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第9章
集う想い4
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「涼!なんでここに?撮影の途中じゃないのか」
「今は休憩時間なんだ。それよりSoilさん、こんな所に洋兄さん連れ出して何するつもり?洋兄さんのこと虐めたら僕が許さないからっ」
「りょ……涼!違うって、これは」
涼の口から出た過激な言葉に、たじろいでしまう。
「おいおい、俺がそんな悪人だとも?」
「いや……その、洋兄さんは、ほんと危なっかしくて」
冷静になって、少し恥ずかしそうに俯く涼が可愛い。でも……こんな可愛い涼に心配される俺って一体……なんだか腑に落ちないな。
「ははっ涼はブラコンか」
「違うけど……」
「さぁもう上に戻ろう」
「うん、でも今ここに誰かいたような?あれは……」
キョロキョロと辺りを見回す涼に、まだどう声を掛けていいのか分からなかった。
さっきまでそこに汗水たらして必死に働く辰起くんがいたことは、まだ話さないでいいと思った。いつか涼も自分の目で見て、判断する時が来るだろう。
「ねぇ洋兄さん、アメリカではどうだったの?Soilさんの撮影も見学した?」
階段を上がりながら、涼に問われれば嘘はつけない。
「えっと……実はね、ワンシーンだけ代理で俺も参加させてもらって……」
「えっ!嘘っ!」
涼の方がとんでもない声を出した。
「洋兄さんってば、何でそれ教えてくれなかったの?」
「ごめん。あれはピンチヒッターだったからボツになるだろうし、わざわざ言う程のことじゃないと思って……」
縋るように陸さんを見ると、我関せずといった様子で肩を竦めていた。
「そんなことないぜ。あの写真正式に使いたいって林さんが話していたから、今度連絡が行くんじゃねえか」
「そんな!それは困るよ」
あの時は陸さんを助けたいという勢いだったから。冷静になってみると丈に相談しないであんなことして、きっと事実を知ったら怒られそうだと、無性に心配になってしまう。
「ふっ洋の彼氏が怒るか」
「えっ!」
「まぁ雑誌掲載はまだ先だから、七日に会った時に俺からも話してやるから心配するなって」
「もっとややっこしくなりそうだから遠慮するっ」
****
「洋兄さん、じゃあまた!次は七日になるのかな。安志さんと張り切っていくからね~気を付けて帰ってね」
「んっありがとう。涼も撮影頑張れよ」
「陸さん、いろいろと今日はありがとうございます。待ってます」
「あぁ空も誘っていくから」
可愛い涼と陸さんに見送られてスタジオを後にした。
思い切って涼の所を訪ねてみて良かった。安志にも会えたし涼にも話せた。そして陸さんにも会えた。久しぶりに会った陸さんは、ぐっと幸せそうな表情を浮かべるようになっていた。
俺のことを見る眼も和らいでいて、ほっとした。
好きな人がいる。
自分よりも大切な人。
一緒に幸せになりたい人がいる。
幸せを分かち合いたい人がいる。
全て……
それは人を変えていく。
どんどん良い方向に。
俺もそうだけど、周りもそうだ。
今日はそれを深く理解できる時間になった。
さぁ俺ももう鎌倉へ……丈の元へ戻ろう。
夕陽に照らされるプラットホームに立つと、満たされた想いがじんわりと込み上げて来た。なんだか無性に丈に会いたい。早く会いたいよ。
間もなく到着する電車が、俺の急く気持ちを一気に運んでくれるだろう。
「今は休憩時間なんだ。それよりSoilさん、こんな所に洋兄さん連れ出して何するつもり?洋兄さんのこと虐めたら僕が許さないからっ」
「りょ……涼!違うって、これは」
涼の口から出た過激な言葉に、たじろいでしまう。
「おいおい、俺がそんな悪人だとも?」
「いや……その、洋兄さんは、ほんと危なっかしくて」
冷静になって、少し恥ずかしそうに俯く涼が可愛い。でも……こんな可愛い涼に心配される俺って一体……なんだか腑に落ちないな。
「ははっ涼はブラコンか」
「違うけど……」
「さぁもう上に戻ろう」
「うん、でも今ここに誰かいたような?あれは……」
キョロキョロと辺りを見回す涼に、まだどう声を掛けていいのか分からなかった。
さっきまでそこに汗水たらして必死に働く辰起くんがいたことは、まだ話さないでいいと思った。いつか涼も自分の目で見て、判断する時が来るだろう。
「ねぇ洋兄さん、アメリカではどうだったの?Soilさんの撮影も見学した?」
階段を上がりながら、涼に問われれば嘘はつけない。
「えっと……実はね、ワンシーンだけ代理で俺も参加させてもらって……」
「えっ!嘘っ!」
涼の方がとんでもない声を出した。
「洋兄さんってば、何でそれ教えてくれなかったの?」
「ごめん。あれはピンチヒッターだったからボツになるだろうし、わざわざ言う程のことじゃないと思って……」
縋るように陸さんを見ると、我関せずといった様子で肩を竦めていた。
「そんなことないぜ。あの写真正式に使いたいって林さんが話していたから、今度連絡が行くんじゃねえか」
「そんな!それは困るよ」
あの時は陸さんを助けたいという勢いだったから。冷静になってみると丈に相談しないであんなことして、きっと事実を知ったら怒られそうだと、無性に心配になってしまう。
「ふっ洋の彼氏が怒るか」
「えっ!」
「まぁ雑誌掲載はまだ先だから、七日に会った時に俺からも話してやるから心配するなって」
「もっとややっこしくなりそうだから遠慮するっ」
****
「洋兄さん、じゃあまた!次は七日になるのかな。安志さんと張り切っていくからね~気を付けて帰ってね」
「んっありがとう。涼も撮影頑張れよ」
「陸さん、いろいろと今日はありがとうございます。待ってます」
「あぁ空も誘っていくから」
可愛い涼と陸さんに見送られてスタジオを後にした。
思い切って涼の所を訪ねてみて良かった。安志にも会えたし涼にも話せた。そして陸さんにも会えた。久しぶりに会った陸さんは、ぐっと幸せそうな表情を浮かべるようになっていた。
俺のことを見る眼も和らいでいて、ほっとした。
好きな人がいる。
自分よりも大切な人。
一緒に幸せになりたい人がいる。
幸せを分かち合いたい人がいる。
全て……
それは人を変えていく。
どんどん良い方向に。
俺もそうだけど、周りもそうだ。
今日はそれを深く理解できる時間になった。
さぁ俺ももう鎌倉へ……丈の元へ戻ろう。
夕陽に照らされるプラットホームに立つと、満たされた想いがじんわりと込み上げて来た。なんだか無性に丈に会いたい。早く会いたいよ。
間もなく到着する電車が、俺の急く気持ちを一気に運んでくれるだろう。
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