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第9章
花の咲く音 12
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「あと少し……えっあ……うわっ!」
岩場の上で白い花を掴もうと必死に手を伸ばしていると、ぶわっと突風が吹き抜けた。それは躰が揺らめくほどの強風で、思わず目を瞑ってしまった。
「あっ!」
なんてことだ!まずいっ!そう思った時には、もう遅かった。
不安定な岩場の上で、躰が大きくバランスを崩してしまったのだ足元が滑り、俺はそのまま真っ逆さまに滝へと落ちていく。
何かに掴まらないと駄目だ!
必死にもがくように手を上へと伸ばした。
「丈っ!」
ありったけの声を振り絞り、君の名を呼んだ。
なのに、俺の手が掴めたのは……か弱き白い花だけだった。
まるでスローモーションのような光景だ。さっきは大きく見上げないと見えなかった青空が、今は俺の躰の真上に綺麗に見えている。そして俺の躰はその青空からどんどん遠ざかていく。
「わぁっ!!」
ザブンっと大きな水音を立て、俺の躰は真っ逆さまに滝つぼへと落ちた。
滝つぼには、巻き返しと呼ばれる流れがあるのは知っていた。そのせいだ。一度沈んだ躰はまた浮いてくるが、すぐに流れに引き込まれて沈んでしまう。
「あっ!ゴボッゴボッ」
泳ぎは得意なはずなのに、流れに負けてしまう。
苦しいっ!このままでは本当に溺れてしまう!
いや駄目だ!こんなところで終わるわけにはいかない!
だが焦ってもがけばもがく程、ゴボゴボという水音と共に、俺の躰は沈んで行く。
「うっ」
薄れ行く意識の中で微かに思い出していた。
こんなことが、前にもあった!
そうだ……確かにあった。あの時は確か……
****
本日も「夕凪の空」とリンクしています。
何やら不穏な展開ですが、物語はハッピーエンドですので、どうかご安心下さい。
岩場の上で白い花を掴もうと必死に手を伸ばしていると、ぶわっと突風が吹き抜けた。それは躰が揺らめくほどの強風で、思わず目を瞑ってしまった。
「あっ!」
なんてことだ!まずいっ!そう思った時には、もう遅かった。
不安定な岩場の上で、躰が大きくバランスを崩してしまったのだ足元が滑り、俺はそのまま真っ逆さまに滝へと落ちていく。
何かに掴まらないと駄目だ!
必死にもがくように手を上へと伸ばした。
「丈っ!」
ありったけの声を振り絞り、君の名を呼んだ。
なのに、俺の手が掴めたのは……か弱き白い花だけだった。
まるでスローモーションのような光景だ。さっきは大きく見上げないと見えなかった青空が、今は俺の躰の真上に綺麗に見えている。そして俺の躰はその青空からどんどん遠ざかていく。
「わぁっ!!」
ザブンっと大きな水音を立て、俺の躰は真っ逆さまに滝つぼへと落ちた。
滝つぼには、巻き返しと呼ばれる流れがあるのは知っていた。そのせいだ。一度沈んだ躰はまた浮いてくるが、すぐに流れに引き込まれて沈んでしまう。
「あっ!ゴボッゴボッ」
泳ぎは得意なはずなのに、流れに負けてしまう。
苦しいっ!このままでは本当に溺れてしまう!
いや駄目だ!こんなところで終わるわけにはいかない!
だが焦ってもがけばもがく程、ゴボゴボという水音と共に、俺の躰は沈んで行く。
「うっ」
薄れ行く意識の中で微かに思い出していた。
こんなことが、前にもあった!
そうだ……確かにあった。あの時は確か……
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本日も「夕凪の空」とリンクしています。
何やら不穏な展開ですが、物語はハッピーエンドですので、どうかご安心下さい。
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