535 / 1,657
第9章
太陽と月6
しおりを挟む
「ちょっ、涼っ寝ぼけるな」
涼の手が俺の肩を掴み、ぐいっと勢いよく抱き寄せられた。ずっとスポーツやっているからなのか見かけによらず力強い。青いシーツの上に頬が触れ、涼の寝顔がぐっと間近になった。
長い睫毛、健康的な肌色。
若く健やかな寝顔に規則正しい寝息。
「涼……まだ眠ってるのか。呆れたな」
そっと声をかけてみるが返事はない。こんな状況でもまだ眠り続ける若さに感服した。同時に涼の寝息に、なんだか俺まで眠くなってきた。ウトウトし出していると扉の向こう側で安志の声がした。
「洋~昼飯食うだろ? 適当に作っていいかー」
「うん! よろしく」
「OK! じゃあ待ってろ」
張り切った安志の声に、思わず笑みが零れる。
安志は料理が上手なんだ。野球部の合宿とかで腕を磨いたと言っては、俺にもたまに作ってくれたよな。豪快なチャーハンはいつも食べきれない程山盛りで、でも残すと悲しい目をするから必死に食べたっけ。
気ぜわしくキッチンで動く安志の影を感じながら目を瞑った。俺も昨日は丈になかなか寝かしてもらえなくて疲れている。猛烈に眠いんだ。昼食が出来るまで、少しだけ……少しだけ寝てもいいか。
すぐ横でまだ眠り続ける涼を抱きしめてみた。まるで弟を抱きしめる兄のような気持が、ふわっと満ちていく。
そのまま心地よい睡魔に身を委ねた。
****
あれ? 安志さんじゃないのか。じゃあ僕を抱きしめるのは誰だろう。安志さんじゃない……誰かだ。とても甘くて柔らかい匂いがするな……きっと僕の好きな人だ。
はっと目が覚めて、僕に抱き着くように眠っている人を見てドキッとした。
えっなんで洋兄さんがここに?
相変わらず僕とそっくりな顔。でも僕よりももっともっと美人の洋兄さん。
まるで花が咲く瞬間のような、美しく気高い寝顔につい見とれてしまう。従兄弟の僕が見ても惚れちゃいそうに美人だよ。洋兄さんは、ほんとこれじゃ……皆が虜になってしまうのもしょうがない。
安志さんの心の奥底には、まだ洋兄さんへの甘い気持ちが微かに残っていることを知っている。でもそれでもいいんだ。だって僕も……僕も同じだから。ずっと幼い頃からの僕の憧れであり、守ってあげたい人だったから。
「涼、いい加減に起きろよ」
安志さんがエプロン姿でヒョイっとキッチンから顔を覗かせた。思わず唇に指を立てて、電気をつけるのを止めた。
「しっ静かに」
「あれ? 今度は洋が寝ちゃったのか」
「うん、ぐっすり寝てるよ」
「ふぅん……疲れているのかな」
「たぶんね、でも、幸せな寝不足に間違いない」
眠っている洋兄さんの項についたキスマークにそっと触れながら、僕は答えていた。安志さんもいつの間にか僕の隣に座り、それを見つめていた。
「洋兄さんは今すごく満ち足りているみたいだね。寝顔がとても幸せそうだ」
「あぁそうだな」
「ニューヨークで上手くいったんだね。日取りが決まったとか」
「そうだよ。全部上手く行って七月七日に入籍するそうだ」
「そっか……それを伝えに来てくれたのかな」
実は洋兄さんが少し遠くへ行ってしまうような、寂しさを感じていた。
すると安志さんはそんな僕の心を見透かすように、僕の欲しい言葉をさらりと言ってくれた。
「そうだろう。涼は洋にとって特別だからな」
あぁやっぱりいい人だ。安志さんが今の僕のすぐ傍にいてくれて嬉しい。
いつも安志さんから放たれる言葉は、僕を安心させてくれる。
心の底から思うことはただ一つ。
大好きだ。そんな安志さんのことが好きだ。
涼の手が俺の肩を掴み、ぐいっと勢いよく抱き寄せられた。ずっとスポーツやっているからなのか見かけによらず力強い。青いシーツの上に頬が触れ、涼の寝顔がぐっと間近になった。
長い睫毛、健康的な肌色。
若く健やかな寝顔に規則正しい寝息。
「涼……まだ眠ってるのか。呆れたな」
そっと声をかけてみるが返事はない。こんな状況でもまだ眠り続ける若さに感服した。同時に涼の寝息に、なんだか俺まで眠くなってきた。ウトウトし出していると扉の向こう側で安志の声がした。
「洋~昼飯食うだろ? 適当に作っていいかー」
「うん! よろしく」
「OK! じゃあ待ってろ」
張り切った安志の声に、思わず笑みが零れる。
安志は料理が上手なんだ。野球部の合宿とかで腕を磨いたと言っては、俺にもたまに作ってくれたよな。豪快なチャーハンはいつも食べきれない程山盛りで、でも残すと悲しい目をするから必死に食べたっけ。
気ぜわしくキッチンで動く安志の影を感じながら目を瞑った。俺も昨日は丈になかなか寝かしてもらえなくて疲れている。猛烈に眠いんだ。昼食が出来るまで、少しだけ……少しだけ寝てもいいか。
すぐ横でまだ眠り続ける涼を抱きしめてみた。まるで弟を抱きしめる兄のような気持が、ふわっと満ちていく。
そのまま心地よい睡魔に身を委ねた。
****
あれ? 安志さんじゃないのか。じゃあ僕を抱きしめるのは誰だろう。安志さんじゃない……誰かだ。とても甘くて柔らかい匂いがするな……きっと僕の好きな人だ。
はっと目が覚めて、僕に抱き着くように眠っている人を見てドキッとした。
えっなんで洋兄さんがここに?
