509 / 1,657
第9章
プロローグ
しおりを挟む
小雨が降る北鎌倉駅までの道を、私は一人で歩いている。
道の両脇には、紫色……白……青と色とりどりの紫陽花が咲いていた。
しとしとと降る雨の中、じっと耐え忍ぶように咲いているその姿が、私は好きだ。
そういえば幼い頃、紫陽花の花言葉を流兄さんに教えてもらったことがある。
「丈、何をずっと見ている? お前、そんなに紫陽花が好きなのか」
「はい。この花は……雨の中とても美しく見えます」
「そうかでも、お前は知らないだろう。その花言葉はあまり良くないぞ。移り気・浮気・変節、冷淡、高慢・無情……なっ、酷いだろ。それにしてもなんで寺の周りはこんなに紫陽花だらけなんだよっ」
「それでもいい……それでも好きです」
どれも負のイメージだが、その後図書館でこっそり調べたら『辛抱強い愛情』というものを見つけ、求めていたものはこれだと納得したものだ。
辛抱強い愛か……まさに私は今、それを実感している。
洋……君はアメリカに自分を傷つけた相手に、自ら会いに行ってしまった。
本当はそんな行動はやめさせたい気持ちもあった。
傷口に塩を塗るような行為なんて……もうするな。もう洋は充分苦しんだ。
そう怒鳴りたい時もあった。でもそれでは駄目なのだ。
いつまでも護っているだけでは、私も洋も前には進めない。成長できないのだ。
本当に長い年月、様々な事件に巻き込まれながらも、辛抱強く育てた愛なんだ。
私と洋を結ぶのは固い絆……互いを大切に想い合う結びつきは深く揺らがない。
間もなく私は洋と北鎌倉の駅で再会する。
そしてそこから新しい一歩を踏み出すことになる。
もうすぐ……始まる。
****
第8章&陸編を読んでくださってありがとうございます。
いよいよ第一部の最終章のスタートです。どうぞよろしくお願いいたします。
道の両脇には、紫色……白……青と色とりどりの紫陽花が咲いていた。
しとしとと降る雨の中、じっと耐え忍ぶように咲いているその姿が、私は好きだ。
そういえば幼い頃、紫陽花の花言葉を流兄さんに教えてもらったことがある。
「丈、何をずっと見ている? お前、そんなに紫陽花が好きなのか」
「はい。この花は……雨の中とても美しく見えます」
「そうかでも、お前は知らないだろう。その花言葉はあまり良くないぞ。移り気・浮気・変節、冷淡、高慢・無情……なっ、酷いだろ。それにしてもなんで寺の周りはこんなに紫陽花だらけなんだよっ」
「それでもいい……それでも好きです」
どれも負のイメージだが、その後図書館でこっそり調べたら『辛抱強い愛情』というものを見つけ、求めていたものはこれだと納得したものだ。
辛抱強い愛か……まさに私は今、それを実感している。
洋……君はアメリカに自分を傷つけた相手に、自ら会いに行ってしまった。
本当はそんな行動はやめさせたい気持ちもあった。
傷口に塩を塗るような行為なんて……もうするな。もう洋は充分苦しんだ。
そう怒鳴りたい時もあった。でもそれでは駄目なのだ。
いつまでも護っているだけでは、私も洋も前には進めない。成長できないのだ。
本当に長い年月、様々な事件に巻き込まれながらも、辛抱強く育てた愛なんだ。
私と洋を結ぶのは固い絆……互いを大切に想い合う結びつきは深く揺らがない。
間もなく私は洋と北鎌倉の駅で再会する。
そしてそこから新しい一歩を踏み出すことになる。
もうすぐ……始まる。
****
第8章&陸編を読んでくださってありがとうございます。
いよいよ第一部の最終章のスタートです。どうぞよろしくお願いいたします。
10
お気に入りに追加
443
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます
夏ノ宮萄玄
BL
オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。
――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。
懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。
義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
番?呪いの別名でしょうか?私には不要ですわ
紅子
恋愛
私は充分に幸せだったの。私はあなたの幸せをずっと祈っていたのに、あなたは幸せではなかったというの?もしそうだとしても、あなたと私の縁は、あのとき終わっているのよ。あなたのエゴにいつまで私を縛り付けるつもりですか?
何の因果か私は10歳~のときを何度も何度も繰り返す。いつ終わるとも知れない死に戻りの中で、あなたへの想いは消えてなくなった。あなたとの出会いは最早恐怖でしかない。終わらない生に疲れ果てた私を救ってくれたのは、あの時、私を救ってくれたあの人だった。
12話完結済み。毎日00:00に更新予定です。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる