565 / 1,657
第9章
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」7
しおりを挟む
安志さんは短い時間で何度も僕の躰を抱いた。
僕も三週間ぶりなので深く求めてしまったし、何度もイッてしまった。
時計の針が進むのが、もっと遅ければいいのに。
朝までずっと一緒にいられればいいのに。
そんな願いもむなしく……約束の時間が刻一刻と近づいて来ていた。
流石に短時間に喘ぎすぎたせいで、クタクタになってしまった。そんな僕のことを安志さんが抱いて浴室まで連れて行ってくれて、まだ息が整わない躰を優しく洗ってくれた。
ようやくぼんやりしていた意識が戻って来た。
「涼、無理させたな」
「いや……大丈夫。僕もすごく良かったから」
「そっか、躰は大丈夫か。この後また朝まで撮影だろ。寝かしてやれなくて、ごめんな」
髪を乾かしてもらい服を着ていると、安志さんが何処からか大きな包みを持って来た。
「涼、メリークリスマス!大したものじゃないけれども」
「えっ嬉しい!いいの?」
「当たり前だ。それセーターだから今着ていくといい。そのままじゃ寒そうだ」
ラッピングを急いで解いてみると、中から真っ白なケーブルニットのセーターが出て来た。
軽くて肌触りが気持ち良く、ふかふかと温かい上質なものだった。
「嬉しいよ。安志さんありがとう!」
広げてみるとイタリアのブランドのセーターで、すごくカッコイイデザインだ。
「気にいった?良かったよ。俺はあんまりお洒落なもの知らなくて……随分と悩んでデパートをウロウロしたんだ。でもどうしても誰にも頼らないで俺自身で選びたくて、大丈夫そうか。着れそうか」
「当たり前だよ。安志さんの選んだものだし、本当にこれ素敵だ!」
早速Tシャツの上にセーターを着ると、安志さんは本当に嬉しそうに目を細めて見つめてくれていた。なんだかくすぐったい気持ちだ。本当に心が籠った贈り物をもらった。
「安志さんにも僕からのプレゼントがあるんだ」
僕もプレゼントを用意していたんだ。リュックに入れっぱなしにしておいて良かった!
「お?うれしいな」
「これを受け取って欲しくて」
「なんだ?」
ベッドに座りながら安志さんが包みを開けてくれた。気に入ってもらえるかドキドキするな。
「おっ時計だ。あれ?これってもしかして……」
「うん、あのバス停の広告の」
安志さんの表情が少し曇ったような気がした。もしかして女の子と並んだあの広告を思い出してしまったのかも。だから慌てて取り繕った。
「あの……それは僕とペアなんだ。ほら」
リュックから自分の時計を取り出して見せた。安志さんの方がバンドの長さが長いけど、全く同じデザインだ。
「えっ……涼とペア?」
「うん、実は撮影でスポンサーからプレゼントしてもらって、安志さんにも同じものを購入したんだ」
「これ、高かったろう」
「気に入らない?」
おそるおそる聞くと、安志さんの胸にガバッとハグされた。
「涼ありがとうな。滅茶苦茶嬉しいよ。ペアとかそういうの初めてだな、俺達」
「良かった。洋兄さんと丈さんのペアの月輪や指輪を見ていたら羨ましくなっちゃって……僕も何か同じもの持ちたくなったんだ」
早速、安志さんが腕にはめるとサイズもぴったりのようで安心した。僕も腕にはめてみた。
黒い文字盤に黒いバンド、文字盤の繊細なデザインとリューズガードとの大胆な組み合わせが素敵だったんだ。機能は最小限だけど、三時の位置にあるリューズガードがアクセントとなっていて洒落ている。裏蓋にはブランドのマークが描かれ、僕のようなカジュアルスタイルにも、安志さんのスーツにもよく似合うと、僕自身も惚れ込んだものだった。
今、僕たちの腕には同じものが二つ並んでいる。
ずっと憧れていた嬉しい光景だ。
「涼、メリークリスマス。これからも一緒に時を刻もうな」
安志さんから嬉しい言葉をもらった。
あったかくて優しい言葉が降って来た。
「ペアの時計っていいもんだな」
安志さんに肩をぎゅっと抱かれたので、その手に僕の手を重ねたら……
時計と時計がキスをした。
「約束のキスみたいだな。これって」
「僕もそう思った!」
心暖まるひと時。
これでまた朝まで撮影を頑張れる。
心も躰も満ちた。満タンにチャージされた気分だ。
会えなくて不安だった心のざわつきも吹き飛んで、今は躰のなかにエネルギーが満ちている。
僕たちは、きっとこの先もまだいろいろあるだろう。その度に素直な気持ち出し合って二人で進んでいけたらいい。
僕はこの人以外には考えられないのだから。
夢はいつか洋兄さん達のように、二人で過ごせるようになりたい。その夢に近づくためにも、僕は今はモデルとしての仕事を頑張る。