相変わらず僕とそっくりな顔。でも僕よりももっともっと美人の洋兄さん。
まるで花が咲く瞬間のような、美しく気高い寝顔につい見とれてしまう。従兄弟の僕が見ても惚れちゃいそうに美人だよ。洋兄さんは、ほんとこれじゃ……皆が虜になってしまうのもしょうがない。
安志さんの心の奥底には、まだ洋兄さんへの甘い気持ちが微かに残っていることを知っている。でもそれでもいいんだ。だって僕も……僕も同じだから。ずっと幼い頃からの僕の憧れであり、守ってあげたい人だったから。
「涼、いい加減に起きろよ」
安志さんがエプロン姿でヒョイっとキッチンから顔を覗かせた。思わず唇に指を立てて、電気をつけるのを止めた。
「しっ静かに」
「あれ? 今度は洋が寝ちゃったのか」
「うん、ぐっすり寝てるよ」
「ふぅん……疲れているのかな」
「たぶんね、でも、幸せな寝不足に間違いない」
眠っている洋兄さんの項についたキスマークにそっと触れながら、僕は答えていた。安志さんもいつの間にか僕の隣に座り、それを見つめていた。
「洋兄さんは今すごく満ち足りているみたいだね。寝顔がとても幸せそうだ」
「あぁそうだな」
「ニューヨークで上手くいったんだね。日取りが決まったとか」
「そうだよ。全部上手く行って七月七日に入籍するそうだ」
「そっか……それを伝えに来てくれたのかな」
実は洋兄さんが少し遠くへ行ってしまうような、寂しさを感じていた。
すると安志さんはそんな僕の心を見透かすように、僕の欲しい言葉をさらりと言ってくれた。
「そうだろう。涼は洋にとって特別だからな」
あぁやっぱりいい人だ。安志さんが今の僕のすぐ傍にいてくれて嬉しい。
いつも安志さんから放たれる言葉は、僕を安心させてくれる。
心の底から思うことはただ一つ。
大好きだ。そんな安志さんのことが好きだ。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
悩める文官のひとりごと
きりか
BL
幼い頃から憧れていた騎士団に入りたくても、小柄でひ弱なリュカ・アルマンは、学校を卒業と同時に、文官として騎士団に入団する。方向音痴なリュカは、マルーン副団長の部屋と間違え、イザーク団長の部屋に入り込む。
そこでは、惚れ薬を口にした団長がいて…。
エチシーンが書けなくて、朝チュンとなりました。
ムーンライト様にも掲載しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
とある文官のひとりごと
きりか
BL
貧乏な弱小子爵家出身のノア・マキシム。
アシュリー王国の花形騎士団の文官として、日々頑張っているが、学生の頃からやたらと絡んでくるイケメン部隊長であるアベル・エメを大の苦手というか、天敵認定をしていた。しかし、ある日、父の借金が判明して…。
基本コメディで、少しだけシリアス?
エチシーンところか、チュッどまりで申し訳ございません(土下座)
ムーンライト様でも公開しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】記憶を失くした旦那さま
山葵
恋愛
副騎士団長として働く旦那さまが部下を庇い頭を打ってしまう。
目が覚めた時には、私との結婚生活も全て忘れていた。
彼は愛しているのはリターナだと言った。
そんな時、離縁したリターナさんが戻って来たと知らせが来る…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる