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完結後の甘い話の章
完結後の甘い物語 『星の数だけ 4』
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「洋くん、今日は本当に幸せそうな笑顔だね」
「あぁ、あいつはいろいろな目に遭ったからな。その分幸せになって欲しいよ」
「僕はね……洋くんが皆に愛されているのが、以前は羨ましかったんだ」
優也さんは少しだけ恥ずかしそうに、目を伏せてそう言い切った。
「それ分かるな。俺もだよ。洋を守らないといけないと思うけれども、洋を守りたいと思っているのは俺一人じゃなくて、洋には俺よりもっと大切な人がいるのがもどかしかったり、変な気分でもあったよ」
「そうか……Kaiくんもそんな気持ちを?意外だな」
「ふっ俺だって嫉妬したり妬んだりもするよ。人間だからな」
「うん……なんだかほっとする」
「でもさ、こんな弱音吐けるのは、優也さんだけだよ」
優也さんだけだ。
俺はさっきから軽井沢での夜を思い出していた。
優也さんはあの日、過去を乗り越え、俺に躰ごと飛び込んで来てくれたんだ。
だからその日の夜、俺達は躰を繋げた。
俺の腕の中で揺さぶられて顔を歪ませているその姿に、無性に切ない気持ちが込み上げて来た。
必死に俺にしがみついて来るその手を、絶対に離すものかと誓った。
冬の東京で初めてすれ違った夜の、今にも儚く消え入りそうだった白いマフラー姿の優也さん ソウルの陽だまりの公園で、ずっと俯いていた優也さん。明洞のカフェで一人で時をやり過ごしていた優也さん。
そんな寂しそうな姿を、次々に思い出していた。
ずっといつだって……気を抜くと、海の底に沈んでいきそうな優也さんだった。
行かせない。絶対に沈ませたりしない。もっと貪欲に俺を求めて、俺について来て欲しい。俺はもっと貪欲に求められたい。ついて来て欲しいから。
そんな願いを込めて、一心に俺は優也さんの細い躰を抱いた。何度も何度も……まるで陸に突き上げるかのように激しく、濡らした。
「Kaiくんのおかげだ。今こんなにも穏やかな気持ちで洋くんの門出を祝えるのは……Kaiくんが僕をしっかりと抱いていてくれるからだよ」
「俺も同じ気持ちだ。優也さんを抱いているとほっとするんだ。俺の居場所があるって感じでさ。ねぇ俺達似てるよ。優也さんと俺、求め合う所が同じだ。だから今日もさ、また抱いていい?」
「えっ昨日も散々したのに……」
「駄目?」
「……駄目じゃないが」
照れやの優也さんは俯きながら……ぽっとまた顔を赤くした。
早くそのネクタイを解きたいよ!
****
「陸……あのさ…」
「なんだ?」
「洋くん今日は一段と凛とした美しさだね。なんだかあの日の撮影を思い出すよ」
「あ?ああニューヨークでのか」
「うん……彼は自分では意識していないけれども、表舞台で輝ける人だよね」
「そうだな。だが、あいつはそれを望まないのだろう。そんなところがあいつらしい」
「そうか……そうだね。なんか分かるような気がするな」
洋くんは、そうだ……例えるのなら月のような人。静かな夜にひっそりと辺りを照らしているのが、よく似合う。
姿を変え、時に見えなくなる程儚げな時もあれば、満月のように輝く時もあるから。そして彼が選んだ相手もまた月のように落ち着いていて、穏やかな空気を纏っていた。
お似合いだ。月のような二人には、こんな静かな北鎌倉での生活が向いているかもしれない。
初夏の北鎌倉。
庭園の中を、涼やかな風が吹きていく。
何もかもを清めていくような涼風だ。
僕と陸はそんな庭の塀にもたれて、本当にリラックスした状態で話を続けた。
「あいつは表舞台には出てこないよ。さてと俺はこれから先どうするかな、いつまでもモデルってわけにもいかないだろう?」
「えっ陸? 一体何言い出すんだよ」
「空……実は俺さ、決めたんだ。アメリカへ行くよ。インテリアデザイナーとしての資格を活かして、本場のデザイン事務所で経験を積みたいんだ。それに向こうには……一緒にもう一度過ごしてみたい人達がいるから…」
「……え……陸、聞いてないよ。それ……」
激しく動揺した。インテリアデザイナーの資格を、モデルの仕事をしながら取得したのは知っていたが、ニューヨークってそんな……遠すぎるし、突然すぎる。
それって僕の前からいなくなるってこと?
一体なんで?
ワイングラスを持つ手が、カタカタと揺れた。震える手を隠しながら、無理矢理笑顔を作ろうとしたが笑えなかった。
「いや、違うんだ。空を置いて行くんじゃない。二年だ、二年だけ待ってくれないか」
「陸……二年ってどういうこと?」
「洋の門出を見送って決心がついた。心の底から俺も、空とずっと一緒に暮らしたいと思った。そのためには浮き沈みの激しいモデルの仕事ではなく、ずっと空と安心して暮らしていける仕事に就きたいんだ」
「陸……それって」
まさか……まさか……
「そうだ!プロポーズのつもりだ。洋のように上手く行くか分からない、でも俺にもベストを尽くさせてくれないか」
「陸……」
「返事はすぐに求めないが戻ってきたら……俺と一緒に暮らしてくれないか」
「陸……待ってる」
もう返事なら決まっている。
僕はずっと陸といたいのだから。
陸がそこまでの覚悟で、僕を求めてくれるのが嬉しかった。
僕だって陸と暮らすために、誰にも何も言わせないところまで行っておきたい。
俺達の未来、いますぐじゃない。
これから二人で少しずつ作っていけばいい。
星の数だけの幸せが、世の中にはあると信じている。
どの星が一番幸せなんてことは、決まっていない。
僕と陸だけの幸せを目指して、これから先、一歩一歩二人で進んでいけばいい。
星の数だけの幸せの中から見つけよう。
僕たちだけの星を。
『星の数だけ』 了
「あぁ、あいつはいろいろな目に遭ったからな。その分幸せになって欲しいよ」
「僕はね……洋くんが皆に愛されているのが、以前は羨ましかったんだ」
優也さんは少しだけ恥ずかしそうに、目を伏せてそう言い切った。
「それ分かるな。俺もだよ。洋を守らないといけないと思うけれども、洋を守りたいと思っているのは俺一人じゃなくて、洋には俺よりもっと大切な人がいるのがもどかしかったり、変な気分でもあったよ」
「そうか……Kaiくんもそんな気持ちを?意外だな」
「ふっ俺だって嫉妬したり妬んだりもするよ。人間だからな」
「うん……なんだかほっとする」
「でもさ、こんな弱音吐けるのは、優也さんだけだよ」
優也さんだけだ。
俺はさっきから軽井沢での夜を思い出していた。
優也さんはあの日、過去を乗り越え、俺に躰ごと飛び込んで来てくれたんだ。
だからその日の夜、俺達は躰を繋げた。
俺の腕の中で揺さぶられて顔を歪ませているその姿に、無性に切ない気持ちが込み上げて来た。
必死に俺にしがみついて来るその手を、絶対に離すものかと誓った。
冬の東京で初めてすれ違った夜の、今にも儚く消え入りそうだった白いマフラー姿の優也さん ソウルの陽だまりの公園で、ずっと俯いていた優也さん。明洞のカフェで一人で時をやり過ごしていた優也さん。
そんな寂しそうな姿を、次々に思い出していた。
ずっといつだって……気を抜くと、海の底に沈んでいきそうな優也さんだった。
行かせない。絶対に沈ませたりしない。もっと貪欲に俺を求めて、俺について来て欲しい。俺はもっと貪欲に求められたい。ついて来て欲しいから。
そんな願いを込めて、一心に俺は優也さんの細い躰を抱いた。何度も何度も……まるで陸に突き上げるかのように激しく、濡らした。
「Kaiくんのおかげだ。今こんなにも穏やかな気持ちで洋くんの門出を祝えるのは……Kaiくんが僕をしっかりと抱いていてくれるからだよ」
「俺も同じ気持ちだ。優也さんを抱いているとほっとするんだ。俺の居場所があるって感じでさ。ねぇ俺達似てるよ。優也さんと俺、求め合う所が同じだ。だから今日もさ、また抱いていい?」
「えっ昨日も散々したのに……」
「駄目?」
「……駄目じゃないが」
照れやの優也さんは俯きながら……ぽっとまた顔を赤くした。
早くそのネクタイを解きたいよ!
****
「陸……あのさ…」
「なんだ?」
「洋くん今日は一段と凛とした美しさだね。なんだかあの日の撮影を思い出すよ」
「あ?ああニューヨークでのか」
「うん……彼は自分では意識していないけれども、表舞台で輝ける人だよね」
「そうだな。だが、あいつはそれを望まないのだろう。そんなところがあいつらしい」
「そうか……そうだね。なんか分かるような気がするな」
洋くんは、そうだ……例えるのなら月のような人。静かな夜にひっそりと辺りを照らしているのが、よく似合う。
姿を変え、時に見えなくなる程儚げな時もあれば、満月のように輝く時もあるから。そして彼が選んだ相手もまた月のように落ち着いていて、穏やかな空気を纏っていた。
お似合いだ。月のような二人には、こんな静かな北鎌倉での生活が向いているかもしれない。
初夏の北鎌倉。
庭園の中を、涼やかな風が吹きていく。
何もかもを清めていくような涼風だ。
僕と陸はそんな庭の塀にもたれて、本当にリラックスした状態で話を続けた。
「あいつは表舞台には出てこないよ。さてと俺はこれから先どうするかな、いつまでもモデルってわけにもいかないだろう?」
「えっ陸? 一体何言い出すんだよ」
「空……実は俺さ、決めたんだ。アメリカへ行くよ。インテリアデザイナーとしての資格を活かして、本場のデザイン事務所で経験を積みたいんだ。それに向こうには……一緒にもう一度過ごしてみたい人達がいるから…」
「……え……陸、聞いてないよ。それ……」
激しく動揺した。インテリアデザイナーの資格を、モデルの仕事をしながら取得したのは知っていたが、ニューヨークってそんな……遠すぎるし、突然すぎる。
それって僕の前からいなくなるってこと?
一体なんで?
ワイングラスを持つ手が、カタカタと揺れた。震える手を隠しながら、無理矢理笑顔を作ろうとしたが笑えなかった。
「いや、違うんだ。空を置いて行くんじゃない。二年だ、二年だけ待ってくれないか」
「陸……二年ってどういうこと?」
「洋の門出を見送って決心がついた。心の底から俺も、空とずっと一緒に暮らしたいと思った。そのためには浮き沈みの激しいモデルの仕事ではなく、ずっと空と安心して暮らしていける仕事に就きたいんだ」
「陸……それって」
まさか……まさか……
「そうだ!プロポーズのつもりだ。洋のように上手く行くか分からない、でも俺にもベストを尽くさせてくれないか」
「陸……」
「返事はすぐに求めないが戻ってきたら……俺と一緒に暮らしてくれないか」
「陸……待ってる」
もう返事なら決まっている。
僕はずっと陸といたいのだから。
陸がそこまでの覚悟で、僕を求めてくれるのが嬉しかった。
僕だって陸と暮らすために、誰にも何も言わせないところまで行っておきたい。
俺達の未来、いますぐじゃない。
これから二人で少しずつ作っていけばいい。
星の数だけの幸せが、世の中にはあると信じている。
どの星が一番幸せなんてことは、決まっていない。
僕と陸だけの幸せを目指して、これから先、一歩一歩二人で進んでいけばいい。
星の数だけの幸せの中から見つけよう。
僕たちだけの星を。
『星の数だけ』 了
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