待っていて。
なるべく早く安志さんのいるところに行くから。そんな想いで安志さんから降り注ぐ熱いキスを受け止めていると、安志さんが頭を撫でてくれた。
「涼、急がなくていい。今の涼が好きなんだから、無理して早く大人になろうなんて思わなくていい。俺も涼の方まで歩み寄るから。そうだな~中間地点で会おう」
「うん…うっ…」
「涼、もう泣くなよ。目が腫れたらまずいだろう」
「でも……なんだかすごく嬉しくて……」
そして二人はいつも歩み寄る。
共に進むために歩み寄る。
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」了
****
安志と涼のクリスマスの番外編読んでくださって、ありがとうございます。いつもリアクションをありがとうございます。励みになっています。明日からまた通常運転で♪物語は第一部完結へ向けて一気に進みます。
僕も三週間ぶりなので深く求めてしまったし、何度もイッてしまった。
時計の針が進むのが、もっと遅ければいいのに。
朝までずっと一緒にいられればいいのに。
そんな願いもむなしく……約束の時間が刻一刻と近づいて来ていた。
流石に短時間に喘ぎすぎたせいで、クタクタになってしまった。そんな僕のことを安志さんが抱いて浴室まで連れて行ってくれて、まだ息が整わない躰を優しく洗ってくれた。
ようやくぼんやりしていた意識が戻って来た。
「涼、無理させたな」
「いや……大丈夫。僕もすごく良かったから」
「そっか、躰は大丈夫か。この後また朝まで撮影だろ。寝かしてやれなくて、ごめんな」
髪を乾かしてもらい服を着ていると、安志さんが何処からか大きな包みを持って来た。
「涼、メリークリスマス!大したものじゃないけれども」
「えっ嬉しい!いいの?」
「当たり前だ。それセーターだから今着ていくといい。そのままじゃ寒そうだ」
ラッピングを急いで解いてみると、中から真っ白なケーブルニットのセーターが出て来た。
軽くて肌触りが気持ち良く、ふかふかと温かい上質なものだった。
「嬉しいよ。安志さんありがとう!」
広げてみるとイタリアのブランドのセーターで、すごくカッコイイデザインだ。
「気にいった?良かったよ。俺はあんまりお洒落なもの知らなくて……随分と悩んでデパートをウロウロしたんだ。でもどうしても誰にも頼らないで俺自身で選びたくて、大丈夫そうか。着れそうか」
「当たり前だよ。安志さんの選んだものだし、本当にこれ素敵だ!」
早速Tシャツの上にセーターを着ると、安志さんは本当に嬉しそうに目を細めて見つめてくれていた。なんだかくすぐったい気持ちだ。本当に心が籠った贈り物をもらった。
「安志さんにも僕からのプレゼントがあるんだ」
僕もプレゼントを用意していたんだ。リュックに入れっぱなしにしておいて良かった!
「お?うれしいな」
「これを受け取って欲しくて」
「なんだ?」
ベッドに座りながら安志さんが包みを開けてくれた。気に入ってもらえるかドキドキするな。
「おっ時計だ。あれ?これってもしかして……」
「うん、あのバス停の広告の」
安志さんの表情が少し曇ったような気がした。もしかして女の子と並んだあの広告を思い出してしまったのかも。だから慌てて取り繕った。
「あの……それは僕とペアなんだ。ほら」
リュックから自分の時計を取り出して見せた。安志さんの方がバンドの長さが長いけど、全く同じデザインだ。
「えっ……涼とペア?」
「うん、実は撮影でスポンサーからプレゼントしてもらって、安志さんにも同じものを購入したんだ」
「これ、高かったろう」
「気に入らない?」
おそるおそる聞くと、安志さんの胸にガバッとハグされた。
「涼ありがとうな。滅茶苦茶嬉しいよ。ペアとかそういうの初めてだな、俺達」
「良かった。洋兄さんと丈さんのペアの月輪や指輪を見ていたら羨ましくなっちゃって……僕も何か同じもの持ちたくなったんだ」
早速、安志さんが腕にはめるとサイズもぴったりのようで安心した。僕も腕にはめてみた。
黒い文字盤に黒いバンド、文字盤の繊細なデザインとリューズガードとの大胆な組み合わせが素敵だったんだ。機能は最小限だけど、三時の位置にあるリューズガードがアクセントとなっていて洒落ている。裏蓋にはブランドのマークが描かれ、僕のようなカジュアルスタイルにも、安志さんのスーツにもよく似合うと、僕自身も惚れ込んだものだった。
今、僕たちの腕には同じものが二つ並んでいる。
ずっと憧れていた嬉しい光景だ。
「涼、メリークリスマス。これからも一緒に時を刻もうな」
安志さんから嬉しい言葉をもらった。
あったかくて優しい言葉が降って来た。
「ペアの時計っていいもんだな」
