
行きがかり上、面倒を見ることになったのが……。
※「Amnesia」は医学用語で、一般的には「記憶喪失」のことを指します。

そんなの真実じゃない
イヌノカニ
BL
引きこもって四年、生きていてもしょうがないと感じた主人公は身の周りの整理し始める。自分の部屋に溢れる幼馴染との思い出を見て、どんなパソコンやスマホよりも自分の事を知っているのは幼馴染だと気付く。どうにかして彼から自分に関する記憶を消したいと思った主人公は偶然見た広告の人を意のままに操れるというお香を手に幼馴染に会いに行くが———?
彼は本当に俺の知っている彼なのだろうか。
==============
人の証言と記憶の曖昧さをテーマに書いたので、ハッキリとせずに終わります。
わたしは夫のことを、愛していないのかもしれない
鈴宮(すずみや)
恋愛
孤児院出身のアルマは、一年前、幼馴染のヴェルナーと夫婦になった。明るくて優しいヴェルナーは、日々アルマに愛を囁き、彼女のことをとても大事にしている。
しかしアルマは、ある日を境に、ヴェルナーから甘ったるい香りが漂うことに気づく。
その香りは、彼女が勤める診療所の、とある患者と同じもので――――?
懐いてた年下の女の子が三年空けると口が悪くなってた話
六剣
恋愛
社会人の鳳健吾(おおとりけんご)と高校生の鮫島凛香(さめじまりんか)はアパートのお隣同士だった。
兄貴気質であるケンゴはシングルマザーで常に働きに出ているリンカの母親に代わってよく彼女の面倒を見ていた。
リンカが中学生になった頃、ケンゴは海外に転勤してしまい、三年の月日が流れる。
三年ぶりに日本のアパートに戻って来たケンゴに対してリンカは、
「なんだ。帰ってきたんだ」
と、嫌悪な様子で接するのだった。
出戻り聖女はもう泣かない
たかせまこと
BL
西の森のとば口に住むジュタは、元聖女。
男だけど元聖女。
一人で静かに暮らしているジュタに、王宮からの使いが告げた。
「王が正室を迎えるので、言祝ぎをお願いしたい」
出戻りアンソロジー参加作品に加筆修正したものです。
ムーンライト・エブリスタにも掲載しています。
表紙絵:CK2さま

好きなあいつの嫉妬がすごい
カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。
ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。
教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。
「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」
ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

ある日、木から落ちたらしい。どういう状況だったのだろうか。
水鳴諒
BL
目を覚ますとズキリと頭部が痛んだ俺は、自分が記憶喪失だと気づいた。そして風紀委員長に面倒を見てもらうことになった。(風紀委員長攻めです)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる