540 / 1,657
第9章
太陽と月11
しおりを挟む「おはよう! もうこんな時間だよ。二人とも起きて!」
「んっ……」
涼の明るい声から始まった、どことなく気恥ずかしい一日の始まり。それでも、爽やかな涼の笑顔が降り注ぐおかげで、幸せな気分になれた。寝起きからこんなにキラキラしているなんて、涼はやっぱり若いな。
結局あれから二度寝をしたせいか、三人でかなりの朝寝坊をしてしまい、昼近い時間にようやく朝ごはんを食べることになった。食後……洗い物の手伝いをしていると、安志が気まずそうに声をかけて来た。
「洋……二日酔いにならなかったのか」
「あぁ大丈夫みたいだ」
「その……昨夜のこと……だけど」
「え? 」
「その……あの……」
「あぁそれは寝ぼけていて、はっきりと覚えてないから心配するな」
うーん流石にちょっと無理があるが、真面目な幼馴染を気遣ってかける言葉は、これしかないだろう。
「そっそうか! ならよかった」
心底ほっとした安志の表情は分かりやすい。本当に昔から嘘をつけない奴なんだ。
「洋……それからあのさ、さっきうちの親から電話あって」
「あぁそういえばさっき電話が鳴っていたね。安志のおばさんからだったのか」
「そうそう、なんか洋が入籍する時には、自分も駆けつけるって張り切っていて驚いた。いつの間に、うちの母にカミングアウトしたんだ?」
「あっうん…実は、そうなんだ。成り行きで……」
「そっか、母さん驚いていたか」
「……多少ね」
「でも受け入れたってことだよな」
「安志のおばさんは、理解あるな」
「あーそういえば母さんは昔からちょっと変態だからなぁ。昔はよく洋と俺をくっつけようとしてたんだぜ。腐った妄想族だよ。ははっ」
「えっ!」
思わず声が上擦ってしまった。
「くくくっ冗談だよ。洋みたいな綺麗な女の子と結婚して欲しいって言ってたんだ。孫の顔を見るのが楽しみだからって」
「……そうか」
その言葉に胸の奥がズキンとした。安志の方も、軽い気持ちで口に出してしまったのだろうが、はっと神妙な顔つきになった。それもそうだろう。涼のこと……この先どうするつもりなんだろう。おばさんも俺が丈というのは理解できても、流石に自分の息子となると話も違うだろう。
なんともこれは……悩ましい問題だ。そのまま考えこんでしまった安志の肩をポンポンッと叩いてやった。
「安志、七日はおばさんには、涼は俺の大事な従兄弟だって紹介するから、心配するなよ」
「あっ……うん」
「安志、焦るな。焦って何もかも台無しになったら困るだろう」
俺にとって大事な従兄弟と大事な幼馴染。本心から二人がいつまでも仲良くいられますように、そう願っている。でも物事にはタイミングがあって、何もかも二人で先走るのは危険なんだ。
きっとうまく走り出す時がくる。
そう思うから出た言葉。
安志は……涼は……素直に受け入れられるのだろうか。
「そうだよな。俺も涼のことをしっかり考えていきたい。この先もずっと。だからこそ軽はずみなことはしたくない。洋の式では、まだなにも事を起こすつもりはないよ」
「うん……分かってる」
その時、ガシャンと後ろでグラスの割れる音がした。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる