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第9章
太陽と月6
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「ちょっ、涼っ寝ぼけるな」
涼の手が俺の肩を掴み、ぐいっと勢いよく抱き寄せられた。ずっとスポーツやっているからなのか見かけによらず力強い。青いシーツの上に頬が触れ、涼の寝顔がぐっと間近になった。
長い睫毛、健康的な肌色。
若く健やかな寝顔に規則正しい寝息。
「涼……まだ眠ってるのか。呆れたな」
そっと声をかけてみるが返事はない。こんな状況でもまだ眠り続ける若さに感服した。同時に涼の寝息に、なんだか俺まで眠くなってきた。ウトウトし出していると扉の向こう側で安志の声がした。
「洋~昼飯食うだろ? 適当に作っていいかー」
「うん! よろしく」
「OK! じゃあ待ってろ」
張り切った安志の声に、思わず笑みが零れる。
安志は料理が上手なんだ。野球部の合宿とかで腕を磨いたと言っては、俺にもたまに作ってくれたよな。豪快なチャーハンはいつも食べきれない程山盛りで、でも残すと悲しい目をするから必死に食べたっけ。
気ぜわしくキッチンで動く安志の影を感じながら目を瞑った。俺も昨日は丈になかなか寝かしてもらえなくて疲れている。猛烈に眠いんだ。昼食が出来るまで、少しだけ……少しだけ寝てもいいか。
すぐ横でまだ眠り続ける涼を抱きしめてみた。まるで弟を抱きしめる兄のような気持が、ふわっと満ちていく。
そのまま心地よい睡魔に身を委ねた。
****
あれ? 安志さんじゃないのか。じゃあ僕を抱きしめるのは誰だろう。安志さんじゃない……誰かだ。とても甘くて柔らかい匂いがするな……きっと僕の好きな人だ。
はっと目が覚めて、僕に抱き着くように眠っている人を見てドキッとした。
えっなんで洋兄さんがここに?
相変わらず僕とそっくりな顔。でも僕よりももっともっと美人の洋兄さん。
まるで花が咲く瞬間のような、美しく気高い寝顔につい見とれてしまう。従兄弟の僕が見ても惚れちゃいそうに美人だよ。洋兄さんは、ほんとこれじゃ……皆が虜になってしまうのもしょうがない。
安志さんの心の奥底には、まだ洋兄さんへの甘い気持ちが微かに残っていることを知っている。でもそれでもいいんだ。だって僕も……僕も同じだから。ずっと幼い頃からの僕の憧れであり、守ってあげたい人だったから。
「涼、いい加減に起きろよ」
安志さんがエプロン姿でヒョイっとキッチンから顔を覗かせた。思わず唇に指を立てて、電気をつけるのを止めた。
「しっ静かに」
「あれ? 今度は洋が寝ちゃったのか」
「うん、ぐっすり寝てるよ」
「ふぅん……疲れているのかな」
「たぶんね、でも、幸せな寝不足に間違いない」
眠っている洋兄さんの項についたキスマークにそっと触れながら、僕は答えていた。安志さんもいつの間にか僕の隣に座り、それを見つめていた。
「洋兄さんは今すごく満ち足りているみたいだね。寝顔がとても幸せそうだ」
「あぁそうだな」
「ニューヨークで上手くいったんだね。日取りが決まったとか」
「そうだよ。全部上手く行って七月七日に入籍するそうだ」
「そっか……それを伝えに来てくれたのかな」
実は洋兄さんが少し遠くへ行ってしまうような、寂しさを感じていた。
すると安志さんはそんな僕の心を見透かすように、僕の欲しい言葉をさらりと言ってくれた。
「そうだろう。涼は洋にとって特別だからな」
あぁやっぱりいい人だ。安志さんが今の僕のすぐ傍にいてくれて嬉しい。
いつも安志さんから放たれる言葉は、僕を安心させてくれる。
心の底から思うことはただ一つ。
大好きだ。そんな安志さんのことが好きだ。
涼の手が俺の肩を掴み、ぐいっと勢いよく抱き寄せられた。ずっとスポーツやっているからなのか見かけによらず力強い。青いシーツの上に頬が触れ、涼の寝顔がぐっと間近になった。
長い睫毛、健康的な肌色。
若く健やかな寝顔に規則正しい寝息。
「涼……まだ眠ってるのか。呆れたな」
そっと声をかけてみるが返事はない。こんな状況でもまだ眠り続ける若さに感服した。同時に涼の寝息に、なんだか俺まで眠くなってきた。ウトウトし出していると扉の向こう側で安志の声がした。
「洋~昼飯食うだろ? 適当に作っていいかー」
「うん! よろしく」
「OK! じゃあ待ってろ」
張り切った安志の声に、思わず笑みが零れる。
安志は料理が上手なんだ。野球部の合宿とかで腕を磨いたと言っては、俺にもたまに作ってくれたよな。豪快なチャーハンはいつも食べきれない程山盛りで、でも残すと悲しい目をするから必死に食べたっけ。
気ぜわしくキッチンで動く安志の影を感じながら目を瞑った。俺も昨日は丈になかなか寝かしてもらえなくて疲れている。猛烈に眠いんだ。昼食が出来るまで、少しだけ……少しだけ寝てもいいか。
すぐ横でまだ眠り続ける涼を抱きしめてみた。まるで弟を抱きしめる兄のような気持が、ふわっと満ちていく。
そのまま心地よい睡魔に身を委ねた。
****
あれ? 安志さんじゃないのか。じゃあ僕を抱きしめるのは誰だろう。安志さんじゃない……誰かだ。とても甘くて柔らかい匂いがするな……きっと僕の好きな人だ。
はっと目が覚めて、僕に抱き着くように眠っている人を見てドキッとした。
えっなんで洋兄さんがここに?
相変わらず僕とそっくりな顔。でも僕よりももっともっと美人の洋兄さん。
まるで花が咲く瞬間のような、美しく気高い寝顔につい見とれてしまう。従兄弟の僕が見ても惚れちゃいそうに美人だよ。洋兄さんは、ほんとこれじゃ……皆が虜になってしまうのもしょうがない。
安志さんの心の奥底には、まだ洋兄さんへの甘い気持ちが微かに残っていることを知っている。でもそれでもいいんだ。だって僕も……僕も同じだから。ずっと幼い頃からの僕の憧れであり、守ってあげたい人だったから。
「涼、いい加減に起きろよ」
安志さんがエプロン姿でヒョイっとキッチンから顔を覗かせた。思わず唇に指を立てて、電気をつけるのを止めた。
「しっ静かに」
「あれ? 今度は洋が寝ちゃったのか」
「うん、ぐっすり寝てるよ」
「ふぅん……疲れているのかな」
「たぶんね、でも、幸せな寝不足に間違いない」
眠っている洋兄さんの項についたキスマークにそっと触れながら、僕は答えていた。安志さんもいつの間にか僕の隣に座り、それを見つめていた。
「洋兄さんは今すごく満ち足りているみたいだね。寝顔がとても幸せそうだ」
「あぁそうだな」
「ニューヨークで上手くいったんだね。日取りが決まったとか」
「そうだよ。全部上手く行って七月七日に入籍するそうだ」
「そっか……それを伝えに来てくれたのかな」
実は洋兄さんが少し遠くへ行ってしまうような、寂しさを感じていた。
すると安志さんはそんな僕の心を見透かすように、僕の欲しい言葉をさらりと言ってくれた。
「そうだろう。涼は洋にとって特別だからな」
あぁやっぱりいい人だ。安志さんが今の僕のすぐ傍にいてくれて嬉しい。
いつも安志さんから放たれる言葉は、僕を安心させてくれる。
心の底から思うことはただ一つ。
大好きだ。そんな安志さんのことが好きだ。
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