安志さんに肩をぎゅっと抱かれたので、その手に僕の手を重ねたら……
時計と時計がキスをした。
「約束のキスみたいだな。これって」
「僕もそう思った!」
心暖まるひと時。
これでまた朝まで撮影を頑張れる。
心も躰も満ちた。満タンにチャージされた気分だ。
会えなくて不安だった心のざわつきも吹き飛んで、今は躰のなかにエネルギーが満ちている。
僕たちは、きっとこの先もまだいろいろあるだろう。その度に素直な気持ち出し合って二人で進んでいけたらいい。
僕はこの人以外には考えられないのだから。
夢はいつか洋兄さん達のように、二人で過ごせるようになりたい。その夢に近づくためにも、僕は今はモデルとしての仕事を頑張る。
待っていて。
なるべく早く安志さんのいるところに行くから。そんな想いで安志さんから降り注ぐ熱いキスを受け止めていると、安志さんが頭を撫でてくれた。
「涼、急がなくていい。今の涼が好きなんだから、無理して早く大人になろうなんて思わなくていい。俺も涼の方まで歩み寄るから。そうだな~中間地点で会おう」
「うん…うっ…」
「涼、もう泣くなよ。目が腫れたらまずいだろう」
「でも……なんだかすごく嬉しくて……」
そして二人はいつも歩み寄る。
共に進むために歩み寄る。
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」了
****
安志と涼のクリスマスの番外編読んでくださって、ありがとうございます。いつもリアクションをありがとうございます。励みになっています。明日からまた通常運転で♪物語は第一部完結へ向けて一気に進みます。
10
お気に入りに追加
444
あなたにおすすめの小説
悪役令息に転生して絶望していたら王国至宝のエルフ様にヨシヨシしてもらえるので、頑張って生きたいと思います!
梻メギ
BL
「あ…もう、駄目だ」プツリと糸が切れるように限界を迎え死に至ったブラック企業に勤める主人公は、目覚めると悪役令息になっていた。どのルートを辿っても断罪確定な悪役令息に生まれ変わったことに絶望した主人公は、頑張る意欲そして生きる気力を失い床に伏してしまう。そんな、人生の何もかもに絶望した主人公の元へ王国お抱えのエルフ様がやってきて───!?
【王国至宝のエルフ様×元社畜のお疲れ悪役令息】
▼この作品と出会ってくださり、ありがとうございます!初投稿になります、どうか温かい目で見守っていただけますと幸いです。
▼こちらの作品はムーンライトノベルズ様にも投稿しております。
▼毎日18時投稿予定
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
フローブルー
とぎクロム
BL
——好きだなんて、一生、言えないままだと思ってたから…。
高二の夏。ある出来事をきっかけに、フェロモン発達障害と診断された雨笠 紺(あまがさ こん)は、自分には一生、パートナーも、子供も望めないのだと絶望するも、その後も前向きであろうと、日々を重ね、無事大学を出て、就職を果たす。ところが、そんな新社会人になった紺の前に、高校の同級生、日浦 竜慈(ひうら りゅうじ)が現れ、紺に自分の息子、青磁(せいじ)を預け(押し付け)ていく。——これは、始まり。ひとりと、ひとりの人間が、ゆっくりと、激しく、家族になっていくための…。
全力でおせっかいさせていただきます。―私はツンで美形な先輩の食事係―
入海月子
青春
佐伯優は高校1年生。カメラが趣味。ある日、高校の屋上で出会った超美形の先輩、久住遥斗にモデルになってもらうかわりに、彼の昼食を用意する約束をした。
遥斗はなぜか学校に住みついていて、衣食は女生徒からもらったものでまかなっていた。その報酬とは遥斗に抱いてもらえるというもの。
本当なの?遥斗が気になって仕方ない優は――。
優が薄幸の遥斗を笑顔にしようと頑張る話です。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
俺にとってはあなたが運命でした
ハル
BL
第2次性が浸透し、αを引き付ける発情期があるΩへの差別が医療の発達により緩和され始めた社会
βの少し人付き合いが苦手で友人がいないだけの平凡な大学生、浅野瑞穂
彼は一人暮らしをしていたが、コンビニ生活を母に知られ実家に戻される。
その隣に引っ越してきたαΩ夫夫、嵯峨彰彦と菜桜、αの子供、理人と香菜と出会い、彼らと交流を深める。
それと同時に、彼ら家族が頼りにする彰彦の幼馴染で同僚である遠月晴哉とも親睦を深め、やがて2人は惹かれ合う。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる