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第9章
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」7
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安志さんは短い時間で何度も僕の躰を抱いた。
僕も三週間ぶりなので深く求めてしまったし、何度もイッてしまった。
時計の針が進むのが、もっと遅ければいいのに。
朝までずっと一緒にいられればいいのに。
そんな願いもむなしく……約束の時間が刻一刻と近づいて来ていた。
流石に短時間に喘ぎすぎたせいで、クタクタになってしまった。そんな僕のことを安志さんが抱いて浴室まで連れて行ってくれて、まだ息が整わない躰を優しく洗ってくれた。
ようやくぼんやりしていた意識が戻って来た。
「涼、無理させたな」
「いや……大丈夫。僕もすごく良かったから」
「そっか、躰は大丈夫か。この後また朝まで撮影だろ。寝かしてやれなくて、ごめんな」
髪を乾かしてもらい服を着ていると、安志さんが何処からか大きな包みを持って来た。
「涼、メリークリスマス!大したものじゃないけれども」
「えっ嬉しい!いいの?」
「当たり前だ。それセーターだから今着ていくといい。そのままじゃ寒そうだ」
ラッピングを急いで解いてみると、中から真っ白なケーブルニットのセーターが出て来た。
軽くて肌触りが気持ち良く、ふかふかと温かい上質なものだった。
「嬉しいよ。安志さんありがとう!」
広げてみるとイタリアのブランドのセーターで、すごくカッコイイデザインだ。
「気にいった?良かったよ。俺はあんまりお洒落なもの知らなくて……随分と悩んでデパートをウロウロしたんだ。でもどうしても誰にも頼らないで俺自身で選びたくて、大丈夫そうか。着れそうか」
「当たり前だよ。安志さんの選んだものだし、本当にこれ素敵だ!」
早速Tシャツの上にセーターを着ると、安志さんは本当に嬉しそうに目を細めて見つめてくれていた。なんだかくすぐったい気持ちだ。本当に心が籠った贈り物をもらった。
「安志さんにも僕からのプレゼントがあるんだ」
僕もプレゼントを用意していたんだ。リュックに入れっぱなしにしておいて良かった!
「お?うれしいな」
「これを受け取って欲しくて」
「なんだ?」
ベッドに座りながら安志さんが包みを開けてくれた。気に入ってもらえるかドキドキするな。
「おっ時計だ。あれ?これってもしかして……」
「うん、あのバス停の広告の」
安志さんの表情が少し曇ったような気がした。もしかして女の子と並んだあの広告を思い出してしまったのかも。だから慌てて取り繕った。
「あの……それは僕とペアなんだ。ほら」
リュックから自分の時計を取り出して見せた。安志さんの方がバンドの長さが長いけど、全く同じデザインだ。
「えっ……涼とペア?」
「うん、実は撮影でスポンサーからプレゼントしてもらって、安志さんにも同じものを購入したんだ」
「これ、高かったろう」
「気に入らない?」
おそるおそる聞くと、安志さんの胸にガバッとハグされた。
「涼ありがとうな。滅茶苦茶嬉しいよ。ペアとかそういうの初めてだな、俺達」
「良かった。洋兄さんと丈さんのペアの月輪や指輪を見ていたら羨ましくなっちゃって……僕も何か同じもの持ちたくなったんだ」
早速、安志さんが腕にはめるとサイズもぴったりのようで安心した。僕も腕にはめてみた。
黒い文字盤に黒いバンド、文字盤の繊細なデザインとリューズガードとの大胆な組み合わせが素敵だったんだ。機能は最小限だけど、三時の位置にあるリューズガードがアクセントとなっていて洒落ている。裏蓋にはブランドのマークが描かれ、僕のようなカジュアルスタイルにも、安志さんのスーツにもよく似合うと、僕自身も惚れ込んだものだった。
今、僕たちの腕には同じものが二つ並んでいる。
ずっと憧れていた嬉しい光景だ。
「涼、メリークリスマス。これからも一緒に時を刻もうな」
安志さんから嬉しい言葉をもらった。
あったかくて優しい言葉が降って来た。
「ペアの時計っていいもんだな」
安志さんに肩をぎゅっと抱かれたので、その手に僕の手を重ねたら……
時計と時計がキスをした。
「約束のキスみたいだな。これって」
「僕もそう思った!」
心暖まるひと時。
これでまた朝まで撮影を頑張れる。
心も躰も満ちた。満タンにチャージされた気分だ。
会えなくて不安だった心のざわつきも吹き飛んで、今は躰のなかにエネルギーが満ちている。
僕たちは、きっとこの先もまだいろいろあるだろう。その度に素直な気持ち出し合って二人で進んでいけたらいい。
僕はこの人以外には考えられないのだから。
夢はいつか洋兄さん達のように、二人で過ごせるようになりたい。その夢に近づくためにも、僕は今はモデルとしての仕事を頑張る。
待っていて。
なるべく早く安志さんのいるところに行くから。そんな想いで安志さんから降り注ぐ熱いキスを受け止めていると、安志さんが頭を撫でてくれた。
「涼、急がなくていい。今の涼が好きなんだから、無理して早く大人になろうなんて思わなくていい。俺も涼の方まで歩み寄るから。そうだな~中間地点で会おう」
「うん…うっ…」
「涼、もう泣くなよ。目が腫れたらまずいだろう」
「でも……なんだかすごく嬉しくて……」
そして二人はいつも歩み寄る。
共に進むために歩み寄る。
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」了
****
安志と涼のクリスマスの番外編読んでくださって、ありがとうございます。いつもリアクションをありがとうございます。励みになっています。明日からまた通常運転で♪物語は第一部完結へ向けて一気に進みます。
僕も三週間ぶりなので深く求めてしまったし、何度もイッてしまった。
時計の針が進むのが、もっと遅ければいいのに。
朝までずっと一緒にいられればいいのに。
そんな願いもむなしく……約束の時間が刻一刻と近づいて来ていた。
流石に短時間に喘ぎすぎたせいで、クタクタになってしまった。そんな僕のことを安志さんが抱いて浴室まで連れて行ってくれて、まだ息が整わない躰を優しく洗ってくれた。
ようやくぼんやりしていた意識が戻って来た。
「涼、無理させたな」
「いや……大丈夫。僕もすごく良かったから」
「そっか、躰は大丈夫か。この後また朝まで撮影だろ。寝かしてやれなくて、ごめんな」
髪を乾かしてもらい服を着ていると、安志さんが何処からか大きな包みを持って来た。
「涼、メリークリスマス!大したものじゃないけれども」
「えっ嬉しい!いいの?」
「当たり前だ。それセーターだから今着ていくといい。そのままじゃ寒そうだ」
ラッピングを急いで解いてみると、中から真っ白なケーブルニットのセーターが出て来た。
軽くて肌触りが気持ち良く、ふかふかと温かい上質なものだった。
「嬉しいよ。安志さんありがとう!」
広げてみるとイタリアのブランドのセーターで、すごくカッコイイデザインだ。
「気にいった?良かったよ。俺はあんまりお洒落なもの知らなくて……随分と悩んでデパートをウロウロしたんだ。でもどうしても誰にも頼らないで俺自身で選びたくて、大丈夫そうか。着れそうか」
「当たり前だよ。安志さんの選んだものだし、本当にこれ素敵だ!」
早速Tシャツの上にセーターを着ると、安志さんは本当に嬉しそうに目を細めて見つめてくれていた。なんだかくすぐったい気持ちだ。本当に心が籠った贈り物をもらった。
「安志さんにも僕からのプレゼントがあるんだ」
僕もプレゼントを用意していたんだ。リュックに入れっぱなしにしておいて良かった!
「お?うれしいな」
「これを受け取って欲しくて」
「なんだ?」
ベッドに座りながら安志さんが包みを開けてくれた。気に入ってもらえるかドキドキするな。
「おっ時計だ。あれ?これってもしかして……」
「うん、あのバス停の広告の」
安志さんの表情が少し曇ったような気がした。もしかして女の子と並んだあの広告を思い出してしまったのかも。だから慌てて取り繕った。
「あの……それは僕とペアなんだ。ほら」
リュックから自分の時計を取り出して見せた。安志さんの方がバンドの長さが長いけど、全く同じデザインだ。
「えっ……涼とペア?」
「うん、実は撮影でスポンサーからプレゼントしてもらって、安志さんにも同じものを購入したんだ」
「これ、高かったろう」
「気に入らない?」
おそるおそる聞くと、安志さんの胸にガバッとハグされた。
「涼ありがとうな。滅茶苦茶嬉しいよ。ペアとかそういうの初めてだな、俺達」
「良かった。洋兄さんと丈さんのペアの月輪や指輪を見ていたら羨ましくなっちゃって……僕も何か同じもの持ちたくなったんだ」
早速、安志さんが腕にはめるとサイズもぴったりのようで安心した。僕も腕にはめてみた。
黒い文字盤に黒いバンド、文字盤の繊細なデザインとリューズガードとの大胆な組み合わせが素敵だったんだ。機能は最小限だけど、三時の位置にあるリューズガードがアクセントとなっていて洒落ている。裏蓋にはブランドのマークが描かれ、僕のようなカジュアルスタイルにも、安志さんのスーツにもよく似合うと、僕自身も惚れ込んだものだった。
今、僕たちの腕には同じものが二つ並んでいる。
ずっと憧れていた嬉しい光景だ。
「涼、メリークリスマス。これからも一緒に時を刻もうな」
安志さんから嬉しい言葉をもらった。
あったかくて優しい言葉が降って来た。
「ペアの時計っていいもんだな」
安志さんに肩をぎゅっと抱かれたので、その手に僕の手を重ねたら……
時計と時計がキスをした。
「約束のキスみたいだな。これって」
「僕もそう思った!」
心暖まるひと時。
これでまた朝まで撮影を頑張れる。
心も躰も満ちた。満タンにチャージされた気分だ。
会えなくて不安だった心のざわつきも吹き飛んで、今は躰のなかにエネルギーが満ちている。
僕たちは、きっとこの先もまだいろいろあるだろう。その度に素直な気持ち出し合って二人で進んでいけたらいい。
僕はこの人以外には考えられないのだから。
夢はいつか洋兄さん達のように、二人で過ごせるようになりたい。その夢に近づくためにも、僕は今はモデルとしての仕事を頑張る。
待っていて。
なるべく早く安志さんのいるところに行くから。そんな想いで安志さんから降り注ぐ熱いキスを受け止めていると、安志さんが頭を撫でてくれた。
「涼、急がなくていい。今の涼が好きなんだから、無理して早く大人になろうなんて思わなくていい。俺も涼の方まで歩み寄るから。そうだな~中間地点で会おう」
「うん…うっ…」
「涼、もう泣くなよ。目が腫れたらまずいだろう」
「でも……なんだかすごく嬉しくて……」
そして二人はいつも歩み寄る。
共に進むために歩み寄る。
番外編SS 安志×涼 「クリスマス・イブ」了
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安志と涼のクリスマスの番外編読んでくださって、ありがとうございます。いつもリアクションをありがとうございます。励みになっています。明日からまた通常運転で♪物語は第一部完結へ向けて一気に進みます。
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